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あなたは、自分の母親の下着を知っているか?

ヘルパーさんの導入と、長時間デイサービス通所に踏み切る

2017年5月18日(木)

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(前回→「『「これをお母様に」』が生む地獄の苦しみ」)

 2015年の5月、公的介護の導入と並行して、私は韓国のソウルに1週間出張する準備を進めていた。World Conference of Science Journalists(WCSJ)という科学ジャーナリストの国際会議がソウルで開催されることになっており、私のところに宇宙開発関連のセッションでパネラーとして登壇してほしいというリクエストが来ていたのだ。

 家庭のことを考えると、断るべきかとも考えた。
 母の病状は徐々にではあるが進行していたためだ。

 2014年12月には夕食を宅配に頼むだけで、ひとりで家に残して、種子島の取材に赴くことができた。しかし、半年を経た2015年6月には、自分で朝食、昼食を作ることができなくなっていた。

 が、このまま介護が続くと、自分が取材をすることが、どんどん難しくなっていくことが容易に想像できた。私のようなノンフィクション系の物書きは、外に出て様々な情報に接することが、仕事を継続するにあたっての生命線である。取材ができなければ、文章というアウトプットを行えなくなり、商売あがったりになってしまう。それでは、母の介護を続けることも不可能になる。

ヘルパーさん導入のステップとして

 「なんとかなります」と言ってくれたのは、ケアマネージャーのTさんだった。

 「ちょうど要介護1の認定が出たところだし、6月の公的介護保険制度の点数は十分にあります。松浦さんのソウル出張に合わせて、ヘルパーさんに来てもらうようにしましょう。食事のタイミングで1日3回、それぞれ1時間ずつヘルパーさんに入ってもらえれば、お母さんもきちんと生活できるでしょう」

 母は毎週金曜日に、リハビリテーション専門のデイサービスに通うようになっていた。前々回書いた(「『イヤ、行かない』母即答、施設通所初日の戦い」)ように、円滑な通所のために、朝の送り出しにヘルパーさんに入ってもらおうと話していたところだった。

 今後どのような形になるにせよ、認知症老人の介護について心得を持つヘルパーさんが入ることは不可避だ。とするなら、この機会に、集中的にヘルパーさんに来てもらうようにして、母を慣れさせておくべきだろう。

 大変ありがたいことに、私の出張の後半から、ドイツ滞在中の妹が1週間の休暇を取って一時帰国してくれることになった。滞在中に、私では手の回らない母の身辺諸々のことを片付けてくれるという。弟も仕事の合間に顔をだすとのことだ。

 かくして準備を整えて、6月7日、私はソウルに旅立った。

本連載、ついに単行本化。
タイトルは『母さん、ごめん』です。

 この連載「介護生活敗戦記」が『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本になりました。

 老いていく親を気遣いつつ、日々の生活に取り紛れてしまい、それでもどこかで心配している方は、いわゆる介護のハウツー本を読む気にはなりにくいし、読んでもどこかリアリティがなくて、なかなか頭に入らないと思います。

 ノンフィクションの手法でペーソスを交えて書かれたこの本は、ビジネスパーソンが「いざ介護」となったときにどう体制を構築するかを学ぶための、読みやすさと実用性を併せ持っています。

 そして、まとめて最後まで読むと、この本が連載から大きく改題された理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。単なる介護のハウツーを語った本ではない、という実感があったからこそ、ややセンチな題となりました。

 どうぞお手にとって改めてご覧下さい。夕暮れの鉄橋を渡る電車が目印です。よろしくお願い申し上げます。(担当編集Y)

コメント6件コメント/レビュー

色々と試行錯誤されているご様子、私自身の認知症の母介護開始当初を思い出し、何やら感動してしまいます。やはり、家族介護だけでは本人のためにもよろしくないのでしょうね。私もプロの方の支援をたくさんにいただきました。地域包括支援センターの職員さん、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、訪問看護師さん、デイケアの介護士さん、特養のスタッフのみなさん、さらには成年後見人の司法書士の先生・・・みなさんそれぞれに役割があり、結果として、家族がそのようなプロのみなさんとどう上手にお付き合いさせていただくかが、介護ではポイントなのかなと思っています。でも、一番は、お母様のお気持ちですよね。どうか、しっかりお話を聴いて差し上げ、言葉にはならないお気持ちも表情や振舞いから感じ取ってあげていただけますように。(2017/05/18 18:28)

「介護生活敗戦記」のバックナンバー

一覧

「あなたは、自分の母親の下着を知っているか?」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

色々と試行錯誤されているご様子、私自身の認知症の母介護開始当初を思い出し、何やら感動してしまいます。やはり、家族介護だけでは本人のためにもよろしくないのでしょうね。私もプロの方の支援をたくさんにいただきました。地域包括支援センターの職員さん、ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、訪問看護師さん、デイケアの介護士さん、特養のスタッフのみなさん、さらには成年後見人の司法書士の先生・・・みなさんそれぞれに役割があり、結果として、家族がそのようなプロのみなさんとどう上手にお付き合いさせていただくかが、介護ではポイントなのかなと思っています。でも、一番は、お母様のお気持ちですよね。どうか、しっかりお話を聴いて差し上げ、言葉にはならないお気持ちも表情や振舞いから感じ取ってあげていただけますように。(2017/05/18 18:28)

この記事の記者と私の違いは、私は自分自身が既に年金生活者で仕事を持っていない事だ。それ以外の状況は非常に似通っている。母は私が介護のために妻と別居して500km離れた実家に単身転居してきた当初から「要支援2」で3年弱になる今も変わらない。デイサービスも含めて、老人対象の「施設」に行くのは、他人に気を使わないといけないので好きではない。私が帰郷する3年前までは週2回通っていたが、事故を目撃したのを機会に行くのを止めて自宅での一人暮らしだった。私が戻って、一緒に生活して気が付いたのは、母が非常に「我儘」になっていると感じたので、無理矢理デイサービスに通わせたが、週2回行けるところを1回で押し切られてしまった。私としては結婚以来たまにしかやった事のない家事全般を休める日が週2日と1日では大きな違いなのだが、彼女には私に対する気遣いは殆どなかった。週1回行く様にしたのも、口論を何回も繰り返した末の事だった。週1回のデイサービスの他に、私が戻るまで週2回ヘルパーが来ていたのが、同居人が出来た事で週1回に減らされた。それが、今日ケアマネージャージャーが来て、「生活援助」だけ受けている要支援の対象には来月からヘルパーは出せない事になったと告げられた。2ヶ月ほど前に受けた説明では、「生活援助」は介護保険による事業から市町村による事業に切り替わると言われていたので、「身体介護」項目では、ベッドから起き上がるのに使う手すりをレンタルしている事が残るだけで、ヘルパーから「身体介護」は受けていないので、高度な知識の必要のないバランティアに切り替わるだけだと思っていたのだ。それが、「先の事は市のボランティアの状況次第で、その前に取り敢えずヘルパーは来月からは来ません。」とは驚きだった。私にとって母は高校卒業以来50年弱もの長い間居を別にしていた人であり、特に結婚後の40年以上は500km離れていたので年1回顔を見せに帰郷する程度だった。人生観も価値観も「全く」違う二人が同じ家に住む事になったという状況だった。今時、「跡取り」なんて流行らないし、言う程の資産家でもない。現在の法律では、例えば遺産があったにしても兄弟は人数で等分されてしまい、「後継ぎ」が大方の資産を相続すると保証もされていない。これは不平等というものだ。(2017/05/18 18:17)

『あなたは、自分の母親の下着を知っているか?』

これは最後の部分と合わせると男性読者を意識しているようですが、実際には男性か女性かはあまり関係ないと思います。

ひとつには下着というプライベートな物の場合、元気な時に見せたり話したりということはそもそもないので(家庭によるのかもしれませんが)ストックについて普段から知識があるわけではないし、元気がない状態ではおしゃれな物を身に着けたりしないでしょうから、女性用になるだけで、基本は男性が着ける下着と同じものに限定されてくるからです。

もうひとつは、介護が必要な状況では下着そのものが変わってくるからです。癌で入院した母の場合、最後の最後に自分で下着の交換ができなくなった頃に介護用品売り場で前開きのシャツを買いましたが、以前から吐くなど汚して下着を交換することはあり、看護師さんは喜んでいるように思いました。値段は高く、立場につけこんでボラれている気もしていい感じはしなかったし、2着買ってそれぞれ2,3回しか使わなかったのですが、看護師さんの手間を考えればもっと早くに換えればよかったと後悔しましたので、現在介護をお願いしている立場の方のご参考になればと思います。(2017/05/18 11:14)

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