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密林の中の「王国」へ 黄金に憑かれた男たち

ガリンペイロを追ってアマゾン奥地へ(1)

2016年3月26日(土)

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豊穣にして無限。南米・アマゾン川をずっとずっと遡ったその先に「規格外」の人間たちが生きていた……。 4月にスタートするNHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」シリーズ。その第2集「ガリンペイロ 密林に黄金を追う男たち(仮)」(5月放送予定)の番組ディレクターが、放送に先駆けて、アマゾン奥地の「今」を紹介する。 いくつもの支流を分け入った密林の奥、荒くれ者たちが作り上げた金鉱山に潜入した筆者は、映画『地獄の黙示録』さながらの、欲望と暴力と狂瀾に満ちた「王国」を見た。 トップアスリートたちが金メダルを競うリオ五輪開催の2016年、同じ南米の奥地には、「金」を求めるもう一つのリアルがある。

滝を越えて

 滝を駆け上がるたびに、ボートは激しく揺れ、時に飛んだ。余りに激しい水飛沫で、前を向くことも目を開けることもできない。私たちは、新たな滝が見えてくる度に身体を強張らせ、必死に耐え忍ぶしかなかった。

 だが――。さらに前方に待ち構えていたのは、高さ・水量・水音・流速の全てにおいて、これまでの滝とはまるで違っていた。ナイヤガラやイグアスにも比するような、巨大かつ暴力的な滝だったのだ。

 ここを越えようとすれば、重い船を陸地まで引き揚げて迂回するか、激流に流されることを覚悟で川に入り船を押すしかない……。いや、それは余りに危険だから、もはや引き返すしかないのではないか……。誰もが、そう諦めかけていた。

 ただひとり、船の最後尾に仁王立ちする船頭だけは皆と違っていた。先陣を誰にも譲ったことのない猛将のように肩をいからせると、70馬力のエンジンを全開にしたのである。爆音が鳴り響き、スピードがみるみる上がる。滝がどんどん迫ってくる。たまらず、大丈夫なのかと船頭に尋ねた。すると、船頭はにやっと笑い、酒焼けした声でこう言った。

 「この滝を越えることのできる船頭は広いアマゾンにも2人しかいない。俺はそのひとりだ。この先の金鉱山まで俺が何人運んできたと思う?」

行く手には23の滝が待ち構えていた (c)Eduard MAKINO

 私たちは23の滝を越え、遥か彼方にあるという金鉱山を目指していた。「ガリンペイロ(金を掘る者ども)」と呼ばれる男たちを取材するためだ。ガリンペイロは法に縛られず、時に人を殺すことも躊躇わないという。そんな彼らが密林の奥底で徒党を組み、あたかも独立国家のような「王国」を形成しているというのだ。

 この滝を越えなければ、彼らの「王国」に辿り着くことはできない。覚悟を決め、身体に力を入れた。その瞬間、機関砲のような猛烈な水飛沫が四方八方から飛んできた。またしても、私たちは身を屈めて耐えるしかなかった。

アマゾン広しといえでも、その激流を操舵できる者は僅かしかいない (c)Eduard MAKINO

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「密林の中の「王国」へ 黄金に憑かれた男たち」の著者

国分 拓

国分 拓(こくぶん・ひろむ)

NHKディレクター

2009年、奥アマゾンのヤノマミ族を追った「NHKスペシャル ヤノマミ」を制作。同番組を書籍化した『ヤノマミ』で第10回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、第42回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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