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イスラエルでも拡大する中国企業の投資

日本は周回遅れだが、挽回の余地はある

2016年9月21日(水)

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 昨年の安倍晋三首相の訪問を契機に、にわかにイスラエル投資に動き出した日本企業。そのライバルとなるのは、米欧と肩を並べるほどイスラエルでの存在感を増している中国だ。投資判断の速さが際立つ中国に競り勝つために、日本企業が取るべき道はどこにあるのか。

 イスラエルへの投資で存在感が大きい国はどこか。イスラエル拠点のスタートアップ専門メディア「ギークタイム」を運営するモラン・バー氏の答えはこうだ。「1位はもちろん米国。2位は今、中国だと思う」。歴史的、地理的に関係の深い欧州以上に、中国は重要なパートナーになっている、というのがバー氏の分析だ。3位は欧州、4位はロシア。では日本は?「もうすぐこれらの国の仲間入りをすると信じている」。

 「イスラエルは現在、新しい資本と市場を求めて、日本や中国、ベトナムなどへ目を向けている」とバー氏。その中で特に動きが速いのが中国だ。電子商取引大手のアリババ集団やインターネット検索大手の百度(バイドゥ)をはじめとして、イスラエルに研究開発拠点を開設する動きも進んでいる。2015年のイスラエルのスタートアップへの総投資額約5000億円のうち、約2割を中国資本が占めているというイスラエルの民間調査会社の推計もある。日本も安倍晋三首相の昨年のイスラエル訪問を契機としてイスラエルへの投資にようやく火がついたが、中国に比べれば周回遅れだ。

 イスラエルの農業共同生活体「キブツ」の1つ、ラマハショフェット。広大な小麦畑に囲まれ、木々の間に白壁の平屋が並ぶ静かな町に2014年、中国から8人の農業技術者を引き連れて1人のビジネスマンがやってきた。瀋陽遠大企業集団の康宝華董事長。遠大は「カーテンウォール」と呼ばれるビル外壁材の世界最大手で、東京・新宿の「東京モード学園」のビルを手掛けたことでも知られる。

 「あなたの技術が中国には必要だ」。康氏ががっちりと握手を交わした相手は恰幅の良い農夫。イスラエルが強みとする精密農業システムを提供するオートアグロノムの創業者でゼネラルマネージャーのニッシム・ダニエリー氏だ。

2週間で買収決定

オートアグロノムのニッシム・ダニエリー氏は中国企業トップの人心掌握術に魅せられた

 その2週間後、ダニエリー氏は康氏に中国に招待され買収提案を受ける。約40年経営してきた会社の54%の株式を約2000万ドルで売り渡す契約をダニエリー氏は受け入れる。「遠大は150の国に販売網を持つ魅力的な会社だ。ただ、一番の決め手となったのは、康氏と私がすぐに信頼関係を築けたことだ」と振り返る。

 コンピューターと農業の融合を掲げて設立したオートアグロノムが提供するのは「キャピラリティーイリゲーション」と呼ばれる灌漑技術。土中のセンサーで作物の状況を監視しながら、細管で水や酸素、肥料を必要な量だけ供給する。国土の半分が砂漠のイスラエルだからこそ発達した技術と言える。ダニエリー氏は「平均で農業用水を50%、肥料を70%削減できる」と胸を張る。実際同社は「作物の収量5%増、農業用水の30%削減、肥料の40%削減」を顧客への最低保証の実績として掲げる。達成するまで無料でシステムを提供する。イスラエル以外にも、モロッコ、ペルー、スペインなど世界13カ国で販売実績がある。

 一方、遠大はカーテンウォールのほかにもモーターやエレベーター、風力発電システムなどを生産する複合企業だ。食の安全保障を強化する中国政府の方針を背景に、農業分野への進出を決定。水不足に悩む中国の農業で需要が高いとみて目を付けたのが、オートアグロノムの技術だった。

 実は当時、オートアグロノムは日本の大手農機メーカーを含む複数の会社から買収提案を受けていた。スピーディーに投資を決断した遠大と比べ、日本企業の動きはどうだったか。「現場に来た人がその上司に判断を仰ぐ。その上司はまた自分の上司に判断を仰ぐ。日本は決断に消極的な企業文化があるように感じた」(ダニエリー氏)。

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「イスラエルでも拡大する中国企業の投資」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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