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「9条は全面削除しても何の支障もない」

戦争を放棄したのは日本だけではない

2017年9月13日(水)

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 戦争放棄は、日本国憲法に固有のもののようにいわれますが、そうではありません。日本に限らず不戦条約に署名した国、国連に加盟したすべての国が守るべき国際標準です。日本の憲法学の重鎮だった芦部信喜は「比類のない徹底して戦争否定の態度を打ち出している」としていますが、過度にロマン主義的な言い方です。9条の価値はその特殊性ではなく、軍国主義国家だった日本を国際標準的な国家にするところにこそあったと考えるべきです。

マッカーサーが「交戦権」を入れさせた意図

 第2項にある「陸海空軍その他の戦力」は、1項で放棄した「戦争」を実行するための戦力を指します。日本語の条文を読むと、1項にある「戦争」と2項にある「戦力」のつながりが不明確ですが、英文で読むとはっきりしています。GHQが出した憲法草案は、1項の「戦争」を「war」、2項の「戦力」を「war potential」としています。つまり2項でいう戦力は、1項で放棄した戦争を遂行するための戦力を指すのです。

 起草者は、憲法の条項を通じて、国連憲章の規定を日本に守らせる枠組みを提供しようとしたのです。

 ここで注意を要するのは、「自衛権の行使」は国際法で禁止されている「戦争(war)」ではないことです。国連憲章51条は加盟国が武力を行使できる例外を2つ設けています。1つは「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置」として認めたもの。これを集団安全保障と呼びます。もう1つは、集団安全保障の措置が講じられるまでの間に取れる「個別的又は集団的自衛」に基づく武力行使です。

 したがって、集団安全保障と自衛権に基づく武力行使は1項にある「戦争」に該当しません。9条2項は「個別的又は集団的自衛」を行使するための戦力は否定していないことになります。

 2項にある「交戦権」は現代の国際法には存在しない概念です。なぜ、こんな存在しない概念に触れているのか。それは起草者が米国人だからです。

 実は戦前には「交戦権」の概念が存在しました。米国は外交戦略としてこれをずっと否認してきました。例えば英国とフランスがナポレオン戦争で争っていた当時、周辺を航行する中立国・米国の商船が英国に撃沈されるケースが頻発しました。戦争中であることを理由に、疑わしきを攻撃しても許される“権利”が交戦権です。第一次世界大戦に米国が参戦したのは、ドイツが米国の船舶を攻撃したからでした。

 GHQ総司令官であるダグラス・マッカーサーはこのことをよく知っていたので、憲法草案にこの文言を入れさせたのでしょう。「国の交戦権は、これを認めない」とは、国家の基本権のような現代国際法では遺物となったものを持ち出して周辺国に脅威を与えることはしない、という意味を込めたものです。

これまでのお話をまとめると、こういうことですね。

1)9条1項は戦争放棄。
ただし、国連加盟国のすべてが戦争を放棄している。日本国憲法に特別のことではない。
ここでいう戦争に、集団安全保障と自衛権の行使に基づく武力行使は含まれない。
2)9条2項は、集団安全保障と自衛権の行使のための戦力を否認しない。
3)交戦権の放棄は、戦争放棄を改めて宣言したもの。

篠田:おっしゃる通りです。

 憲法起草の目的は、日本が二度と侵略国になることなく、国際法を遵守し、国際協調主義に基づいて行動する国にすることです。この意図と国際法に鑑みて日本国憲法を解釈すれば、上記の解釈になります。

 この解釈に基づけば、自衛権を行使する自衛隊が違憲になることはありません。PKO(国連平和維持活動)に参加するために不毛な議論をする必要ありません。何よりも9条の意味は国際法の遵守にある、と理解すれば、国際法に沿った体系的な解釈が可能になり、安定した解釈運用になります。

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「「9条は全面削除しても何の支障もない」」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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