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余命宣告を受けて、穏やかに生きるなんて可能?

ホスピス医・小澤竹俊先生×松浦晋也 その3

2017年11月29日(水)

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 小澤竹俊先生(めぐみ在宅クリニック院長・エンドオブライフ・ケア協会理事)と、本連載の執筆者、松浦晋也さんの対談をお送りしています。小澤先生は、ホスピスの専門家としての診療と「自宅での看取り」を可能にするための人材育成に取り組んでいます。「苦難の最中にあっても、人は穏やかに生きることができる」と信じる小澤先生の言葉は、介護の問題を抱える家族や本人にとっても、大きく響くように思います。

(構成・聞き手:担当編集Y)

小澤竹俊(おざわ・たけとし)
1963年東京生まれ。「世の中で一番、苦しんでいる人のために働きたい と願い」医師を志し、1987年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。 1991年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。 救命救急センター、農村医療に従事した後、94年より横浜甦生病院 内科・ホスピス勤務、1996年にはホスピス病棟長となる。2006年めぐみ在宅クリニックを開院、院長として現在に至る。「自分がホスピスで学んだことを伝えたい」と、2000年より学校を中心に「いのちの授業」を展開。「ホスピスマインドの伝道師」として精力的な活動を続けてきた。2013年より、人生の最終段階に対応できる人材育成プロジェクトを開始し、多死時代にむけた人材育成に取り組み、2015年、有志とともに一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立し、理事に就任。現在に至る。2017年3月にはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に登場し、大きな反響を呼んだ。

(前回から読む

松浦:マクロではもう間違いなく、介護と子育ては「社会的な事業」として、個人と社会、たとえば企業もその中に含まれる形に行くと思います。

 一方で、小澤先生が、携われてきた「看取り」を通して「苦しみと穏やかさが共存する」という考え方にたどり着かれた、という点にとても興味があります。最後に、そういうミクロな、個人的な話をしてもいいですか。

小澤:もちろんです。

松浦:小澤先生は、「心が穏やかである」ことというのは、看取られる方はもちろん、周囲の家族も穏やかであることを目標に挙げていますね。

小澤:そうです。

松浦:日経ビジネスオンラインの読者は、自分が介護されるよりは、介護に当たる立場の人が多いと思います。介護をする人を支えるやり方に、看取りの場合との共通点はあるんでしょうか。

「苦しみがゼロになる」ことはあり得ない。ならば

小澤:あります。というか、同じです。

 まず一番は、「人は、自分の苦しみを分かってくれる人がいるとうれしく、穏やかになれる」ということ。患者さんも、家族もそうです。例えば病院で病状の説明はされますけれど、家族の苦しみを誰が聞いてくれるかというと、今の病院ってそういう機能がないんです。一部の看護師さんとかに、そこまでしてくれる方がいるんですけど、普通は、患者さんの話は聞くけど、家族の話は聞かないんですね。

松浦:ああ、なるほど。

小澤:「分かってくれる人がいるとうれしい」。これは家族が穏やかに過ごすための最重要のテーマです。その上で、家族の「希望」と家族の「現実」との開きを理解する。このギャップが「苦しみ」ですから。

松浦:希望と現実のギャップを「苦しみ」と定義する。

小澤:はい。例えば、松浦さんの場合ならば、お母さんに本当はもっといい介護をしてあげたい。だけど実際にはなかなかうまくいかなかったり、本当はもっと仕事をしたいのに、介護のためにできない。本当に希望と現実のギャップが大きいですよね。そして、そのギャップ=苦しみが大きいといらいらするし、自分に優しくなれないし、人にも優しくなれない。それが介護者がはまっていく負のスパイラルだと思うんです。

 では、どうすればいいのでしょう。

小澤:その中での発想は「苦しみがありながら家族が穏やかになれる理由を探す」しかないんです。なぜかといえば、苦しみはゼロにならないからです。

松浦:苦しみをゼロにする方向を目指す、のではなく、苦しみを抱いたまま、穏やかに。

小澤:どんなに頑張ってもやはり介護は必要だし、そのためにも稼がなきゃいけない。両立なんて実際にはそううまくいかない。という苦しみがありながら、では、あらためてそのご家族がどんなことがあれば穏やかでいられるか、を探るしかない。

 例えば松浦さんの場合ならば、松浦さんが穏やかになる理由を探すんでしょうね。まずは松浦さんの印象からすると、お母さんが穏やかだったらたぶん息子さんも穏やかだと。

本日、明日と、松浦さんがテレビ、ラジオに登場します
放送予定はこちらです。ぜひ、ご視聴ください!

NHK Eテレ「ハートネットTV
11/29(水)20:00-20:29
「リハビリ・介護を生きる
介護奮戦(1)母さん、ごめん
11/30(木)20:00-20:29
「リハビリ・介護を生きる
介護奮戦(2)何しろ他人事ではないのだ

TBSラジオ 「荻上チキ・Session-22
11/30(木) 22:00-23:55

 メディアからも大きな反響が返ってきていますが、もっとも嬉しいのは読者の方々からのコメントです。こちらではその一部をご紹介させていただきます。

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●壮絶です!淡々とした感情に訴えない文章に凄味を感じます。

●両親には「何かしてやりたい」と思うのがヒトの真心だろう。しかし,ギリギリ追い詰められた状態で,その良心,真心が削られていく。この記事は本当に身につまされる。そして頭が下がる。

●明日は我が身と毎週身が引き締まる思いで読んでいます。包み隠さず教えていただけることで、自分と親の今後を考えるためのきっかけになっています。本当にありがとうございます。

●「ぜひ読むべき」のさらに上のランク、「周りの人を捕まえて片っ端から読ませるべき」に投票したいコラムでした。

●全然、敗戦じゃないです。たとえ敗戦であっても、これを読まれた方々が勝戦すれば、勝戦です。

(連載中に記事に頂戴したコメントから引用させていただきました。ありがとうございます)

コメント4件コメント/レビュー

 だから、可能な限り仕事は続けたほうがいい。たとえ1ヶ月数時間にせよ働くことで、世間の今と接点を持ち続ければ老いてるひまはない。
 といって昔話ではなく、これから役に立つ提言をしていくことが重要。マスゴミのように目立とうとする必要はない、 (2017/11/29 12:46)

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「余命宣告を受けて、穏やかに生きるなんて可能?」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 だから、可能な限り仕事は続けたほうがいい。たとえ1ヶ月数時間にせよ働くことで、世間の今と接点を持ち続ければ老いてるひまはない。
 といって昔話ではなく、これから役に立つ提言をしていくことが重要。マスゴミのように目立とうとする必要はない、 (2017/11/29 12:46)

私も夫婦で4人の親を看取りましたが、その大変な苦労が報われたと思ったのは感謝の言葉でした。「私のためにすまないねえ。消えゆく親よりも自分の人生を優先しなさいね。」何事も家族優先で自己犠牲の母からこの言葉を聞いたときには、最期まで子を思う親の愛情に涙が出てきました。
でも亭主関白の父親や認知症の親からは聞かれませんでしたので、普通なら心のモヤモヤは晴れないままで終わるのでしょう。
反対に死を迎えて苦しむかというと、病気であれ認知症であれ老衰であれ、その歳になると脳の機能が低下し自分の最期を全く意識しなくなる、そういった意味では負担はなかったような気がします。(2017/11/29 09:31)

いまの社会に足りなくなっているものが、色々と見えてきますね。
宗教の不在、ケアを医大では教わらない、など。
これらを社会として対象化して、生きやすい世の中へとつなぎたい。(2017/11/29 07:38)

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