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中国の国際収支構造とその調整

「高利で借りて低利で運用」する中国

2017年11月22日(水)

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 中国の最高国家行政機関である国務院、その直属の研究機関が「中国社会科学院(Chinese Academy of Social Sciences=CASS)」です。1977年に設立された、哲学、社会科学研究の分野で中国でもっとも権威のある学術機構であり、学位を授与する機能も持ちます。参加の研究所は31、研究センターが45、所属する研究者は3200人。中国の「五カ年計画」策定の基本作業もここが行っているのです。

 本連載では、この中国政府のブレーンとして機能しているシンクタンクのトップ研究者が、いま、自らの国についてどう考えているかを、寄稿を翻訳する形で紹介していきます。原文のニュアンスをできる限り維持するため、意訳は最小限に留め、研究者や日本人には理解しにくい箇所については、適宜、本文と分けて注釈を入れる形とします。内容については、注釈の囲みをざっと見ていただくだけでも掴めるよう、配慮したいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(大和総研 主席研究員 小林 卓典)

国際収支発展段階説で見る中国

 第1回は、余永定・CASS学部委員の論文です。余氏は同院世界経済・政治研究所の元所長で、テーマ領域は為替金融です。なお、「学部委員」はCASSに在籍する学者についての最高名誉職で、中国科学院の院士に相当します。

 この論文の内容を一言で言えば「中国はその成長の過程で、『海外の資金を高利で借り入れて、低利の米国債などで運用している』状況が続いていて、それが限界に来ているのではないか」という現状分析と危機感です。研究者らしく、前提を積み重ねてから結論に至る構成なので、最初は読みにくく感じるかも知れませんが、この結論を頭に置いて読んでいただくと、なぜその説明が必要なのかが理解しやすくなるかと思います。

余永定(ユー・ヨンディン)氏 1948年生まれ。1969年中国科学院北京科学技術学校卒業。中国社会科学院経済学修士、オックスフォード大学経済学博士。中国社会科学院学部委員、全国人民政治協商会議委員、中国国家発展改革委員会国家計画専門家委員会委員、全国人民政治協商会議外交委員会委員、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域顧問。これまで、中国社会科学院世界経済・政治研究所所長、中国世界経済学会会長、中国人民銀行通貨政策委員会委員、国連国際金融・通貨体制改革委員会委員(スティグリッツ委員会)、国連開発政策委員会委員等を歴任。主な研究分野は、世界経済、国際金融、中国マクロ経済。孫冶方経済学賞受賞。主な著書に、『西方経済学』(1997)、『世界経済を考える』(2004)、『ある学者の思想の軌跡』(2005)、『見証失衡―双子の赤字、人民元為替相場と米ドルの落とし穴』(2010)、『最後の障壁』(2015)など。

 イギリスの経済学者ジェフリー・クローサーが1957年に提唱したモデルによれば、一国の経済成長の過程は、国際収支と対外純資産構造の変遷により、次の6段階に分けることができる。すなわち、①未成熟な債務国、②成熟した債務国、③債務返済国、④未成熟な債権国、⑤成熟した債権国、⑥債権取崩し国 である。

 それぞれの段階で、その国の経常収支、貿易収支と所得収支の3項目の赤字・黒字が異なった状態となる。対外純資産はその国の発展段階に見合って、マイナスからプラスへ、プラスからマイナスへと変化する。国際収支の変化は、その国の発展レベルとは切り離せない関係を有している。

 但し、1人当たりの国民所得が極めて低い国の場合、国内では貯蓄不足となり、貿易収支、経常収支はともに赤字となり得る。その場合、資本輸入を通じて国内の貯蓄不足を解消することができる。

 「経常収支」は、「貿易収支」「サービス収支」と「第一次所得収支=対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支」、「第二次所得収支=官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払などの、居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支」の合計です。「金融収支」は、直接投資、証券投資、金融派生商品、その他投資及び外貨準備の合計であり、経常収支は、金融収支に計上される取引“以外”の、居住者・非居住者間で債権・債務の移動を伴う全ての取引の収支を示すわけです。

 このクローサーモデルは、各国の経済発展の経験とおおむね合致している。

 例えば、経済発展の初期段階で、東アジアの新興国は、いずれも貿易収支と経常収支が赤字であった。第二次世界大戦後、大まかに見れば、日本も未成熟な債務国、成熟した債務国、債務返済国の段階を経てきた。そして、2005年~2010年に日本はクローサーモデルの4番目の段階、すなわち未成熟な債権国の段階に入ったと考えられる。

コメント1件コメント/レビュー

非常に素朴な疑問ですが、ひとつの国の中で非常に大きな経済格差が存在する時、それを平均した値で持って国全体を論ずる議論の有効性は、格差が少ない国のそれと同じ有効性を持つのでしょうか?
98%の富を2%が所有するといわれるアメリカの格差も凄まじいですが、中国はさらにそれを上回るような気がして、そういうものが普遍的議論の普遍性を損なうのではないかと感じています。(2017/11/22 11:28)

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  • 中国社会科学院リポート

    2017年11月22日

    中国の国際収支構造とその調整

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非常に素朴な疑問ですが、ひとつの国の中で非常に大きな経済格差が存在する時、それを平均した値で持って国全体を論ずる議論の有効性は、格差が少ない国のそれと同じ有効性を持つのでしょうか?
98%の富を2%が所有するといわれるアメリカの格差も凄まじいですが、中国はさらにそれを上回るような気がして、そういうものが普遍的議論の普遍性を損なうのではないかと感じています。(2017/11/22 11:28)

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