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英国がEUに戻る日

2代目「鉄の女」、メイ首相に立ちはだかる難題

2016年7月15日(金)

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あの「鉄の女」をほうふつさせるメイ首相

 英国の欧州連合(EU)からの離脱は世界に衝撃を与えた。責任を取って辞任したキャメロン首相の後任に、サッチャー首相に次ぐ2人目の女性宰相としてテリーザ・メイ首相が就いた。2代目「鉄の女」には、秩序ある離脱をどう実現するか期待が寄せられるが、あまりに難題が多い。EUとの離脱交渉をうまく進められるか、スコットランドなど国内の独立機運を封じられるか。そして、外資依存の英国経済の失速を防げるかである。この複雑な多元方程式を解き切れるかどうか、なお不透明である。

 「EU離脱により世界で新しく前向きな役割を果たす」。こう言い切るメイ首相は、サッチャー首相にどこか似ているところがある。その髪形からクイーンズ・イングリッシュまで、あの「鉄の女」をほうふつさせる。

髪形、クイーンズ・イングリッシュ…「鉄の女」サッチャー元首相をほうふつさせる、テリーザ・メイ英首相 (写真:ロイター/アフロ)

仏独主導のEC、EU運営に対峙してきたサッチャー

 しかし元祖「鉄の女」の迫力は、こんなものではなかった。1980年代半ば、日本経済新聞のブリュッセル特派員時代、何度もサッチャー首相の記者会見に臨んだことがある。EC(欧州共同体)首脳会議は農業補助金などめぐっていつものように難航した。会議は深夜に及んでようやく終わった。外相を伴って現れたサッチャーは席に着くやいきなり、外相を面罵した。その怒りに記者団は一瞬、氷ついた。EC内での交渉の不手際をさらされた外相は翌日辞任する。

 サッチャー旋風にはジスカーデスタン・シュミット、ミッテラン・コールという仏独連合もたじたじだった。それだけサッチャーは国益をかけて仏独主導のEC、EU運営に対峙してきた。

英国はEC加盟まで12年間も待たされた

 ブリュッセルのユーロクラート(EU官僚)嫌いは有名だし、ユーロの創設や政治統合の動きには徹底して反対した。しかし、その「鉄の女」でさえ、EUの離脱など考えもしなかった。国民投票で離脱を決めた英国政治の大失態を見たら、元祖「鉄の女」は憤っていたはずだ。

 なにしろ、英国はEC加盟まで12年間も待たされた。加盟はいつしか悲願になっていた。盟主であるドゴール仏大統領に2度にわたって加盟を拒否される。加盟できたのはドゴールが亡くなったあとの1973年である。初めから原加盟国(仏、西独、伊、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)とは差がつけられていた。

 その後もユーロには加わらず、移動の自由を認めるシェンゲン協定にも参加しなかったのだから、EUメンバーとして胸を張れないところがあった。

 第2次大戦後、欧州にはもう2度と惨禍を繰り返したくないという思いから、欧州統合論が高まった。英国のチャーチル首相も「欧州合衆国」構想を唱えたが、それは欧州大陸中心で英国抜きの構想だった。

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「英国がEUに戻る日」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト
明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー

1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授などを歴任。2012年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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