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逆開発~アスファルトの駅前を森に戻す

ローカル線、復活の物語

2017年6月1日(木)

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開発されてきた駅前を森林に戻す──。千葉県のローカル線、小湊鐵道は、古い列車や駅舎を使い続けて、静かに人気を集めてきた。時代の流れに抗うかのような企業は、創業100年目を迎え、ついに「逆開発」に乗りだした。(下の動画をご覧ください)

 今年3月、千葉県市原市の山間部にある観光の玄関口、養老渓谷駅。駅前のロータリーにショベルカーが入ると、工事関係者や鉄道職員が見つめる中、ついに歴史的な工事が始まった。

駅前のアスファルトを剥がして、森に戻す工事が始まった
鉄道マンが木を植えていく

 「逆開発」

 駅前のアスファルトを、ショベルカーがうなりを上げながら剥がしていく。そして、土が姿を現すと、小湊鐵道の社員が土地をならし、木や花を植える。使い古した鉄道の枕木が運び込まれ、土に埋め込んで散策の道が作られていった。さらに、枕木を積み上げた「ウッドベンチ」も設置される。

 「靴が汚れるじゃないか」「せっかく舗装した道を、なぜカネをかけて壊すんだ」

 当初は批判の声も漏れてきた。駅舎の前にあったバス停は、離れた街道沿いに移設することになった。利便性を犠牲にする逆開発は、サービス低下に結びつき、人が遠ざかるのではないか、と。

 だが、小湊鐵道社長の石川晋平は、利便性ばかりを追及した開発が、土地の持っていた魅力を覆い隠してしまったと見ている。

渓谷を駅前に進出させる

 戦後、駅周辺の渓谷や滝、温泉といった観光資源が脚光を浴び、開発が進められてきた。1928年に「朝生原駅」として開業していたが、戦後の54年に「養老渓谷」と駅名を変えると、開発は加速度を増していった。高度成長にも乗って、温泉旅館や飲食店、土産物屋が立ち並び、駅前は舗装されてバスやタクシーが乗り付けるようになる。

 だが、経済成長の終わりとともに、観光地としての勢いを失っていった。1日平均の乗客数は減少の一途をたどり、最盛期の半分近くまで落ち込んだ。商店街も櫛の歯が抜けるように閉店していった。そして、バブル崩壊で老舗旅館が相次いで破綻すると、駅前から人影がめっきり減って、アスファルトとコンクリートの殺伐とした風景が残った。

 しかし、駅周辺のロータリーや駐車場を抜けていくと、わずか5分も歩けば、豊かな自然が姿を現す。駐車場を抜けて駅舎の反対側に向かうと、渓谷へと下る遊歩道があり、養老川に架かる橋へとつながっていく。絶景スポットだが、観光客は見当たらない。駅と自然との間を、アスファルトが遮断している形になっている。

 「それなら、養老渓谷が駅前に進出した方がいい」(石川)

 だから、アスファルトを撤去した後には、周囲の自然環境に存在する木や花を植えていく。違う種類の植物を使えば、人工庭園のような風景になってしまうからだ。地域の自然を、そのまま駅舎までつなげてくる。

 そのため、会社が所有する駅前の土地約2000平方メートルを、アスファルトから土に戻していく。4〜5年で植林の作業を終え、10年後には木々が成長して、森林が駅を覆うことになる。

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「逆開発~アスファルトの駅前を森に戻す」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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