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社員1000人を福島に送り込む凸版印刷

「衝撃の研修」で大組織が変わる

2018年3月9日(金)

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 福島で社員を鍛える――。震災と原発事故の後、被災地で延々と社員研修を続ける凸版印刷。その数は、今年にも1000人を超える。「本当に、ここで研修をやっていいのか」。人材教育のトップ、巽庸一朗(たつみ・よういちろう)人財開発センター長は当初そう震えたが、参加者は強烈なインパクトを受けた。「被災者がゼロから立ち直ろうと努力を重ねているのに、自分たちの仕事はこれでいいのか」。そして、大組織をも変えることになる。

凸版印刷で被災地研修を企画し続けている巽庸一朗(たつみ・よういちろう)人財開発センター長(写真:野口 勝宏)

若手から本部長クラスまで、多くの教育研修を被災地の福島で実施しています。

巽庸一朗氏(以下、巽):そもそも、人財開発センターって、2011年4月に立ち上がったんですよ。

座学では、社会問題は解決できない

震災直後にできた、と。

:はい。ただし、震災があったから作ったわけではありません。その前から、社長が「人材を強化する」ということで、人財開発センターの立ち上げが決まっていました。その時に、社長が言った言葉があります。

 「売り上げや利益は必要だけど、目的じゃないんだ。目的は、社会から愛され、必要とされる会社になることだ」と。

いい言葉ですね。

:その言葉を受けて、私は人財開発センター長になることが内定していました。

そこに大震災が起きた。

:それで、いろいろ考えて、社会問題解決のための教育プログラムを翌年に立ち上げました。でも、当初は研修センターでやっていたんです。これでは限界があると思いました。やはり、社会問題がある場所まで行って体感して、強い思いを持って取り組まなければ身につかない。それで、2013年に福島に来たんです。

福島は原発問題も抱え、被災地の中でも難しい課題があります。

:最初は相当、どきどきしたんです。「研修なんかやっていいのか」と。いろいろな企業の方が被災地に行ってはいましたけど、福島にはなかなかみなさん行かれなくて、仙台とかその上(北)の方に行っていた。

福島県浪江町の人気のない町を歩く凸版印刷の幹部社員たち

 それでも福島駅で集合して、飯舘を越えて南相馬まで来て半谷(栄寿・あすびと福島代表理事)さんにも会ったんです。その時は、やはり衝撃的でした。本当に被災地のど真ん中で、ほかに建物もなかった。まさに流された地域ですので。緊張していましたね。住民のみなさんに失礼があったらいけないとか、社員を連れてくる責任者としては、あらゆることがプレッシャーでした。ただ、半谷さんとご縁ができて、その後も勉強させていただく機会を得られました。

当時、半谷さんは太陽光パネルを設置したばかりで、プレハブでやっていた頃ですね。

:そうですね、小さなプレハブでした。この最初の福島での研修が終わった後、参加した社員たちの反応がものすごかった。通常の研修と違って、やはり胸に刺さる。直接、社会的課題を見たインパクトが大きくて、ほかの研修では得られない「学び」がここにある、と私自身も痛感しました。

 それで、その年末に半谷さんの所にうかがって、研修結果の報告をして、「もっと多くの社員にこれを体験させたい」と相談しました。

それで、翌14年から本格的な研修がスタートするわけですね。

:そうです。年6回、1泊2日のプログラムで実施しました。各回に社員18人が参加しています。

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「社員1000人を福島に送り込む凸版印刷」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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