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病状が進行し、やたらと怒る母。薬を増やすか?

新しい薬と塩分を巡る攻防

2017年6月29日(木)

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 2015年12月、主治医を総合病院のA医師から、開業医のH医師へと代えた最初の診断の日、母はH医師へやたらとつっかかる対応をした。

 「私なんともありません。本当はこんなとこ、こなくたっていいのよ」
 「なんでそんなこと聞くんですか。関係ないでしょう」

 長谷川式認知症スケールのテストをしようとすると、「そんなこと必要ないです」と、答えようとしない。H医師の巧みな話術でうまくテストを受けさせることができたが、なぜここまで反抗するのかとちょっと不思議に思った。もともと母には、自分がアルツハイマー病とは認めない、認めたくないという意識はあったが、ここまで医師につっかかる対応をしたのは初めてだったからだ。

 最初は、環境の変化に拒否反応を示しているのかと思ったが、実際にはアルツハイマー病の症状のひとつだったようだった。性格が徐々に変化し、怒りやすくなってきたのだ。

 H医師のところへはほぼ1か月に1回、通院する。1月、2月と通院のたびに、母はH医師につっかかり、長谷川式認知症スケールのテストを拒むようになった。それだけではなく生活のなかでも些細なことに怒り、私と口論となるようになっていった。

 デイサービスに行く日の朝は、ヘルパーさんが来て母の身支度を手伝う。身内の私ではなく、他人のヘルパーさんが「行きましょう」とうながすと、すっと行ってくれるからだが、1月以降、「行きたくない」となかなか腰をあげようとしないことが増えていった。

メマリーの服用を始める

 2016年3月、要介護3の認定が出てから最初の通院の時、私はこのことをH医師に相談した。「うーん」とH医師はしばらく考えていたが、「薬を増やしましょうか」と提案してきた。

 「メマリーという薬があります。ある程度以上症状が進行したアルツハイマー病患者に効果的な薬です。現在服用してもらっているアリセプトと同時に服用することができて、なおかつ鎮静効果もあります。怒りっぽくなっているのは改善される可能性がありますよ」

 正直なところを言えば、鎮静効果という言葉に違和感を感じた。意識がはっきりしなくなり、昼間からぼおっとなってしまうのでは困ってしまう。また、「症状が進行したアルツハイマー病患者に効果的」という言葉も少々ショックだった。母のアルツハイマー病は、そこまで進行してしまったのか。

 認めたくない、アルツハイマー病が悪化しているなんて認めたくない。が、投薬開始のタイミングを逸して母の生活の質を落としてしまうわけにもいかない。

 こうして、母はアリセプトに加えて、メマリーも同時服用することになった。

 メマリー(商品名)は第一三共株式会社が2011年6月に発売した、比較的新しいアルツハイマー病の対症療法の薬だ。メマンチン塩酸塩という薬効成分を含む。

本連載、ついに単行本化。
タイトルは『母さん、ごめん』です。

 この連載「介護生活敗戦記」が『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本になりました。

 老いていく親を気遣いつつ、日々の生活に取り紛れてしまい、それでもどこかで心配している方は、いわゆる介護のハウツー本を読む気にはなりにくいし、読んでもどこかリアリティがなくて、なかなか頭に入らないと思います。

 ノンフィクションの手法でペーソスを交えて書かれたこの本は、ビジネスパーソンが「いざ介護」となったときにどう体制を構築するかを学ぶための、読みやすさと実用性を併せ持っています。

 そして、まとめて最後まで読むと、この本が連載から大きく改題された理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。単なる介護のハウツーを語った本ではない、という実感があったからこそ、ややセンチな題となりました。

 どうぞお手にとって改めてご覧下さい。夕暮れの鉄橋を渡る電車が目印です。よろしくお願い申し上げます。(担当編集Y)

コメント11件コメント/レビュー

最後にホロっとさせられました。(2017/07/05 14:44)

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「病状が進行し、やたらと怒る母。薬を増やすか?」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

最後にホロっとさせられました。(2017/07/05 14:44)

薬が合ってよかったです。私の母は、もともと(60歳ごろから)心臓弁狭窄になりメニエル、加齢黄斑変性となりました。そのため薬も大量に飲んでました(一日3回飲むのもたいへんなくらい)。そんな中、父が亡くなり49日を迎えた日に、ベッドから起き上がれなくなり、緊急入院。たまたま見てくれた先生が、薬を見直してくれて以前の半分程度の量に(ほとんど朝飲みに切り替えてくれた)。おかげで、病気が治ったわけではないが、結構健やかに過ごしている。薬は飲まないに越したことはないが、定期的に薬の見直しをしてもらうことはお勧めしたい。余談ですが、母も濃い口の人間ですので、うちでは、白だしやケチャップ、胡麻ドレッシングを結構利用してます。少しは減塩になるかもしれません。(2017/07/03 15:22)

なかなか実感できないでしょうが、会いたくても会えなくなる日が必ず来ます。
その時まで、本人の希望を踏まえて余生をどのように過ごしてもらい、残される家族があとで後悔しないように、家族自身が何をしてあげられるか?どんな思い出を作ることができるか? 肉親が少しでも長生きする可能性を家族が期待して本人に我慢を強いるのか、死期が早まるかもしれないけれど本人の好きなように過ごさせるのか?自分ならどのように見送って欲しいのか考えながら自ら介護すれば、方針は見えて来るでしょう。そして、とことん延命させることが本人のためではなく、家族のためであることに気づくでしょう。
また、それを実現するために、誰がどこで介護するのか? 他人に介護を任せるのならばなおさら薬を使い、介護する人の負担を減らすことも考えてあげなければなりません。もちろん、家族が直接介護する場合も薬を使っても良いでしょう。
自ら介護してお別れした後は、寂しさと同時に自由があるはずです。(2017/07/01 23:11)

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