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行き詰まる「反グローバル主義」

英国のEU離脱は反面教師に

2016年9月6日(火)

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 世界中に蔓延していた反グローバル主義の風潮が行き詰まり始めている。欧州連合(EU)離脱を決めた英国の国民投票は、離脱ドミノを引き起こすと懸念されたが、いまや英国は「反面教師」と受け止められている。米大統領選で排外主義を売りにする共和党のドナルド・トランプ候補は内外からの批判にさらされている。反グローバル主義や保護主義の代償がいかに大きいか人々が思い直し始めているからだろう。反グローバル主義が完全に消え去ることはないにしろ、それを封じ込める新たな挑戦が求められている。

英国のEU離脱キャンペーンの中心的存在だったナイジェル・ファラージ氏(左)が8月24日、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の集会で演説した。民主党候補ヒラリー・クリントン氏への投票拒否を呼びかけたが…。(写真:AP/アフロ)

ライシュの予言

 グローバル化が進めば進むほど自らのアイデンティティーを求めて地域主義や地元意識が高まる。冷戦終結直後にこう喝破したのは、ロバート・ライシュだった。ビル・クリントン政権で労働長官になったこの経済学者に、取材で聞いたこの言葉には、妙に説得力があった。その後の世界を予言するものだった。しかし、グローバル化と地元主義が同時進行するというライシュの見立てを超えて、現実世界は思わぬ展開をみせる。世界中で所得格差が拡大するなかで、問題はグローバル化そのものにあるという見方が強まる。反グローバル主義の風潮である。

 そうした風潮に大きな影響を与えたのは、米国のノーベル賞経済学者、ジョセフ・スティグリッツやフランスの歴史学者、エマニュエル・ドットら現代の論客である。スティグリッツは環太平洋経済連携協定(TPP)に反対し、米大統領選の反TPP機運を先導した。ソ連解体を予言したトッドは、英国のEU離脱決定でEU解体を予言する。

「英国第一」「米国第一」「日本第一」

 たしかに自国本位の風潮はあちこちに広がった。問題は、それが競争力の乏しい途上国ではなく自由貿易を先導する開放的な民主主義国家で連鎖したところにある。

 英国のEU離脱をめぐる国民投票で英国独立党(UKIP)が掲げたのは「英国第一」だった。旧東欧圏などEU域内からに移民の流入に不満をつのらせる英国国民の心理を刺激する作戦だった。「英国第一」は、米国の大統領選挙に連動する。激しい差別人種差別発言を繰り返すトランプ候補が主張したのは「米国第一」だった。最も豊かな先進国であり、20世紀の2大覇権国家である英米に、自国本位主義がはびこったのは深刻な事態である。

 実は自国本位の風潮は日本にもあった。安倍晋三政権が掲げる「一億総活躍社会」は、形を変えた「日本第一」といえるだろう。「一億」が想定しているのは日本人だけである。移民や難民は最初から念頭にない。「一億総」に違和感を感じないとすれば、日本社会には知らず知らずのうちに「日本第一」主義が浸透していることになる。

 自国本位主義の連鎖は、冷戦後のグローバル化の時代が大きな分岐点にさしかかったことを示している。

コメント8件コメント/レビュー

行き過ぎた反グローバル主義って何ですか?

この記事がかかれた時点では、英国のEU離脱表明(実際にはまだ何もしてない)しか
ありませんでしたよね
トランプさんを非難してましたが、この記事が書かれた時点ではヒラリー圧勝の予測一色でした。
その状態ですら、反グローバル主義が行き過ぎてるって事は、反グローバルを唱える人が存在する
事自体が問題というのでしょうか?
また、反グローバル主義が不経済と主張されていますが、その後のトランプ候補の勝利は、
そう考えない人たち、グローバリズムは一握りの金持ちし幸せにしないと考える人が
多かったことを照明してます。
本当に行き詰るのはグローバリズム礼賛論者です。(2016/11/23 17:24)

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「行き詰まる「反グローバル主義」」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト
明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー

1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授などを歴任。2012年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

行き過ぎた反グローバル主義って何ですか?

この記事がかかれた時点では、英国のEU離脱表明(実際にはまだ何もしてない)しか
ありませんでしたよね
トランプさんを非難してましたが、この記事が書かれた時点ではヒラリー圧勝の予測一色でした。
その状態ですら、反グローバル主義が行き過ぎてるって事は、反グローバルを唱える人が存在する
事自体が問題というのでしょうか?
また、反グローバル主義が不経済と主張されていますが、その後のトランプ候補の勝利は、
そう考えない人たち、グローバリズムは一握りの金持ちし幸せにしないと考える人が
多かったことを照明してます。
本当に行き詰るのはグローバリズム礼賛論者です。(2016/11/23 17:24)

名を残すのは一番手ですが、実を取るのは二番手です。
日経さんの編集方針はあるにしろ、周りに反グローバル主義が台頭しつつある時代にひとりだけグローバル主義を掲げるのは、ターゲットにされる可能性が有りますね。
日本は軍人ではなく商売人。商売人なら商売人らしく清濁併せ呑み現実に逆らう愚を犯さないことです。(2016/09/07 08:49)

私は筆者と反対の見方をしています。
まず、「反グローバル主義」自体を人類の敵か何かと看做して攻撃している点に懸念を持ちます。
むしろある特定の国に根を張った「国民」からしてみれば、自分たちの生活を貧しくするグローバル資本の方が「敵」であると考えます。
英国のEU離脱の影響はこれから出てくるでしょうし、EUの盟主であるドイツでもAfDが勢力を伸ばしています(州議選で第2党に躍進しました)し、欧州各国でも同様に右派と呼ばれる政党が勢力を強めています。
民主主義に従えば、おそらくこの流れは当面続くでしょう。
また、第2次世界大戦も行き過ぎたグローバルリズム(帝国主義)が招いたものです。
ここら辺の見解については、ぜひ中野剛氏あたりと対談していただきたいですが・・・絶対にやらないですよね(笑)
節度を持った貿易協定は推進していただきたいものですが、EUの惨状を見ればTPPなど行き過ぎたグローバリズムは悲劇しか生まないことも明らかです。
国民や読者を馬鹿にするのも大概にしていただきたいものです。(2016/09/06 16:44)

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