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遠のく「核兵器なき世界」、被爆国の重い責任

トランプが壊すオバマの理想

2017年8月8日(火)

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トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領は、20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されたドイツのハンブルクで7月7日に初会談した。米露の核軍縮問題や、シリアやウクライナなど幅広い分野で意見交換したとみられ、会談は2時間15分と異例の長さになった。(写真:AP/アフロ)

 オバマ前米大統領がめざした「核兵器なき世界」は、その理想からますます遠ざかろうとしている。トランプ米大統領は「核兵器なき世界」の目標を見直し、核戦力の増強を打ち出した。これに対して、プーチン・ロシア大統領も核戦力の近代化と増強を表明、核軍縮どころか核軍拡競争に逆戻りする恐れさえある。最も危険なのは、北朝鮮が核・ミサイル開発に傾斜し、北東アジアの緊張が高まっていることだ。こうしたなかで、唯一の核被爆国である日本の役割は決定的に重要である。その日本が核兵器禁止条約に参加しなかったのは問題だ。核廃絶を外交の基本に据え直し、米ロに核軍縮を呼び掛けるなど、積極的外交を展開することが歴史的使命である。

トランプの核戦略の波紋

 トランプ大統領はオバマ大統領が敷いた平和路線をすべてくつがえそうとしている。「核兵器なき世界」をめぐっては、「どの国も核をもたないのが理想だが、核保有国があるなら我々はその先頭にいたい」と核戦力の増強に転換した。核軍縮の結果、核弾頭は米国が6800発、ロシアが7000発になっているのが不満らしく、ロシアの前に出る方針を示したものだ。これに、プーチン大統領が黙っているはずはない。このままでは米核軍拡競争の悪夢がよぎる。

 トランプ政権をめぐるロシア疑惑は事態をさらに複雑化している。プーチン大統領との良好な関係を維持したいトランプ大統領だが、ロシア疑惑のなかでは、対ロ経済制裁の強化を受け入れざるをえなかった。それは米ロ間の緊張をさらに高めることが考えられる。

 イランの核合意でも、トランプ大統領はオバマ路線を覆そうとしている。オバマ政権下で国連安保理常任理事国(米ロ中英仏)とドイツのG6がイランとの協議でようやくまとめた核合意を破棄しようとしている。対イラン政策を誤ると、混迷する中東情勢は危機的状況に陥り、イラン核合意に参加する主要国との緊張も高まりかねない。

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「遠のく「核兵器なき世界」、被爆国の重い責任」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト
明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー

1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授などを歴任。2012年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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