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ドイツで起業を目指すアフガン難民の物語

「電脳移民」が起こす社会イノベーション

2016年4月5日(火)

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独ベルリンで2月から始まったプログラミング学校「ReDI(レディ)スクール」。シリアやアフガニスタンからの難民がグループに分かれてプログラミング言語などを学ぶ(写真:永川 智子、以下同)
 

 3月6日、日曜日。ベルリンのポツダム広場に近い、大学のキャンパスを訪ねた。指定された午前10時少し前、校舎3階の教室に足を踏み入れると、複数の若い男女がノートパソコンを囲んで熱心に話し込んでいる。記者の姿に気づくと、「Hi!」と目配せをしながら挨拶をしてきた。

 外見や立ち居振る舞いからは、とてもそう見えないが、全員がこの半年以内にドイツに渡ってきた難民だ。シリア、アフガニスタン、エリトリアなど、出身国は多岐に渡る。

 定刻の午前10時になると、指導役の講師がレクチャーを始めた。「今日は、簡単なプログラムを作ってみよう」。受講生たちは、静かにキーボードを叩きながら、講師の話に熱心に耳を傾けている。一通りの内容を話し終えると、講師は「では実際にコードを書いてみて」と指示を出した。その後1時間以上、教室は静まり返り、カタカタというキーボードの音だけが教室に響いていた。

 ここは、今年2月に始まった、難民向けプログラミング学校「ReDI(レディ)スクール」。地元ベルリンの女性起業家、アンネ・リヒャルト氏らが立ち上げた、難民支援プログラムだ。

 昨年、中東などから110万人超の難民が流れ込んだドイツ。3月の州議会選挙では難民排斥を訴える政党が躍進するなど、難民問題を巡って世論と政治は今も揺れている。地元の報道でも、「反対」の動きが取り上げられることが多い。しかし、産業界や草の根レベルでは、難民を受け入れようという試みがじわりと広がっている。ReDIスクールも、そうした活動の1つだ。

アフガニスタンからの難民、アマドゥラ・セディクィ氏

 「難民」と聞くと、貧しい弱者の姿を想像しがちだが、実際には知識水準が高く、英語を流暢に話す人も少なくない。受講生の1人、アマドゥラ・セディクィ氏(22歳)もその1人。昨年10月、内戦が激化するアフガニスタンの戦禍を逃れてきた。

 子供の頃からパソコンに興味を持っていたというセディクィ氏は、アフガンでは、コンピュータのエンジニアとして働いていた。企業向けのシステム構築などの仕事を受託し、多くの外国企業ともビジネスをしていた。

 病気の両親を残し、首都カブールを後にしたのは昨年8月。内戦が悪化し、日々の生活で身の危険を感じるようになっていた。最低限の身の回りの荷物とスマートフォンだけを持ち、まずイランへと向かった。自分の経歴やスキルならば、何か仕事にありつけるかもしれないという淡い期待は、現地に着くと吹き飛んだ。待っていたのは難民に対する厳しい視線。「彼らから受けた扱いはひどかった」と言うセディクィ氏は、逃げるようにトルコに渡った。さらに北の欧州を目指した。

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「ドイツで起業を目指すアフガン難民の物語」の著者

蛯谷敏

蛯谷敏(えびたに・さとし)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション編集を経て、2006年から日経ビジネス記者。2012年9月から2014年3月まで日経ビジネスDigital編集長。2014年4月よりロンドン支局長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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