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「機能する現場」はもはや妄想

人材育成の失敗を学習院大学の守島基博教授に聞く

2017年11月14日(火)

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現場の頑張りが日本経済の強さの秘訣、そんな「神話」が揺らいでいる。鉄壁のプロジェクトマネジメントを誇った日揮がプラント建設に手を焼き、IHIはモノ作りの基本である溶接でつまづいた。背景には何があるのか、人材マネジメント論が専門の学習院大学の守島基博教授に話を聞いた。

(聞き手は寺井伸太郎)
学習院大学の守島基博教授(撮影:陶山勉、以下同)

様々な大型プロジェクトが「失敗」する背景には何があるとお考えでしょうか。日本企業の現場に異変が生じているとの見方もあります。

守島基博教授(以下、守島):問題には「相対的」な面と「絶対的」な面があります。

 まず相対的な面でいえば、現在の競争環境において、プロジェクトの規模や複雑性が大きくなり、納期やコストの要求が厳しくなっています。つまりは経営からのプレッシャーが過去と比べて高まっている中で、日本企業の現場管理の手法が付いていけていないのが一因でしょう。

 日本の現場力が強かった時代は高度成長期です。現在に比べれば、という条件付きですが、比較的余裕のある状態でプロジェクトが動いていたと思います。もちろん納期はありましたが、極端な話、それに間に合わなくても、何とかなった時代ではあります。

 三菱重工業が挑んでいる国産旅客機「MRJ」の開発など、日本企業が現在直面しているプロジェクトでは、グローバル化を背景に納期や品質管理などの条件が複雑化・高度化しています。つまり環境変化が激しくなり、それに対応できていない、というのが相対的な面です。

 絶対的な面というのは、日本企業の人材育成力の低下です。現場の人たちが仕事のやり方を学び、実際のビジネスを展開していく力が低くなってきたといえます。企業内の様々な事情によって起こっています。

相対的な面と、絶対的な面によって、日本企業のプロジェクト遂行力が低下しているというわけですか。

守島:もう少し細かく説明しますと、日本企業の強さは現場への権限委譲によって成り立ってきました。悪く言えば「現場任せ」です。これまでは自立的な現場が人を育て、最終的に成果を出してきましたが、その現場の力がどんどん落ちています。

 現場への権限委譲は美しい言葉ですが、それは現場がしっかりしている、うまく回っているときに効果を発揮します。そうでないときに権限委譲すると、混乱が避けられません。記憶に新しい神戸製鋼所や日産自動車などで発生した品質問題も、結局は経営側が現場に依存しすぎていることの表れです。余裕がない中で、現場が勝手に対応してしまいました。逆説的ですが、「現場は正しい」という日本企業にありがちな前提に基づいて起こったといえます。

コメント7件コメント/レビュー

まるで当社の実情を見たかのような内容にちょっと驚きと
日本の現場力は徹底的な効率化?とコストカットによって
既に削がれ疲弊したんのですね。
もはや先輩たちの遺産は食いつぶした感があります。(2017/11/15 13:40)

「失敗の法則」の目次

「「機能する現場」はもはや妄想」の著者

寺井 伸太郎

寺井 伸太郎(てらい・しんたろう)

日経ビジネス記者

2002年、慶応義塾大学を卒業し、日本経済新聞社に入社。東京や名古屋での企業担当などを経て、直近は決算を取材する証券部。15年から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

まるで当社の実情を見たかのような内容にちょっと驚きと
日本の現場力は徹底的な効率化?とコストカットによって
既に削がれ疲弊したんのですね。
もはや先輩たちの遺産は食いつぶした感があります。(2017/11/15 13:40)

「妄想」と言われようが、現場は正しい。 現場に権限移譲させて切り盛りできる優秀な人物もいないことはない。
しかし、昔、現場で優秀だった人が管理職になって、何をやっているかというと、管理しようとしている。それで、今、現場で優秀な人は、その管理職にあげるリポート作りに追われて、肝心な現場の仕事をできずにいる。だから現場力が失われたように見える。
問題が起こって、Corrective Actionのリポートがでて、次にPreventive Actionのリポートが出て、そしてImplementation Planが出て・・・
それが完了しないうちに、次の問題が起こる。
いつから現場はリポートをつくる場所になったのだろうか?
伝書バトの中間管理職はいらない。彼等がすべての生産効率を下げ、ビジネス機会逸失をつくっている。(2017/11/15 03:16)

 "現場"なんて、過去の延長でしか考えられないもので、革新は自己否定になるから基本NG、カイゼンが関の山。 また、"現場"の意見を聞くなんて、設計者・経営者が現場に丸投げしているだけ。 海外メーカーでは、日本企業より"現場"力の劣るラインを使って、工業製品を製造・販売し、儲けも出している。 

 "現場"力に期待できない海外の設計者は、"現場"でのトラブル・リスクを想定した設計できる。つまり、日本の設計者は海外の設計者に負けているって言うこと。 経営者も然り。 (2017/11/14 14:36)

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