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経営トップが認知症となった“悲劇”

2人の著名医師が語る現実と事態打開の処方せん

2017年3月13日(月)

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「認知症を患う経営トップは狙われやすい」

 ある学校法人で、そこの学長を決めるのに、学校法人を乗っ取る計画のある人物を新学長に据えようとする動きが秘密裏にあった。それを気付いた人が阻止したからよかったけれど、認知症を発症していた理事長には、事態を判断する能力がなかった。「そういう例はいくらでもある」と岩田氏。「つまり認知症を患う経営トップは狙われやすい。狙う方は、あの人は認知機能がちょっと落ちてきているという情報をある程度つかんでいて、そこにつけ込んでくる」と話す。

和光病院院長の今井幸充医師
聖マリアンナ医科大学卒業。日本社会事業大学大学院教授などを経て現職。日本認知症ケア学会理事長なども務める。40年近くアルツハイマー病に関する診断・治療を行うだけでなく、認知症介護家族者の介護負担に関する研究も行う。

 経営トップが認知症のためにもたらされる悲劇。それを回避するには、どうすればいいのか。認知症専門の精神科病院「和光病院」(埼玉県和光市)の今井幸充院長は「トップが変なことを言ったりやったりしたときに、周りの人がきちんとその異変に気づき、専門家による客観的な判断や指示を仰ぎながら、本人に病を自覚してもらうことが極めて重要」と話す。

 認知症にはいろいろなパターンがあり、本人が記憶力や判断力が低下していることに気がつく場合もあるが、本人は異常をまったく自覚していないことも少なくない。高齢になるほど、後者の傾向がより強くなるとも言われており、「経営者自身が異常に気づいていないのだから、周囲の人が言ってあげるしかない」と今井院長は語る。

 とはいえ、本人がその団体で実力者の経営トップともなれば、周囲もちょっと変だなと思ってもそれをなかなか言い出しにくいもの。また、うっかり注意すると、閑職に追いやられるなど、自分が不当な扱いを受けてしまう恐れもある。

 だが、今井院長は「周囲が何もできなければ、会社はなくなってしまう。そう肝に銘じて、周囲は行動に移すしかない」と言う。

認知機能の低下に伴う経営リスクを具体的に挙げる

 経営者が認知症になれば、もはや第一線での現役続行はかなわない。混乱が生じないよう、退いてもらう必要がある。その引導の渡し方も難しいところだが、今井院長は、例えばオーナー経営者に対しては「『この会社をつくり、成長させたのはあなたなんです。それがもしつぶれるようなことになれば、我々は困るし、あなたの名誉もガタ落ちになります』などと正直に伝えてほしい」とアドバイスする。

 「認知症の人は生活する能力は衰えるけれども、初期であれば相手の感情とかはよくわかる。ましてや、ビジネスで成功してきた人は、損得感情に長けている。だからこそ、認知機能の低下に伴う経営リスクを具体的に挙げ、情に訴えれば、納得してくれる場合が多い」と今井院長は言う。

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「あなたを襲う認知症 経営が止まる 社会が揺れる」のバックナンバー

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「経営トップが認知症となった“悲劇”」の著者

庄子 育子

庄子 育子(しょうじ・やすこ)

日経ビジネス編集委員/医療局編集委員

日経メディカル、日経DI、日経ヘルスケア編集を経て、2015年4月から現職。診療報酬改定をはじめとする医療行政や全国各地の医療機関の経営を中心に取材・執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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