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介護体制また崩壊、預金残高の減少が止まらない

ベテランヘルパーの戦線離脱と体力低下で追い込まれる

2017年7月6日(木)

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 要介護3の判定が出たあたりから、私は漠然と「将来的に母をどこかの施設に預ける必要がある」と考えるようになった。

 アルツハイマー病は治らない病気で、症状は進行する一方だ。そこに通常の老化も加わる。断熱もままならない築40年の古い家で、専門家ではない自分が母の介護をするにしても限界がある。それがいつになるのかは分からないが、将来、母は家を去ることになる。短期間の帰宅はあるかもしれないが、一度去ればもう戻ってくることはない。

 どこに預けるか、いくらかかるのかなど、その日のために準備しておかねばならないことは山ほどある。

 私は基本的に、母の介護は何事もケアマネージャーのTさんに相談するようにしていた。自分ひとりで考え込むよりも、知識を持ち経験を積んだプロに相談し、アドバイスをもらったほうがより的確に行動することができる。

 Tさんの答えは、「そうですね。ぼちぼちと色々な施設の見学に行ったらどうでしょうか。施設と一口にいっても種類は様々ですし、個々の施設もそれぞれ個性がありますから」というものだった。

 「手始めというわけではないのですが、小規模多機能型居宅介護というサービスをしている施設を一緒に見学しませんか。自分が勉強のために見学を申し込もうとしていた施設なんですが、実は、松浦さんのお家のすぐ近くにあるんですよ」

 母は、ヘルパーの派遣会社から来ているヘルパーさんに世話され、デイサービスの施設に通い、時折ショートステイの施設に泊まりに行く、という生活をしている。これらの事業主体は全部異なる。それぞれ我々兄弟が見学して、母に合うところをと思って選択した。

施設の見学に行ってみる

 それに対して小規模多機能型居宅介護というのは、地域の少人数向けに、これらのサービスを一括して提供するというサービス形態だ。つまり、「このサービスはあっち、別のサービスはこっち」と別々に選ばなくとも、一括してひとつの事業所からサービスを受けることができる。

 介護される側からすると、「いつもの人」から気兼ねなく多様なサービスを受けることができるという利点がある。

 「ただし、小規模多機能型の場合は、ケアマネージャーも、その施設の者が担当することになります。ですから松浦さんが利用するとなると、ケアマネの僕も交代ということになりますね」

 というわけでTさんと一緒に、小規模多機能型居宅介護の施設を見学に行った。施設は本当に家のすぐ近くで、ちょっと大きな平屋住宅程度の施設だった。我が家のある地域のお年寄り9人の介護を担当しているという。

 地域に密着して、その地域に住む老人の介護を少人数で機動的に行うという施設のコンセプトは、悪くないと思った。が、しかし……

 気になったのは、入り口に張ってあった職員の求人ポスターだった。かなり色あせており、長期間掲示してあるらしい。

 直接質問するわけにもいかないと思い、施設長の方に遠回しに尋ねる。「今、この施設では何人の方が働いておられるのでしょうか」

 「まず、ケアマネ兼任の施設長の自分ですね。それに常勤の看護師がひとり。それからヘルパーが今は4人です」

本連載、ついに単行本化。
タイトルは『母さん、ごめん』です。

 この連載「介護生活敗戦記」が『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本になりました。

 老いていく親を気遣いつつ、日々の生活に取り紛れてしまい、それでもどこかで心配している方は、いわゆる介護のハウツー本を読む気にはなりにくいし、読んでもどこかリアリティがなくて、なかなか頭に入らないと思います。

 ノンフィクションの手法でペーソスを交えて書かれたこの本は、ビジネスパーソンが「いざ介護」となったときにどう体制を構築するかを学ぶための、読みやすさと実用性を併せ持っています。

 そして、まとめて最後まで読むと、この本が連載から大きく改題された理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。単なる介護のハウツーを語った本ではない、という実感があったからこそ、ややセンチな題となりました。

 どうぞお手にとって改めてご覧下さい。夕暮れの鉄橋を渡る電車が目印です。よろしくお願い申し上げます。(担当編集Y)

コメント23件コメント/レビュー

最近この連載を読み始めたので、コメントが遅くなりました。

収入の減少が、とても大きな恐怖をもたらすことは自分も実感しました。
アルツハイマーと診断された実父の介護のために、月給の3割カットと引き換えに週一日の休みをもらえる制度を利用しました。
当時、住宅ローンと教育費でぎりぎりの生活をしていましたが、その状態での月給3割カットは
とても痛かったです。ただし利用できる期間に制限があり、半年も利用してなかったですが、
それでも借金の額が膨らみ続けることに恐怖を覚えました。

父は介護を始めてから1年後に亡くなったのでその苦労は長くは続きませんでした。

今の日本では、介護の責任は子供がその多くを負うことになりますが、そもそもそのことが根源的な問題ですね。
これから介護を必要とする老人の数は爆発的に増えていくでしょうから、国のお金も心配になります。
どうしたら良いのか簡単には解決できそうにありませんね。(2017/10/14 16:55)

「介護生活敗戦記」のバックナンバー

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「介護体制また崩壊、預金残高の減少が止まらない」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

最近この連載を読み始めたので、コメントが遅くなりました。

収入の減少が、とても大きな恐怖をもたらすことは自分も実感しました。
アルツハイマーと診断された実父の介護のために、月給の3割カットと引き換えに週一日の休みをもらえる制度を利用しました。
当時、住宅ローンと教育費でぎりぎりの生活をしていましたが、その状態での月給3割カットは
とても痛かったです。ただし利用できる期間に制限があり、半年も利用してなかったですが、
それでも借金の額が膨らみ続けることに恐怖を覚えました。

父は介護を始めてから1年後に亡くなったのでその苦労は長くは続きませんでした。

今の日本では、介護の責任は子供がその多くを負うことになりますが、そもそもそのことが根源的な問題ですね。
これから介護を必要とする老人の数は爆発的に増えていくでしょうから、国のお金も心配になります。
どうしたら良いのか簡単には解決できそうにありませんね。(2017/10/14 16:55)

アルツハイマー病って、なんなのですかね。エイズと並ぶ悪魔の病ですね。そもそも本当に病気なのでしょうか?私の亡くなった祖母は、嫌がっていた施設への入所を「子供達に迷惑かけたくない」と承諾しました。今もまだ元気な義母は、筆者さんのお母さまに似て、ずいぶんプライドが高く、デイサービスやオムツに抵抗しましたが、介護者である義姉を困らせないために受け入れてるようです。二人とも90歳を過ぎ認知機能は衰えても、周囲にたいする思いやりは残っているみたいなのです。ちなみにアルツハイマーではないとのことです。アルツハイマーだと、そういう感情を失い、ただただわがままになってしまうのでしょうか?私が怖いのは、自分がそうなることです。今は、必要ならオムツもできるし施設で生活することも受け入れるつもりでいますが、アルツハイマーになったら忘れてしまう?そんな病気があるんですね。薬の副作用とか、そういうことではありませんか。(2017/07/07 08:55)

大友克洋さんの作品に、「老人Z」と言う高齢者介護をテーマにした映画があります。もう、かれこれ30年近く前の作品だけど、その当時から高齢者介護は吃緊の課題でした。その後、いろいろ対策は取られたとは思うけど、抜本的な解決方法は見つかっていません。介護をする側に立って制度が作られていない、と言うのはおごった見方なんでしょうか。「職としての介護」はブラック扱いされ、従事者になることも避けられるようになってしまいました。それでも高齢者介護は待ってくれません。介護のために、仕事を辞めざるを得ない場合、その当事者に介護職従事者として給与を支給するくらいの改革も必要なんじゃないでしょうか。それとも、「老人Z」のように、介護ロボットの出現を待つべきなんでしょうか。(2017/07/07 01:29)

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