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イスラエルではアラブ人起業家も奮闘

「意見が合わなくてもビールを飲みに行けばいい」

2016年9月23日(金)

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 「イスラエルの経営者への取材なら、ユダヤ人にしか会わないでしょうね」。イスラエルへ取材に赴く直前、同国の複数のスタートアップへ出資している日本のベンチャーファンドの担当者から聞いた言葉だ。

 イスラエルの約850万人の人口のうち、約2割はアラブ人だ。周辺のアラブ諸国との摩擦が続くイスラエルにおいて、国内でもアラブ人とユダヤ人との衝突は絶えず、刃傷事件に発展する例もある。加えて、アラブ人はユダヤ人と比較して経済的に不利な状況にある人が多い。

 原則、教育はヘブライ語で実施されるため「学業についていけなくなる、あるいは感情的にヘブライ語を使うことをためらい、ドロップアウトする生徒もいる」(日本政府関係者)。また、高校卒業後の2~3年の兵役はユダヤ人のみに課されており、アラブ人は対象外だ。このことは、起業大国イスラエルにおいてはむしろ不利に働く。

 イスラエル国防軍は優秀な学生を選抜して諜報部隊や特殊部隊に送り込み、IT技術者を育てる役割を果たしている。さらに、兵役やその後の予備役を通じて、ほかの優秀な技術者との人脈を築くこともできる。国防軍で培った技術と人脈はイスラエルの起業家にとって強力な武器であり、国防軍でどの部隊に所属していたかは、大学よりも重要な経歴になる。

 こうした事情からアラブ人とユダヤ人の経済格差は大きく、企業経営に乗り出すアラブ人は少ない。実際、冒頭の言葉は正しかった。ただ1人を除いて。

 ラミ・クワーリー氏。イスラエルの中でも一際アラブ人が多い都市、ハイファに拠点を構えるミーンドライフのCEO。ムスリムではなくクリスチャンだが、れっきとしたアラブ人だ。

イスラエルではまだ数少ないアラブ人経営者、ラミ・クワーリー氏

両親は「頭がおかしい」と反対

 同社は別のサイバーセキュリティー企業の従業員だったクワーリー氏らアラブ人2人、ユダヤ人2人で2013年に活動を始めた。「アラブ人はリスクを好まない。起業を思い立ったとき、子どもが2人いて、給料も良かった。両親には『頭がおかしいんじゃないか』となじられたよ」。クワーリー氏はこう振り返る。

 ミーンドライフは他企業がまだあまり注力していなかったIoT(モノのインターネット)機器のサイバー攻撃対策に商機があるとみて、IoT専用のセキュリティー会社として出発した。「大きなメモリを積めないIoT機器でも稼働するよう、クラシックなインターネット技術を応用した」(クワーリー氏)。現在は特にスマートホームの分野に着目し、コンセントに指すことで外部から家電のスイッチを操作する機器を開発。その中にセキュリティーソフトを組み込んでいる。今年初めにイスラエルで、6月にフィンランドで現地会社と提携して発売。既に1万台以上を販売したという。

 もちろん、ここに至るまで全てが順調だったわけではない。クワーリー氏は「アラブ人の起業に障害があるとは言いたくない。スタートアップを成功させるのは誰にとっても挑戦だ。アラブ人はそのハードルが少し高いだけだ」と話す。就職希望者も、投資家も、アラブの名前を聞いただけで少し顔をこわばらせる。最初の出資を得るまでに3年かかった。「でも、アラブ人だからと言うだけで協力を拒まれたことはない。あまり馴染みのないアラブ人起業家にどう対応して良いかわからないだけだ。全ては時間が解決してくれた」

コメント3

「天才を生む国、イスラエル IoTシーズはここにある」のバックナンバー

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「イスラエルではアラブ人起業家も奮闘」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官