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ホスピス医の小澤先生「50代男の介護」を診る

ホスピス医・小澤竹俊先生×松浦晋也氏 その1

2017年11月22日(水)

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 今回から全4回で、小澤竹俊先生(めぐみ在宅クリニック院長・エンドオブライフ・ケア協会理事)と松浦晋也さんの対談をお送りします。

 小澤先生は、ホスピスの専門家としての診療と「自宅での看取り」を可能にするための人材育成に取り組んでいます。病を得て、あるいは老化で、人生の先行きに希望が持てなくなった人々をどうケアしていくのか。それは介護の問題と重なるところが多い問いです。そして、我々自身の人生の問題にとっても。

(構成・聞き手:担当編集Y)

何が何でも認めたくなかった

小澤竹俊(おざわ・たけとし)1963年東京生まれ。「世の中で一番、苦しんでいる人のために働きたい と願い」医師を志し、1987年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。 1991年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。 救命救急センター、農村医療に従事した後、94年より横浜甦生病院 内科・ホスピス勤務、1996年にはホスピス病棟長となる。2006年めぐみ在宅クリニックを開院、院長として現在に至る。「自分がホスピスで学んだことを伝えたい」と、2000年より学校を中心に「いのちの授業」を展開。「ホスピスマインドの伝道師」として精力的な活動を続けてきた。2013年より、人生の最終段階に対応できる人材育成プロジェクトを開始し、多死時代にむけた人材育成に取り組み、2015年、有志とともに一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立し、理事に就任。現在に至る。2017年3月にはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に登場し、大きな反響を呼んだ。

小澤竹俊先生(以下小澤):『母さん、ごめん。』読ませていただきました。それで、いろいろ聞いてみたいことが出てきたんですが、まず、介護の初めのころというのはどんな感じだったんですか。

松浦晋也(以下松浦):初期ですか。初めのころは、本当に「何も認めたくない」なんですね。後から考えると。

小澤:認めたくない。

松浦:そういうふうに言語化できていたわけじゃないんですけれども。言い換えると「いつもの日常に戻りたい」なのかもしれません。たとえ、母の介護で何かとんでもないことがあっても、必死で日常の中に回収していこうとする、というんでしょうか。「やっちゃったか、しょうがないね」みたいなことを言って、黙々と後片付けをする。それは、いつもの日常に戻るためなんですよね。日常に固執してしまうというんですか。

小澤:それは、変化した現状を認めたくないから。

松浦:ええ。自分と母の人生が、今までと違うフェーズ、段階に入っているということに対して「それは受け入れ難い」という気持ちがあるわけです。これは後付けの解説ですけれど。

小澤:でも、介護に当たられる方には、当時の松浦さんと同じように「これは一時的な状態で、いずれいつもの日常が戻ってくる」と思っていらっしゃる方が結構多いんじゃないかと思いますよ。特に、普段そばにいなくて離れて暮らしていたり、あるいは仕事で日中いなくて夜中に帰ってくる方とか。

松浦:親の「現状」からやや離れて、働いている方ですね。

小澤:今のお話は非常に大事なテーマです。松浦さんがお持ちだったのは、「元の元気だったお母さんに、なるべく早く戻ればいい」という、変化を認めたくない気持ちなんですね。

松浦:そうですね。

小澤:たぶん当事者目線からいくと、どうしても先送りしたいんですよ。「そんなことはない。ちゃんとできるはずだ。母に限って、たまたま1回できなかっただけで普段はできている」とか。

松浦:その通りです。それは願望でしかないということに徐々に気が付いていくという。

「これは不可逆な変化だ」と覚悟を決めたきっかけ

小澤:では、ご自身で、元に戻すことが可能なんだ、という気持ちが変わったきっかけは何かありましたか。

松浦:(長考して)…ひとえに症状の進行ですね。失敗を繰り返す母にも自分にも怒って、こうじゃないか、ああじゃないか、こうすればいい、ああすればいいと言っちゃうんですけれども、現実問題として認知症と老化が始まっていますから、もう二度と元に戻ることはないんです。症状の悪化に伴って失敗は増え、介護しなくてはならないことも増えていく。それが積み重なっていくと、もうどうしようもなく「撤退戦を戦うしかないんだ」と、現状を認めざるを得なくなってくるという。

小澤:同じように思う同世代の、特に男性にはどう伝えたらいいんですかねえ。認めたくないんだけど認めざるを得ない。例えば、「早めに認めた方が得だよ」とか、何かありますか。

冷静に書かれているから落ち着いて読める
気持ちが伝わるから涙なしに読めない…

 この連載「介護生活敗戦記」が『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本になりました。

 老いていく親を気遣いつつ、日々の生活に取り紛れてしまい、それでもどこかで心配している方は、いわゆる介護のハウツー本を読む気にはなりにくいし、読んでもどこかリアリティがなくて、なかなか頭に入らないと思います。

 ノンフィクションの手法でペーソスを交えて書かれたこの本は、ビジネスパーソンが「いざ介護」となったときにどう体制を構築するかを学ぶための、読みやすさと実用性を併せ持っています。

 そして、まとめて最後まで読むと、この本が連載から大きく改題された理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。単なる介護のハウツーを語った本ではない、という実感があったからこそ、ややセンチな題となりました。

 どうぞお手にとって改めてご覧下さい。夕暮れの鉄橋を渡る電車が目印です。よろしくお願い申し上げます。(担当編集Y)

---------読者の皆様からのコメント(その1)---------

●とてもリアルなレポートで、同居する母の事を考えると、とても考えさせられました。

●対策として何をすべきか、よりはずっと、介護する側される側の心が平穏か、が介護では肝要です。何をするかの本は多くても、ご自身の心がどう傷ついていったかを冷静に記したものはやはり多くないです。

●松浦さんのような勇気を持てるか、実行力を持てるか。全く自信がない。せめて、自分が被介護の立場になったとき,だれも「敗戦」を味わわずに済むように祈るのみだ。

●本人はいくつになっても女性で、私はいくつになってもその子供。認知症になって初めて、家族という内側でなく外側から見る視点が要ることに気づきます。

●日本の未来に確実に迫っている「老老介護の惨劇」を少しでも減らすためにも、このような本音の介護実録が多くの方に周知されることを望みます。

●すごくよくわかる、肉親だからこそ難しい。どうでもいいことで、言い争いになる。肉親の介護は、人生修業そのもの。

(連載中に記事に頂戴したコメントから引用させていただきました。ありがとうございます)

コメント1件コメント/レビュー

お母さんの出身地を聞くだけで、そこまで分かって信頼形成できるものなのですか。  プロはすごい。(2017/11/24 15:53)

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「ホスピス医の小澤先生「50代男の介護」を診る」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

お母さんの出身地を聞くだけで、そこまで分かって信頼形成できるものなのですか。  プロはすごい。(2017/11/24 15:53)

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