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危機的状況の中、たゆたえどもEUは沈まず

交互に作用する求心力と遠心力

2016年9月21日(水)

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 欧州連合(EU)は、最大の岐路にさしかっている。ユーロ危機は小康状態だが、イタリアの銀行不安など火種は残る。中東危機と連鎖する難民問題はEU内に亀裂を招いている。英国のEU離脱決定の衝撃は大きい。さすがのメルケル独首相も「EUは危機的状況にある」と警告せざるをえない。しかし、これでEUが崩壊に向かうとみるのは間違いだ。2度の世界大戦を経てできたこの平和の連合は簡単には崩れない。求心力と遠心力を繰り返しながら、後で振り返ると、着実に前進しているはずだ。「たゆたえども沈まず」なのである。

英抜きサミット、薄氷の結束

 スロバキアの首都プラチスラバで16日に開いた英国抜きのEU首脳会議は、移民・難民や対テロ対策などでかろうじて結束し、半年かけてEUの将来を決める行程表を固めた。危機回避のために再結束を優先する場になり、あえて難題には踏み込まなかった。

 ともかくEU27カ国で再結束したことで分裂の危機を防いだが、EU内の足並みの乱れも残っている。経済戦略の路線をめぐって不満をもつイタリアのレンツィ首相は共同記者会見に顔をみせなかった。英抜きのEUをメルケル独首相、オランド仏大統領とともに担う立場にあるレンツィ首相の不在は、独仏伊による新トロイカ体制の先行きに暗雲を投げかけている。

英国を除くEU27カ国の首脳らは9月16日、スロバキアの首都ブラチスラバで首脳会議を開き、EUの結束を訴える宣言を採択した。メルケル独首相(右)とオランド仏大統領(左)は会議後ともに記者会見を行い、英離脱決定後の27カ国の結束をアピールした。(写真:AP/アフロ)

EUの国際政治学

 戦後初めてといえるEUの危機は、国際政治力学の変化とからんでいる。

 EUの歴史をみると、国際政治の大きな節目で、EUが大きな展開をみせることが証明できる。EUの原点である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)は、米ソ冷戦の始まりのなかで創設された。米国のマーシャル・プラン(欧州復興計画)のもとで、欧州統合は動き出したのである。2度と戦争をしないという平和の理念に基づいて独仏和解は進められたが、それを支えたのは、覇権国・米国の冷戦戦略だったのである。

 冷戦の終結が次の大きな節目になる。ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツの統一が実現する。ドイツにとっての悲願は、「強大なドイツ」の再来という疑念を欧州内に生む。それを払しょくするために、独仏の妥協によって創設したのが欧州単一通貨ユーロである。合わせて、EUは民主化、市場経済化する旧東欧圏などに急拡大する。「大欧州」の形成である。こうして、EUは深化と拡大をともに実現する。

 そのEUが「危機的状況」に直面したのは、米国一極時代が終わり「主役なき世界」に突入したことと無縁ではない。オバマ米大統領が「米国は世界の警察官ではない」と宣言するなかで、あちこちに危機が広がったのは事実だろう。オバマ大統領の姿勢は「賢い米国」を反映しているといえるが、その余波は大きかった。とりわけ、イラク、シリアと広がる中東危機は、難民の大量流入となって、EUを揺さぶっている。

コメント2件コメント/レビュー

EUに幻想を抱く典型的な日本の知識人という感じ。ユーロという共通通貨を使用していることの弊害を余りに軽視している。各国の経済状況に合った金融政策を採用出来ないことはダイレクトに雇用に響き、政情を不安定にしている。ヨーロッパの多様性についても理解していると思えない。今のEUは、単に問題を先送りしているだけであり、ゆっくりと死んでいくことを無自覚に選択しているに過ぎない。(2016/09/22 14:05)

「岡部直明「主役なき世界」を読む」のバックナンバー

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「危機的状況の中、たゆたえどもEUは沈まず」の著者

岡部 直明

岡部 直明(おかべ・なおあき)

ジャーナリスト
明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー

1969年早稲田大学政治経済学部を卒業し、日本経済新聞社入社。ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、経済部次長、金融部次長、論説委員などを経て、取締役論説主幹、専務執行役員主幹。早稲田大学大学院客員教授などを歴任。2012年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

EUに幻想を抱く典型的な日本の知識人という感じ。ユーロという共通通貨を使用していることの弊害を余りに軽視している。各国の経済状況に合った金融政策を採用出来ないことはダイレクトに雇用に響き、政情を不安定にしている。ヨーロッパの多様性についても理解していると思えない。今のEUは、単に問題を先送りしているだけであり、ゆっくりと死んでいくことを無自覚に選択しているに過ぎない。(2016/09/22 14:05)

主役なき世界かぁ、僕自身は誰を主役に仮想してるのかナと考える。日経ビジネスオンラインの併せて読みたい―と対比し人間臭ぷんぷんが厭だが、今日の主役なきのバックナンバーは4コマ漫画のように昨今トピックス縦覧とあって目が行った。行き詰まる反グローバル主義、海洋進出で沈む人民元戦略、米国の分裂映す大統領選と遡及し危機的状況の中、たゆたえども EU は沈まずに至るやこれが一層の光を放った。たゆたえどもがまたいい。世界は日の出を待っているとも、陽はまた昇るとも言うが、誰も今でしょ!と言わない事を何の不思議にも思わないまま人間は生きている。考えようによっては、それだけに深く考えていると言えるのかも知れない。烏合の衆にあらず叡智ある者たち皆集い、真のコモンズの発生を信じ結集すること叶わざるかを思慮し実行したい。主役ありきで事に臨むのではなく知行合一の下に人類の英知あり、日本人には「それを言ってはオシマイよ」という徳目があると同時に他人(ひと)に向かっても亦、それもうまく伝え且つ繋いでゆく日本(人)のミッションがありそうに思うが如何。(2016/09/21 08:42)

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