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認知症で過食の母、「空腹だ」と台所を荒らす

体制が整うと病状悪化、介護は終わりなき後退戦

2017年6月15日(木)

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 2015年7月から、母の生活は大きく変化した。

 前々回(「「肩が痛い」母の言葉を疑ったばっかりに」)に書いた脱臼騒ぎの結果、居室は2階の自室から、1階の応接間に移った。応接間に設置した介護用ベッドで寝起きする。

 1週間単位のスケジュールは以下のようなものになった。

 まず月曜日はデイサービスに通う。朝の9時から夕方の5時までは、出かけてくれるので、私はやっと自分の時間を取り戻すことができた。

 火曜日から木曜日、そして土曜日は、昼食の時間帯にヘルパーさんが入って、昼食を作り、同時に身の回りの世話をしてくれる。私は昼食作りから解放されたわけだ。

 金曜日は午前中半日を、リハビリテーション主体のデイサービスに通う。
 日曜日は、従来通り、私が全部の世話をする。

 欠かせないのは、老犬を連れての毎日の散歩だ。4月に散歩途中で転び、上前歯のブリッジを吹っ飛ばして以来、散歩には私が付きそうようになった。月曜日と金曜日は帰宅後、火曜日から木曜日、そして土日は朝食後すぐ、「散歩に行きましょう」と誘って、犬と共に母を外に連れ出す。犬の引き綱は母に持たせ、私は犬の糞を回収する袋を持って付き従い、1kmほどを40~50分ばかりかけて歩く。体力を維持するという意味もあったし、なにより母にとって犬の散歩は長年の習慣なのでなるべく途切れさせたくはなかった。

 このスケジュールが定着したことで、やっと母の介護が軌道に乗ったと言っていい。

 それまでのなにもかもを私が引き受けていた時とは、段違いで楽になり、外出しての取材のような、それまでは不可能だった仕事もできるようになった。夕食も、仕出し弁当屋の仕出し夕食膳をとれば、夜遅くまで外出することができる。

 短期間の宿泊サービスである、ショートステイの利用も始めた。

 例によって母は最初は利用を拒否したが、今や私一人ではなく、送り出しを担当するヘルパーさんがついている。ベテランのKさん、Wさんの手をわずらわせ、徐々に母は数日のショートステイに行ってくれるようになった。これでやっと私は、宿泊ありの出張をこなせるようになった。

 8月に入ると、デイサービスの定員に空きが出たので、水曜日も9時5時でデイサービスに通うようになった。ありがたい限りである。

 このままの日々が続けば良かった。
 だが……認知症介護の恐ろしいところは、通常の老化と認知症の症状とが手を取り合って進行するところにある。

 「これで良し」と整えた介護体制は、体制を組んでから数カ月程度でほころびが見え始め、次のより手厚い介護体制を組み直さなくてはいけなくなるのであった。

本連載、ついに単行本化。
タイトルは『母さん、ごめん』です。

 この連載「介護生活敗戦記」が『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本になりました。

 老いていく親を気遣いつつ、日々の生活に取り紛れてしまい、それでもどこかで心配している方は、いわゆる介護のハウツー本を読む気にはなりにくいし、読んでもどこかリアリティがなくて、なかなか頭に入らないと思います。

 ノンフィクションの手法でペーソスを交えて書かれたこの本は、ビジネスパーソンが「いざ介護」となったときにどう体制を構築するかを学ぶための、読みやすさと実用性を併せ持っています。

 そして、まとめて最後まで読むと、この本が連載から大きく改題された理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。単なる介護のハウツーを語った本ではない、という実感があったからこそ、ややセンチな題となりました。

 どうぞお手にとって改めてご覧下さい。夕暮れの鉄橋を渡る電車が目印です。よろしくお願い申し上げます。(担当編集Y)

コメント25件コメント/レビュー

都心でSEをしており、その際、宇宙開発に関するシステム対応をしていた事もあり、松浦さんの記事を大変参考にさせていただいておりました。

自分も両親がほぼ同時に衰えが目立ち始め、父は肺線維症からのHOT(酸素供給器)を付ける障害者に、母はパーキンソン病(まだ薬でコントロールできています。)にと、地方の実家で同居せざるを得なくなり、地方に戻ってコンピュータとは縁遠い介護職に就職することになって1年半・・・

介護職としてまだ駆け出しですが、現在、特養で働いています。

実際に職場ではいろいろな利用者様の対応をしておりますが、自分の両親、特に父に認知症の症状が現れ出した最近・・・
SEだった頃の習慣で、いつものようにITプロ、日経ビジネスの記事を読んでいて介護で検索を掛けたところ、介護生活敗戦記の連載を見つけました。

実際に介護職の基礎研修を受け、しかも現場で1年以上経っている人間ではありますが、家族に介護が必要な状況になるまで、何をどうすべきか、どう対処すれば良いのかを迷うのが現実です。

増して、普通の方々は介護と言っても何をどうするのかは、クエスチョンマークの連続だと思いますし、各地方行政も国も、介護の相談をどこにどう持っていくのか、自宅介護ではどう考えるべきなのかは本当に判りづらい状況だと思います。

本連載は、松浦さんの体験を基にされており、ごく普通な方がどう感じ、どう対処したのかのケースの1つとして、言葉が悪いですがとても有意義で参考になるものだと思います。

ここまでの体験記と実際の行政による支援策や相談先(地域包括支援センターなど)、そして厚生労働省が進める地域包括ケアシステムについて、是非、本にして出版していただければと感じました。

あと、にわかプロ(?)としてのお願いですが、松浦さんのお気持ちを考えると非常に心苦しいのですが、特養などでのお看取りまで含め、今の松浦さんのお考え・対応を連載として残していただきたい。
そして、それも出版していただければと思った次第です。

本連載、松浦さんの宇宙開発系の記事と同じ、地道な取材・体験を基にされており、心を打つものです。いろいろと大変とは思いますが、頑張ってください。期待して読まさせていただきます。(2017/07/01 09:49)

「介護生活敗戦記」のバックナンバー

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「認知症で過食の母、「空腹だ」と台所を荒らす」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

都心でSEをしており、その際、宇宙開発に関するシステム対応をしていた事もあり、松浦さんの記事を大変参考にさせていただいておりました。

自分も両親がほぼ同時に衰えが目立ち始め、父は肺線維症からのHOT(酸素供給器)を付ける障害者に、母はパーキンソン病(まだ薬でコントロールできています。)にと、地方の実家で同居せざるを得なくなり、地方に戻ってコンピュータとは縁遠い介護職に就職することになって1年半・・・

介護職としてまだ駆け出しですが、現在、特養で働いています。

実際に職場ではいろいろな利用者様の対応をしておりますが、自分の両親、特に父に認知症の症状が現れ出した最近・・・
SEだった頃の習慣で、いつものようにITプロ、日経ビジネスの記事を読んでいて介護で検索を掛けたところ、介護生活敗戦記の連載を見つけました。

実際に介護職の基礎研修を受け、しかも現場で1年以上経っている人間ではありますが、家族に介護が必要な状況になるまで、何をどうすべきか、どう対処すれば良いのかを迷うのが現実です。

増して、普通の方々は介護と言っても何をどうするのかは、クエスチョンマークの連続だと思いますし、各地方行政も国も、介護の相談をどこにどう持っていくのか、自宅介護ではどう考えるべきなのかは本当に判りづらい状況だと思います。

本連載は、松浦さんの体験を基にされており、ごく普通な方がどう感じ、どう対処したのかのケースの1つとして、言葉が悪いですがとても有意義で参考になるものだと思います。

ここまでの体験記と実際の行政による支援策や相談先(地域包括支援センターなど)、そして厚生労働省が進める地域包括ケアシステムについて、是非、本にして出版していただければと感じました。

あと、にわかプロ(?)としてのお願いですが、松浦さんのお気持ちを考えると非常に心苦しいのですが、特養などでのお看取りまで含め、今の松浦さんのお考え・対応を連載として残していただきたい。
そして、それも出版していただければと思った次第です。

本連載、松浦さんの宇宙開発系の記事と同じ、地道な取材・体験を基にされており、心を打つものです。いろいろと大変とは思いますが、頑張ってください。期待して読まさせていただきます。(2017/07/01 09:49)

>このシリーズを読んでいて驚くのは、多くの方がこのレベルの介護をするつもり、してもらうつもりであるらしいことです。私はする気も、してもらう気もないのですが…。

自分が介護される側ならばそう思いますが、介護する側がこのレベル以下だと「保護責任遺棄」「虐待」「ネグレクト」と社会的に責められるのみならず刑事罰を受ける世の中ですからどうしようもありません。
5分10分うとうとして目を放した隙に線路侵入でもされたらJRから数百万数千万の賠償請求訴訟を起こされ、裁判官も保護責任を認め賠償命令を下す。それが介護大国日本の現状です。(2017/06/20 15:23)

私の父は過食の後歯を悪くして食べなくなりました。

そして、次第に好物でも食べ物と認識出来なくなってきた。

更に便の失敗もほぼ毎回となり、これ以上の自宅介護は母が壊れてしまうと思い出した矢先、少し目を離した隙に一人で外出して行方不明になり、他界しました。

自分はどうやって幕をおろそうか。

暫く頭にこびりついて離れませんでした。(2017/06/19 15:14)

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