Winter Festa2017-2018

電気自動車は石油消費を減らせない?

EVシフトのエネルギー論

  • 石油経済研究会 大場 紀章

英国やフランスではEV化規制も
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 EV(電気自動車)シフトが報道を賑わしている。フランスや英国が「2040年にガソリン・ディーゼル車の販売禁止」を打ち出したことがきっかけだ。その動きに呼応するかのように欧州を中心に自動車各社はEV戦略を喧伝(けんでん)し始めている。

 ガソリン車やディーゼル車がEVに置き換わっていくとしたら、石油など一次エネルギーの供給構造にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。

国や自動車メーカーで異なる思惑

 同じようにEVシフトを打ち上げていても、国や自動車メーカーにより、それぞれの思惑は異なる。発表の仕方を見ていると、フランス政府は「CO2削減」を第1の目標に掲げているのに対して、英国政府は「NOx(窒素酸化物)などによる都市部の大気汚染の緩和」に重きを置いている。

 1つ言えることは、英国とフランスに共通することとして、自動車産業の国際競争力はさほど強くないということだろう(2016年の自動車生産台数でフランスは11位、英国は13位)。だからこそ、このような大胆な宣言ができたのではないか。

 逆に自動車産業で競争優位に立ち、環境技術としてのハイブリッド技術で先行する日本やドイツの政府は、EVシフトには相対的に慎重な姿勢をとっているように見える(2016年の自動車生産台数で日本は3位、ドイツは4位)。

 そう考えれば、英国やフランスは、自国の自動車の国際競争力や環境技術の劣位を逆手にとった面は否めない。

 ドイツの自動車メーカーが打ち出しているEV戦略は、主に中国市場をターゲットにしたものだ。国内や欧州市場向けでは、これまでHV(ハイブリッド車)の対抗軸と位置づけてきたディーゼル車がフォルクスワーゲン(VW)の不正によって傷つき、EV戦略はしぶしぶ打ち出したという感さえある。メルケル首相は「2正面作戦」とコメントしている。

 一方、あまり明示的には触れられていないものの、EVシフトを目指す多くの国にとって究極的に重要なのは、将来の石油供給に対するエネルギー安全保障上の懸念だろう。

 再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいる。とはいえ、世界のエネルギー供給の8割は依然として石油、天然ガス、石炭といった化石燃料に依存している。自動車用燃料に至ってはほぼ100%が石油である。そして、化石燃料の中で最も早くに供給懸念が出てきそうな(既に出始めている)のが石油であり、石油への依存を少しでも減らしたいと考えるのは国家戦略としては当然だろう。

 米国のトランプ政権は、シェール革命を背景に石油産業を振興し、むしろ石油の輸出を外交カードとして活用する姿勢さえ見せている。EVシフトへの関心は薄い。

 しかし、シェールオイルの供給は2020年代にもピークを迎える(この問題は稿を改めて取り上げたい)。トランプ政権の間は大きな懸念に至らないかもしれないが、長期的に安心していられる状況ではない。

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いただいたコメントコメント27件

現実をとても正確に踏まえた記事だと思います。
その上でEVなりHVなりは技術開発を進め無理のない形で普及させる。また移動や物流のあり方発電のあり方も長期的な視点を持ってかたちを変えていく必要があると思います。けっして無意味なのではなく、実社会に合わせて実用化しないといけないということなのだと思います。(2017/12/07 01:13)

電気、電気と騒ぐ連中に問いたい
その電気は何から作るの?

火力なら意味ないでしょう
どんなに高効率の発電機つかってもエネルギー変換効率は90%台
10%近くが熱などとして逃げていく
だったら直接、内燃機で燃やすのと変らないじゃん
既存のエンジンカーを新規にEVカーにリプレイスするのだって生産過程で膨大なエネルギーを消費するよね
これって環境ファッショでしょ
もっと言えば目に映る部分だけをクローズアップして、自分で考える頭を持たないバカを騙す「詭弁」だよ(2017/12/06 09:24)

やたら欧州のEVシフトを持ち上げそれに比べて日本が遅れているだのロクな技術知識が無いか
何かの思惑で言っている無知な評論家や記者連中の記事にうんざりしていた中、多少はまともな記事が出できたと一応評価したい。今のEVブームなどインチキディーゼルで名誉失墜したVWをはじめとする欧州メーカの目くらましとEVで覇権を握りたい中国、およびCAの環境意識が高いと称する金持ちの道楽でしかない。そもそも地球上の自動車全部をEVで置き換えるのに希少資源であるリチウムが足りるはずがない。また、トヨタ会長が言うように電動化とEVを混同してはいけない。様々な部分でモータ技術を応用した電動化は進むだろうが巷に氾濫しているEVとは別物である。個人的にEVをやめろとは言わないが、FCVとバイオ燃料等他のCO2フリー候補含め何が本命なのかはまだわからない。だからこそブームに惑わされずに地道な研究開発が必要なのだし、合わせてマツダのように内燃機関の究極の効率化を目指すべきなのだ。ロクでもないメディア記事に騙されるべきではないし、欧州メーカには「まずはまともなエンジンを作れ。話はそれからだ!」と言いたい。(2017/12/05 21:16)

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