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沖縄県への“遺言”(その1)

2015年9月3日(木)

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 「沖縄外務大臣」から筆者への最後の指示は、新しい翁長雄志・沖縄県知事のために「武器になる情報」をまとめてほしいということだった。「武器になる情報」とは、これから米国と向き合う新知事が事前に知っておくべき有用な情報ということだ。

 そこで、筆者が2年10カ月の任期中に学んだこと、知事公室内でレクチャーしたことなどをまとめてレポートに収めた。筆者が沖縄県庁に残す遺言のようなものになった。「沖縄外務大臣」は、このレポートを有用と認めたものの、最終的には新知事の手に渡らなかった。だが、ここにその内容を記しておこうと思う。

 レポートは「基礎情報編」と「米国の最近動向と将来予測」の2部構成にした。基礎情報では、大きく6つのことを取り上げた。

 第1は海兵隊である。以前述べたように、海兵隊はそもそも陸上部隊であり、陸上部隊、空挺部隊、兵站部隊の3要素を一緒に運用することを旨とする。2006年のロードマップ(辺野古案を正式に記載した日米合意文書)によれば、普天間飛行場移設はキャンプ・シュワブ、ハンセンに集中する陸上部隊の近くに空挺部隊、兵站部隊を配置するスキームの一環である。

 ここで、注意すべきことがいくつかある。第1の点は、在沖海兵隊をMEU単位に分割し、分散移転を要請することが可能なことだ(ただし、海兵隊は兵站上この考えを嫌う)。海兵隊における、この3要素の組み合わせの最小単位はMEU(約2200人程度)だからだ。

 第2の点は、在沖海兵隊の大半は張子の虎にすぎないことである。普天間飛行場に配備されたオスプレイ24機が一度に運べる人数は624人にとどまる。しかし、沖縄に駐留する海兵隊員は1万人を上回る。すなわち、空挺機能があまりに小さすぎるのだ。海兵隊は海軍の船に乗って移動することもある。だが、沖縄から最も近い佐世保から米海軍がやってくるのを待つのであれば、海兵隊の売り看板である「即応性」が泣くというものだ。

 第3は、沖縄にある米軍施設は脅威にさらされていることだ。いずれの施設も中国の中距離ミサイルの射程距離内にある。このため米国国内には、中国の脅威の範囲外に基地を移動するべき、あるいは基地を分散すべきではという議論が存在する。

在日米軍はいわば人質

 基礎情報編では第2として、抑止力に触れた。抑止力とは、相手に攻撃しようと思わせない能力を指す。攻撃された以上の報復をする能力があり、攻撃されたらそれを行使する意思を持っている状態を指す。日米同盟の最大の抑止力は米国の核の傘である。さらに、在日米軍は日本が攻撃された場合の報復措置の一部を担う。

 見方を変えれば、在日米軍はいわば人質なのだ。米兵を一人でも殺せば、世界最大の軍事大国・米国を敵に回すことになる、という計算がどの国にも働くからだ。これも、日米同盟が持つ抑止力の一部と言える。日本を攻撃すれば確実に米兵が死ぬ状態を作るためには、沖縄に米軍施設を集中させないほうがよい。現状は戦略的に再考すべきだ。

 第3にロビー活動を取り上げた。ロビー活動とは、外国が米国国内の政治力を買うことを意味する。米国の有識者や議員と会って情報提供したり意見交換したりする行為は啓発活動という。

 第4は米議会の重要性について。米国の大統領はあくまで行政の長であり、立法府である議会を直接制すことはできない(民主主義国なので、行政府と立法府は互いを監視・チェックしあう関係にある)。米議会は、日本と異なり行政との重複部分がないため、全く別物の政治力と考えるべきである(海兵隊に影響力を与えられるのは、大統領と議会のみ)。そのため、米国において、行政に掛け合っても埒があかない場合、議会に話にいくのが通例である。

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「沖縄県への“遺言”(その1)」の著者

吉川 由紀枝

吉川 由紀枝(よしかわ・ゆきえ)

ライシャワーセンター 研究員

慶応義塾大学商学部卒業。アクセンチュアに勤務。2005年コロンビア大学にて修士号取得後、ライシャワーセンターにてアジャンクト・フェロー。2012年-2014年は沖縄県知事公室地域安全政策課主任研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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