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会社を守るため、創業家は欲を捨てるべし

インテリア大手サンゲツに学ぶ権力委譲のコツ

2016年6月21日(火)

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 日経ビジネス6月20日号の特集「ストップ 暴走社長」では、経営の主導権を巡る創業家と社長との対立にも注目した。その一方で、インテリア大手のサンゲツは2年前に三菱商事出身の安田正介社長に経営権を委譲。創業家で前社長の日比祐市相談役は経営に一切関与しない姿勢を強調している。脱創業家経営がスムーズに進んだ背景には何があったのか。

*当連載は、日経ビジネス2016年6月20日号特集「ストップ 暴走社長」との連動企画です。あわせてご覧ください。

今年85歳を迎える日比相談役。非創業家への経営権の委譲は「店を守るための最良の判断」と語る(写真:早川 俊昭、以下同)

 「人間にはやっぱり欲があるんですね。その欲を捨てなければ良い事にはならないですよ」

 サンゲツの日比祐市相談役。セブン&アイ・ホールディングスやLIXILグループなど、創業家がトップ退任を迫ったとされる一連の騒動に対し達観した態度を見せる。今年85歳を迎えるその目には確かな力がこもっている。そしてこう続けた。

 「自分たちが苦労して作ってきた会社を、人手に渡したくないという気持ちが強いと思うんですよ。それは、私は使命感がないと思うんですよ。人に(経営を)譲るとなると寂しいし心配事も沸いている。しかし、こだわっていたら何事も進まない。店が続く事が最も大切ですので」

後継計画なきカリスマ経営

 サンゲツは2012年に三菱商事中部支社長を務めた安田氏を、社外取締役として招聘。その1年10カ月後に社長職を譲った。1849年に襖や屏風を手がける表具店「山月堂」として創業して以来、一族による経営を続けてきた老舗。それでも欲は残らないのか。

 「兄(日比賢昭氏)が長らく社長を務め、会社を大きくしてきました。兄は自分が全てできるものですから、ワンマンだった訳です。私は、早く後継者に譲ったらどうかとアドバイスはしていましたが、自分がいるうちは大丈夫だと、譲る気はなかったみたいです。子どもに経営を譲るという話にもならなかった」

 賢昭氏は約50年近くトップを務めサンゲツを襖の卸問屋から売上高1300億円の総合インテリア企業にまで成長させた。自信に満ちたワンマン経営者が、後継者計画を曖昧なままにしておくのは、セブン&アイ・ホールディングスやスズキなどにも通じるものがあった。しかし賢昭氏は2012年に死去。祐市氏が急遽社長職を引き継ぐこととなる。

 「ワンマン経営は会社が成長する場面では良いことだったかも分かりませんが、社員が育っていかないという欠点があります。社員にも不満があったようですし。私の社長はあくまでワンポイントと考えていました。嘉永(江戸時代後期)から続く店を守る方が大切です」

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「会社を守るため、創業家は欲を捨てるべし」の著者

武田 健太郎

武田 健太郎(たけだ・けんたろう)

日経ビジネス記者

2008年東京大学教育学部卒業、日本経済新聞社に入社。「NIKKEIプラス1」を担当後、証券部で金融マーケットや企業財務を取材。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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