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東電が震災直後の決算で巨額赤字を計上したワケ

第10回 財務諸表でインフラ企業を読む 太田康広教授(3)

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2015年9月28日(月)

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太田 康広(おおた・やすひろ)氏
1992年慶応義塾大学経済学部卒業、94年東京大学より修士(経済学)取得。97年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。2002年、米ニューヨーク州立大学バッファロー校スクール・オブ・マネジメント博士課程修了。2003年Ph.D.(Management)取得。2002年ヨーク大学ジョゼフ・E・アトキンソン教養・専門研究学部管理研究学科専任講師、2003年助教授を経て、2005年慶応義塾大学大学院経営管理研究科助教授、2007年准教授、2011年より教授。(写真=陶山勉、以下同)
 慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネス・スクール)がエグゼクティブ向けに開設する「Executive MBA」。 太田康広教授は「東京電力 福島第1原発と賠償スキーム」をテーマとする会計管理の授業を行った。2011年3月期決算で営業利益、経常利益とも増益だった東電が、1.2兆円もの最終赤字を計上した原因である「繰延税金資産」の仕組みについて説明する。

(取材・構成:小林佳代)

 ここまで、東京電力の貸借対照表(BS)から、固定資産の内容を見てきました。

 東電が持っているような発電、送電、配電といった資産は流動性が低く、すぐに現金化はできません。長いものだと、計画段階まで含めて稼働期間が70年ぐらいに及ぶものもあります。

 となれば、これらの資産をまかなう資金も長期で調達するのが基本です。短期に運用するものならば短期的な資金で、長期に運用するものならば長期的な資金で、というのがファイナンスの基本です。70年運用する設備だったら、70年返さなくて良いお金を調達したいところです。

 では、いちばん長くお金を返さなくて良いのは何でしょうか。
 「自己株式」や「利益剰余金」などの「純資産」ですね。

 東電が持っている発電・送電・配電の設備が、全部純資産でカバーされていれば理想的なわけです。東京電力の純資産はいくらかというと1.6兆円。発電、送電、配電の設備は合計でざっと6兆円強でしたから、全然足りませんね。

 そもそも前年のBSと見比べて欲しいのですが、この年の東電の純資産1.6兆円というのは、前年の2.5兆円からぐんと減ってしまっています。

東電の比例縮尺財務諸表(2011年3月期)

 しかし実はこの年、東電は増資しているんです。「資本金」を見てください。6760億円から9010億円と2250億円ぐらい増えています。

 会社法に詳しい方はご存じのことと思いますが、新株を発行して調達したお金は原則として資本金に組み込みますが、半分までは「資本剰余金」とすることができます。

増資しても純資産がどんと減ったのは…

 東京電力の資本剰余金を見てください。前年の191億円から2437億円に増えています。この差額もだいたい2250億円。つまり、東電はこの期に4500億円調達して半分を資本金、半分を資本剰余金に入れたということが想像できます。

 この資金は2010年9月に調達しています。この時点ではスマートグリッド構築に使うという目的でした。もちろん、福島第1原発の事故が起きてしまいましたから、もうスマートグリッドに使われることはないでしょう。

 4500億円増資したにもかかわらず、純資産がどんと減った理由は損益計算書(PL)を見ると分かります。

 順を追って説明していきましょう。

 この年の東京電力の営業収益は5.4兆円。そのうち営業費用がだいたい5.0兆円。営業利益が3996億円、経常利益が3177億円です。この年、東京電力は営業増益、経常増益を達成しているのです。なぜ増益基調になっていたのか、分かる方はいますか。

受講者:電気料金を値上げしたからでしょうか。

 いいえ、この時点では東電は十数年、値上げをしていません。「燃料費調整制度」というのがあって、燃料費の変動に応じて、自動的に電気料金を調整していますが、それ以外の値上げはしていません。

受講者:夏が暑くて、電気需要が増えたからではないでしょうか。

 確かにそういう要因も大きく関係するでしょうね。でももっと大きな理由があります。何かというと原発の再稼働です。

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