ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由

米国のミサイル防衛網配備に懸念

 「ロシアは北朝鮮を核保有国とは決して認めない」。プーチン大統領は北朝鮮の核問題の対話による解決を主張しつつも、圧力を強めて核放棄を促そうとする国際社会と協調する姿勢は崩していない。ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由は別にある。

ロシアが昨年12月にウラジオストクでも運用を開始した地対空ミサイルシステム「S-400」(写真:AP/アフロ)

 ロシアメディアは昨年12月下旬、ロシア軍が最新鋭の地対空ミサイルシステム「S-400」の運用を極東のウラジオストクで開始したと報じた。戦闘機や巡航ミサイル、弾道ミサイルを撃墜できる能力を飛躍的に高めるのが狙いだ。

 ロシア軍がS-400を極東に展開すると表明したのは2009年。軍幹部は当時、その理由として「北朝鮮によるロケット発射が失敗し、その破片がロシア領に落下するのを防ぐためだ」と説明していた。

 その北朝鮮は当時の金正日(キム・ジョンイル)体制から3男の息子、金正恩(キム・ジョンウン)体制に変わったが、ミサイルの発射回数は増える一方だ。昨年は1年間で合計15回(総数は20発)も弾道ミサイルの発射を強行し、昨年9月には大規模な地下核実験も実施した。

 しかも極東のウラジオストクから北朝鮮との国境までは、およそ100キロメートルしか離れていない。ロシア軍がS-400の運用を開始したのは当然、北朝鮮の核やミサイルの挑発におびえる地域住民の不安に対処したためと考えがちだ。しかし、実態は必ずしもそうではないようだ。

 ウラジオストクの海洋国立大学で北朝鮮問題を専門にするアナスタシア・バランニコワ研究員によると、「地元のロシア市民たちは北朝鮮の弾道ミサイル発射にほとんど反応しない。核実験があった時も社会に緊張感はなく極めて平静だった。市民たちが北朝鮮に抗議することもない」と話す。北朝鮮が敵視するのは所詮、米国とその同盟国であり、ロシアの脅威にはならないという意識が根強くあるのかもしれない。

 北朝鮮に近いウラジオストクですらそういう状況だけに、ロシア全体でみると、北朝鮮の核・ミサイル問題に対する関心はさらに薄くなる。

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著者プロフィール

池田 元博

池田 元博

日本経済新聞社編集委員

1982年、日本経済新聞社に入社。90~93年にモスクワ特派員、97~2002年にモスクワ支局長。その後、ソウル支局長(05~08年)も歴任。08年から論説委員会に在籍。編集委員も兼務。

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いただいたコメントコメント2件

馬鹿馬鹿しい。
露がイージスアショアに文句を付けてきたら「ならば貴国の力で北の核を排除して下さい」
と言えば良いだけ。何も難しくはないでしょう?(2018/01/12 09:43)

平和条約の締結なんか、する気もないくせに思わせぶりなことを言うもんだ。
忘れてはならないのは、米国がTHAADを配備したのは、真の思惑は別として北朝鮮が脅威化し始めたのがことの始まりであり、何度も繰り返し止めろと忠告しても止めないし、中ロは国連でも止めようとする決議案には必ず反対し、むしろ北朝鮮を使って極東の支配を拡大しようとしている。
だから平和条約なんか結ぶわけがないし、楔を打ち込もうとする米国の動きを牽制しようとするのだ。(2018/01/12 08:31)

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