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3Dプリンターで特許を逃した僕の「失策と教訓」

発明者・小玉秀男氏が次世代に贈る言葉

2016年7月6日(水)

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日本が先行して発明していながら、重要性に気付かないまま放置し、他国に成長市場を握られた技術は少なくない。その中でも、特に将来性が期待されるのが3Dプリンターだ。発明者・小玉秀男氏は、自らの「失策」を次世代の研究者への「教訓」にしてほしいと話す。

名古屋市の研究員だった時代に、3Dプリンターの原型となる「光造形法」を発明されたそうですね。

小玉:1980年でしたね。展示会でたまたま見かけた新聞用の版下作製装置から思いつきました。ガラス板の上に感光性の樹脂を流し込み、その上にフィルムを被せて紫外線を当てると、フィルムの白抜きの部分だけが固まって巨大なゴム印みたいになります。当時はそれを輪転機にかけて新聞を刷っていたんです。この工程を何層も重ねていけばどんな物でも作れる、と考えたのが最初でした。

3Dプリンターの発明者、小玉秀男氏
1977年名古屋大学大学院修了、名古屋市工業研究所へ。1984年に弁理士登録(写真:北山 宏一)

 装置は全部、自分で作りました。研究所にいたのでアクリル板とか、拾ってきた物やその辺にある物を寄せ集めて。予算はほとんど使いませんでしたね。装置を作って実験をするのに1~2日しかかからなかったので、「取りあえずやってみて、もしうまくいったら上司に報告しにいくか」という程度の気持ちでした。

 それで、論文を書きました。工作機械メーカーの沢山ある名古屋市にいましたので、技術者の勉強会で発表して。でも、当時作れたのは丸太小屋みたいなレベルの家の模型でした。サブミクロンレベルの加工精度を競っている人たちに向かって、「こんなものが作れます」と言っても、当然ながらまったく相手にされませんでした(笑)。

 技術者に評価されず、研究所の中でも、「何を遊んでいるんだ」というような雰囲気になって。自分は正しくて世間が悪いんだなんて考えられなかったので、「自分のセンスがおかしいのかな?」と追い込まれていきました。

忘れていた特許と偶然の再開

そして、失意のうちに弁理士に転職された。

小玉:そうですね。「そっちの方が楽でいいや。しょうがない」って思うようにしました。研究者への未練を断ち切るため、書類も作成物もみんな廃棄処分して研究所を出てきました。当時の装置などは写真以外、何も残っていません。ちょっと断ち切り過ぎたと後悔しています(笑)。

 特許は出願していました。ただ、その次に必要な審査請求はしませんでした。弁理士になってから自分の特許に関する関心を失い、そのうち忘れてしまいましたから。出願すると公開されるので、第三者が権利化することはできなくなります。公のものになるわけですね。まあ、それでいいかな、と考えていました。

 そんなある日、日本の商社が事務所に来ました。3Dプリンターの特許を出願している会社と契約を検討しているので、従来技術の調査をやってくれと、あろうことか僕のところへ依頼があったわけです(笑)。すぐに自分の出願状況を調べましたが、何か月か前に審査請求の期限が来ていました。なんでもうちょっと早く来てくれなかったのか(笑)。

3Dプリンター市場をみると、米国の会社が席巻していますね。

小玉:米3Dシステムズが最初の実用機を作りました。実用機だと、僕の作った2ミリレベルでは話にならない。彼らは0.1ミリぐらいの精度の装置でした。光を当てて固めて物を作る、というのは従来技術としてあるから特許は取れないけど、その精度にするための苦労や工夫が特許になる。そうやって、実用化の勘どころとなる技術を3D社が特許として取得していきました。

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「3Dプリンターで特許を逃した僕の「失策と教訓」」の著者

杉原 淳一

杉原 淳一(すぎはら・じゅんいち)

日経ビジネス記者

2005年、日本経済新聞社に入社し、大阪経済部に配属。2009年に東京に異動し、経済部で銀行や農林水産省、財務省、金融庁などを担当。2015年4月から日経ビジネスで金融機関を中心に取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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