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「介護休暇やるから自己責任で」は最悪の支援策

「となりのかいご」代表理事・川内 潤さん(その5)

2018年3月23日(金)

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 『母さん、ごめん。』の著者、松浦晋也さんと、NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤さんが、松浦さんがお母さんを介護した現場である、ご自宅で「会社員の息子が母親を介護する」ことについて、語り合います。他人事ではない担当編集Yも絡みます。

Y:松浦さんは「身も蓋もなく、まずはお金」と言っていましたが(「父の死で知った「代替療法に意味なし」」)、お金があっても、精神的には追い込まれてしまうものですか。

川内:リテラシーがなければ。基本的な知識のない状態で、パニックになってばたばたと「とにかく、整った施設にいれないと」と動いたことで、要介護者のご本人が納得も安心もしないまま、施設で鬱々としていらっしゃったり、ご家族もその姿を見てやっぱり辛かったり、その姿を「もう見ていられない」と、別のご兄弟が契約解除をして戻したり、というケースもあったりします。

松浦:それでは、単に親を押し付け合っているのと変わらないでしょう。

川内:そうです。おっしゃる通りです。介護のリテラシーがあれば、「いやいや、それはまだ在宅でこういうサービスもあって」と一拍二拍置くこともできる。先にお話に出ていますが、「人から食事や排泄の世話を受ける」ということを、ご本人の気持ちが受け入れる準備をつくっていく期間というのも実はすごく大事な時間ですし。

 お金があっても、そういう知識や配慮がまったくなくて、「ああ、本人はもうわけが分からなくなっているから」と、とにかく施設に入居させて、髪の毛だって丸坊主で全然構わない、というご家族も現実にいらっしゃるのです。母親の髪の毛を整えることにお金を払って、何の意味があるのか、という感覚を持っているということです。

 でも、そのご本人はもう毎日のようにオードリー・ペップバーンの写真を見ていらっしゃって、「いいなあ」という表情をされているわけです。だからご家族に、いや、丸坊主というんじゃなくて月に1回でいいから訪問理容を。1000円、払っていただいたらご本人はきっと喜ばれると思うんですよ、とお伝えするのが介護のプロなんです。

Y:その介護者の方は、母親という安全地帯を失って、拗ねて、怒っているようにも思えますね(※第3回「男性必読!貴兄が母親に辛く当たってしまう理由」参照)。

「介護? 有休あげればいいんだろ」は愚策

川内:ええ。そういうふうに「線を引く」ことで右肩下がりになっていくお母さんを見ない、見ずに済む、と考えてしまう人もいるんだなと。そう思うと、介護というフェーズに入っていくときの気持ちの持ち方は、とても大事なことなんだなと思います。

松浦:組織としての企業側が、そこまで理解するのは相当難しそうですよね。

川内:はい、難しいです。すべての企業さんが介護支援に対して前向きであるわけではないですし、施策を一生懸命やっているふうに見えるんだけれども、でも実は中身が全然伴ってないケースもあって。

川内 潤(かわうち・じゅん)1980年生まれ。老人ホーム紹介事業、外資系コンサル会社、在宅・施設介護職員を経て、2008年に市民団体「となりのかいご」設立。2014年に「となりのかいご」をNPO法人化、代表理事に就任。ミッションは「家族を大切に思い一生懸命介護するからこそ虐待してしまうプロセスを断ち切る」こと。誰もが自然に家族の介護に向かうことができる社会の実現を目指し、日々奮闘中。

 例えば「うちは365日介護休暇を取れます」という施策をばんと打ち出して、マスコミも取り上げているんだけれども、実際に使っている人はほとんどいない。もしくは、それを使う人はもう辞める準備に入っている。これだと、もう何のためのこの制度、施策なんですかということになるわけですよね。

松浦:だいたい、何日か休めば片が付くかといったらそうじゃないことが多いので……。

川内:おっしゃる通りです。休暇だけでなく、ありがちな悩みや疑問に寄り添って、仕事とどうやって両立するのがいいかを一緒に考える、ソフト面のケアが一緒に付いていないと。ある意味、「休暇はやるから自分でなんとかしろ。ただし、社業に迷惑だけはかけるな」と、無策に休ませてしまうことが一番よくないかもしれません。

松浦:本格的に介護体制に入ったら、社業に迷惑、かけないで済むわけがないです。済んでいるなら、本人が体と心を酷使しているはずです。

コメント3件コメント/レビュー

主人の父が興した、従業員10人の小さな会社をやっています。
半数の従業員がそろそろ親の介護に直面する世代。大変共感を覚えました。
なかなか新規募集をかけられない・かけても定着しない現状もあり、今後の対応への参考になりました。
先代から支えてくれている従業員を大事にして寄り添いながら、小さい会社だからこその良さも出して次代へつなげて行こうと思います。

自分たちの親のこともそろそろ射程圏ですが、準備を怠らないように、幸せな時間を過ごしてもらえるように、私たちも勉強しないとだめですね…(2018/03/23 15:41)

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「「介護休暇やるから自己責任で」は最悪の支援策」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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主人の父が興した、従業員10人の小さな会社をやっています。
半数の従業員がそろそろ親の介護に直面する世代。大変共感を覚えました。
なかなか新規募集をかけられない・かけても定着しない現状もあり、今後の対応への参考になりました。
先代から支えてくれている従業員を大事にして寄り添いながら、小さい会社だからこその良さも出して次代へつなげて行こうと思います。

自分たちの親のこともそろそろ射程圏ですが、準備を怠らないように、幸せな時間を過ごしてもらえるように、私たちも勉強しないとだめですね…(2018/03/23 15:41)

これからは積極的に「人に弱みを見せていく」人間が救われるのだと思います。
50代以上の所謂成功した男性に「弱みを見せない」人が多い背景には絶句しましたが・・・(2018/03/23 09:06)

大企業では「中高年は早く辞めてくれ」はいまだに本音だと思います。

人気の企業は、いくらでも優秀な若手の人員補充ができます。

それに年功序列で成果以上に高い給与をもらっている社員は邪魔だと思っています。

あからさまには言いませんけど。(2018/03/23 07:12)

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