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トランプ政策の皮肉な副産物

移民の代わりにロボットへ

2017年7月25日(火)

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 「米国第一主義」という旗印の下、移民に対して抑制的な政策を打ち出しているトランプ政権。不法移民の国外追放や取り締まり強化、専門的な技能を持つ外国人に発給される「H-1B」ビザ審査の厳格化、外国人起業家に門戸を開くためにオバマ政権が導入した「スタートアップ・ビザ」の実施延期など、様々なレベルで締め付けを強化している。その狙いの一つは米国人の雇用確保だが、足元で起きている状況を見ると、トランプ大統領の認識とは少し異なる。(下の動画をごらんください)

(ニューヨーク支局 篠原匡、長野光)

 五大湖の一つ、ミシガン湖に接する米中西部ウィスコンシン州。酪農やチーズ生産が盛んなことで知られているが、一方で衛生陶器のコーラーやバイク製造のハーレーダビットソンが同州に本拠を置くなど製造業の集積も進んでいる。最近は同州出身のポール・ライアン下院議長や、トランプ大統領の首席補佐官を務めるラインス・プリーバス氏の関連でこの地名を聞くことも少なくない。そんなウィスコンシン州の製造業は深刻な問題を抱えている。労働力が足りないのだ。

 「セールスの伸びは極めて強いが、このままの状況が続けばビジネスを少し減らす必要があるかもしれない」

 芝刈り機や除雪機で高いシェアを誇るアリエンスのダン・アリエンスCEO(最高経営責任者)はそう語ると顔をしかめた。

芝刈り機や除雪機を製造するアリエンスのダン・アリエンスCEO(上)と製造現場(下)

 新製品の引き合いが予想以上に強く、除雪機で40%、芝刈り機も20%の増産を目指している。そのためには200人の労働者が必要だが、2月から人材募集をかけているのに一向に集まらない。急場を凌ぐため、近隣のグリーンベイからマイクロバスでソマリア難民を連れてきた。また、今の時期は9月からの新学期に向けて学生が休暇に入っているため学生バイトも増やしている。それでも、9月以降に労働力が足りなくなることに変わりはない。

 「人材募集に27万ドルをかけたが、これは前年の10倍だ。来年度も30万ドルの予算を組んでいる」

 これはアリエンスに限った話ではない。同じウィスコンシン州シボイガン郡で発砲材料を用いた製品を手がけるプリマス・フォームも7つの職種で人材を募集中だ。

 「本格的に人手不足が問題になってきたと感じたのは1年ほど前から。失業率が下がるのは嬉しいことだけど……。今後も厳しい状況が続くと思う」。そうデイビッド・ボーランドCEOは打ち明ける。同州の失業率は5月で3.1%と、全米平均(6月で4.4%)を大きく下回る。

 そして、同じような悩みを全米の企業経営者が抱えている。

経済好調の副作用

 アリエンスから西に2400km、ユタ州ソルトレイクシティ。屋根材の販売を手がけるルーファーズ・サプライのステファニー・パパスCEOはトラックドライバーを探すために走り回っている。「この2年間で人手不足が深刻になってきた。今が一番苦しい」。

屋根材を販売するルーファーズ・サプライのステファニー・パパスCEO(上)と作業現場(下)

 労働環境が過酷なトラックドライバーはもともと労働力の確保が難しい。その中でもルーファーズのドライバーは目的地に運ぶだけでなく、建設現場で屋根材を降ろしたり、クレーンで建物の上まで屋根材を上げたり、複雑な作業が求められるため求人のハードルが高い。退役軍人の採用を検討し始めたほか、トラック免許の教習所に求人を出したり、免許の取得をサポートするなどの対応をしているが、必要な人数は確保できていない。

 なぜこのような状況になっているのか。一つは堅調な米国経済だ。

 フィラデルフィア連銀が毎月出しているState Coincident Index。これは非農業部門就業者数や製造業の平均時給、失業率などのデータを元に全米50州の経済状況を示したものだ。過去3カ月の変化を見ると、アラバマ州の3.9%増を筆頭に44州で数値が改善している。

多くの州で景況感が改善している
注:フィラデルフィア連銀が毎月発表しているState Coincident Index。非農業部門就業者数や製造業の平均時給、失業率など4つの統計から算出。3カ月の変化を示している
出所:Federal Reserve Bank of Philadelphia

 全米に目を転じても、2017年第1四半期の実質GDP(国内総生産)成長率は1.4%増にとどまったが、個人消費はいまだ堅調だ。低調だった設備投資もここに来て拡大しており、企業の景況感は悪くない。通商政策をはじめトランプ政権が進める政策には不透明感も漂うが、米経済は今のところ「適温」の状態が続いている。

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「トランプ政策の皮肉な副産物」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

長野 光

長野 光(ながの・ひかる)

日経ビジネスニューヨーク支局記者

2008年米ラトガース大学卒業、専攻は美術。ニューヨークで芸術家のアシスタント、日系テレビ番組の制作会社などを経て、2014年日経BPニューヨーク支局に現地採用スタッフとして入社。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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