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“文字”に遭遇した古の日本人

2018年1月22日(月)

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西暦57年に後漢の皇帝より倭の奴国王に与えられたとされる
一辺が2.3㎝、「漢委奴国王」と刻された金印(福岡市博物館)

 私たちは日常生活において、当たり前のように日本語で話し、何の違和感もなく漢字と平仮名と片仮名を組み合わせて使っています。しかし、日本にはもともと日本語を記す為の“文字”というものが無く、中国の漢字を取り入れ、それをもとにして日本独自の平仮名を編み出しました。

 今回の書道編は、まず日本人と文字との関わり合いを捉えることで、そこに私たちのアイデンティティ―の一端を見出せればと思いました。 また現代は、「書道」という概念も、それが“教育”を指しているものなのか、それとも“芸道”的なものなのか、あるいは“芸術”なのかということが曖昧になっています。こうした現状もありますので、 漢字を借字したことに始まり、平仮名の発明と和様の書、そして流儀書の時代を経て、書芸術へと展開していった日本の書文化について、今一度整理してみました。

 お相手は九州国立博物館の島谷弘幸館長です。島谷館長は九博に赴任されるまでは、東京国立博物館で副館長を務められ、「和様の書」展をはじめとして、数多くの展覧会を手掛けてこられました。ご専門は古筆学です。 

  

書家 木下真理子

現代人の文字に対する意識

木下:まず、はじめに。今回の書道編では、現代人に“文字”というものがどう認識されて、どう扱われているのかといったあたりのことから、お話をさせて頂ければと思います。

 例えば現代では、昨今話題の政府や官公庁が作成している公文書、会社の会議資料もそうですが、正式な文書というものは、“手書き”によるものではありませんよね。近頃は履歴書もパソコン入力によるものが認められていますし、年賀状なども印刷によるもの、最近では電子メールによるものも普及しています。

 手書きの文字に、個々の人間性を見ようとする習慣は、まだ少し残っているとは言え、一方で文字=“記号”という、そこにそれ以上の価値観を持ちにくい状況にもなっています。

 これはひとえに、文字がパソコンで作成、管理されるようになったからだと思いますが、もっと遡れば、「毛筆」から「硬筆」、つまり“筆”文字から“ペン”字へ移行した際にも、人々の文字に対する意識の変化はあったのではないでしょうか。

島谷:筆に“弾力”で書くという魅力があるということを、多くの人が知らなくなってしまったということはありますよね。

島谷弘幸(しまたに・ひろゆき)
九州国立博物館館長。1953年、岡山生まれ。東京教育大学 教育学部 芸術学科書専攻。専門は古筆学。小松茂美に師事。東京国立博物館副館長を経て、現職。特別展「和様の書」をはじめ、数々の名展覧会を手掛けている。著書・監修本に『東京国立博物館の名品でたどる 書の美』(毎日新聞出版)『料紙と書 東アジア書道史の世界』(思文閣出版)、『美しいかなが書ける本』(エイ出版)などがある。(photo by nanaco、以下 対談写真も同)

 字が上手い人というのは、筆の弾力を活かすことが出来る人だと私は思うんです。

 硬筆だと、一般の人が書いたら、どんなふうに書いても、見た目の線質は変わりませんよね。

 つまり、文字を表現するということの良さが分からなくなってしまったことはあると思います。

木下:文字を書くという行為において、“表現性”を失ってしまったと。

島谷:表現力の多様性というものを理解出来なくなってしまったということですね。例えば音楽でも本物のピアノや弦楽器と、シンセサイザーみたいに、ここを押せばその音が出るという機械とでは、同じ音符の音は出せたとしても音の深みが違うということがありますよね。

木下:力加減が利かないと、印象というか、微妙なニュアンスは出せませんものね。

 それと筆記用具ということで言えば、硬筆が普及したことと併せて、“ノート”の普及ということもあって。これも文字を記すことにおいて、意識的な変化がもたらされた一因だと思うんです。

島谷:最近は、ノートに書く時はほとんど“横書き”ですからね。その横書きが常になって、“縦書き”の美しさというものも、多くの人が知らなくなっていると言えると思います。

 あとは原稿用紙のマス目によって、大きく書かなきゃいけない字と小さく書かなきゃいけない字の区別がつかなくなっているということもありますよね。

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「“文字”に遭遇した古の日本人」の著者

木下 真理子

木下 真理子(きのした・まりこ)

書家/書道文化研究会 主宰

雅号は秀翠(しゅうすい)。中国及び日本古来の伝統芸術としての漢字、漢字仮名交じり書を探求。自身の創作活動の他に、映画、出版物、展覧会、広告等、様々な分野の題字を手掛ける。書道研究会「翠風会」を主宰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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