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三菱重工の巨額特損、知られざるもう1つの理由

綻んだ多国籍の現場が示すニッポンの危機

2016年4月4日(月)

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客船を建造している三菱重工の長崎造船所(写真は3月上旬に撮影した一番船)

 ふかしていたタバコを灰皿に押し付けると、浅黒い顔の中年男性は深いため息をついた。「同じ現場とは思えないよ。心底、がっかりしている」。

 船造りを生業としてきたこの男性は数年前、意気揚々と長崎の土を踏んだ。10年ぶりに三菱重工業の客船建造に携われることを、楽しみにしていたからだ。かつて「ダイヤモンド・プリンセス」を造った時、現場を丹念に回って協力企業を統率する三菱重工の職人たちに魅せられた。「三菱の客船をやった」と言えばどの造船会社も一目置いてくれたし、自分自身、誇らしかった。

 三菱重工が2011年に受注した大型客船「アイーダ・プリマ」の建造現場に、当時の面影はなかった。仕事は工程表どおりに進まず、大量の作業者で現場は混乱、しまいには3度の火災が起きた。3月14日に何とか客先への引渡しを終えたものの、当初の予定からは1年遅れだ。客船事業の特別損失は累計で1800億円を超え、事業を存続すべきか否かの議論が始まっている。

 客船事業がなぜ巨額の損失を出してしまったのか。この問いに対して、三菱重工の主張は一貫している。船内のWi-Fiなど10年前にはなかった要求仕様に手間取った、客室数が多く複雑な構造だった、顧客から設計変更の要望が相次いだ…。「知見不足による設計の遅れが、後々まで響いてしまった」(鯨井洋一交通・輸送ドメイン長)という趣旨の説明が、特損を計上するたびに決算会見で繰り返された。

 ただ、長崎の街を歩くと別の理由も見えてくる。

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「三菱重工の巨額特損、知られざるもう1つの理由」の著者

佐藤 浩実

佐藤 浩実(さとう・ひろみ)

日経ビジネス記者

日本経済新聞社で電機、機械、自動車を6年間取材。13年4月に日経ビジネスへ。引き続き製造業を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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