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選手全員が農業で稼ぐハンドボールチーム

収入の不安を解消し、ファンも増やす

2017年12月4日(月)

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農業の規制緩和などを背景にして、これまで農業とは遠い存在だった様々なバックグラウンドを持つ人々が、農業を「職場」として選ぶようになっている。中でも、新しい動きとして目を引くのが、アスリートの「セカンドキャリア対策」。「選手が農業で稼ぐハンドボールチーム」として知られる「フレッサ福岡」が実践する、「収入確保」と「ファンづくり」の一石二鳥の取り組みを紹介する。

 福岡市街から車で1時間弱。のどかな田園地帯が広がる福岡県糸島市に、異色の男子ハンドボールクラブチーム「フレッサ福岡」がある。

 フレッサ福岡が発足したのは、2016年のこと。日本各地から有力選手が集まり、今年8月には、社会人ナンバーワンを決める「ジャパンオープンハンドボールトーナメント」に初出場。いきなり準優勝を収める好スタートを切った。2018年には、国内のハンドボールのトップリーグである「日本ハンドボールリーグ(JHL)」(男子9チーム)への参入を目指し快進撃を続けている、ハンドボール界の“ダークホース”だ。

ハンドボール界の“ダークホース”「フレッサ福岡」は、2018年のトップリーグ入りを目指して快進撃を続けている
(写真=フレッサ福岡)

 フレッサ福岡の最大の特徴は、所属する15人の選手全員が、農業に従事しているということだ。選手は毎日、日中は近隣の農家などに出向いて、農作業に汗を流す。そして作業の合間や夕方以降の時間帯に、市内の体育館などに集合して、練習に励む。「うちには入団条件が2つあります。1つはもちろん実力。もう1つは農業に本気で取り組む覚悟です」。フレッサ福岡の前川健太代表はこう話す。

 糸島は、日本を代表するイチゴの高級品種「あまおう」の主要産地として知られる。ちなみにフレッサとは、スペイン語で「イチゴ」の意味。選手は地元の農家などで、イチゴをはじめ、タマネギやトマト、安納芋といった様々な作物を栽培する。

大野夏也選手は、毎日近隣の農家で作業をしながら、苗作りの基本を学んでいる
(写真=諸石 信)

「アスリート×農業」=「収入確保×地域活性化」

 ではなぜ、アスリートが農業をするのか。かつてトヨタ自動車のチームに所属し、現在はフレッサ福岡のGM兼監督を務める栗崎純一氏は、こう話す。「狙いは2つあります。1つは、選手の収入を確保すること。もう1つは、地域活性化をお手伝いし、地元の皆さんにファンになってもらうことです」。

 ハンドボールも多くのスポーツと同様に、実業団のチームを企業が経営合理化のために解散するケースが増えている。そこで、選手の活躍の場を何とか作ろうと、有志が立ち上がって結成されたのが、フレッサ福岡だ。

 しかしトップリーグ以外のチームは、チケット販売などの興業が認められていない。チームに入る収入の大半はスポンサー企業からの広告料だが、それでは、選手の人件費を賄えない。大企業に所属するチームでは、選手は社員として仕事をしながら給料をもらえるが、フレッサ福岡は選手が生計を立てるための収入減を自ら確保しなければならなかった。

 しかも、コートの中で走り続けるハンドボールは、数あるスポーツの中でも運動量が多いことで知られ、選手の多くは20代で現役を引退する。企業に所属しないチームの選手にとっては、引退後の「セカンドキャリア」への不安も大きい。

 そこで、チーム立ち上げに動いた前川氏と栗崎氏が目を付けたのが農業だった。「農業は、手に職がつき、定年もない。もちろん生易しい仕事ではないが、きつい練習に耐えてきた選手なら、体力面では心配ない。就農は、『競技』と『生活』を両立させるための、最適解だと思った」(栗崎氏)。

 「アスリート×農業」という新しい試みを実現させるために、前川氏と栗崎氏は、現在フレッサ福岡のオーナーで、バイオベンチャー「Biomaterial in Tokyo」(東京・品川)の社長を務める泉可也(よしや)氏に相談を持ちかけた。泉社長は、自らも学生時代からハンドボールに打ち込んできた。福岡県出身で実家が農業を営んでいたことから、かねて、「地元への恩返しの意味も込めて、いつか福岡でイチゴの栽培を手掛けたいと考えていた」という。

 「日本初の農業で稼ぐハンドボールチームを立ち上げたい」。泉社長らのそんな思いに共感し、糸島でイチゴ栽培などを手がける日高農園など、複数の農家が、選手を“研修生”として受け入れることなどを快諾してくれたため、糸島を本拠地にしてフレッサ福岡を立ち上げることになった。

フレッサ福岡のオーナーで、バイオベンチャー「Biomaterial in Tokyo」の社長を務める泉可也氏(右)と栗崎純一GM兼監督(左)は、イチゴの収量拡大を目指して試行錯誤を重ねている
(写真=諸石 信)

コメント2件コメント/レビュー

福岡の選手たちが本気で農業に取り組み、一線を退いたあとも農業法人に残る。もしこれが継続できれば、企業が広告塔としてあるいは地域貢献の一環としてスポーツを保有するのではなく、スポーツが主役になって企業を興し地域貢献も担うという未来が実現するかもしれませんね。本当にそうなれば痛快です。(2017/12/04 16:02)

「農業で解決 日本の課題」の目次

「選手全員が農業で稼ぐハンドボールチーム」の著者

吉岡 陽

吉岡 陽(よしおか・あきら)

日経ビジネス記者

2001年日経BP入社。日経ビジネス、日経エコロジー、日経トップリーダー、日経ビジネスアソシエを経て、現職。独自の強みを持つ中小ベンチャー企業や環境経営の取り組みなどを取材してきた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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福岡の選手たちが本気で農業に取り組み、一線を退いたあとも農業法人に残る。もしこれが継続できれば、企業が広告塔としてあるいは地域貢献の一環としてスポーツを保有するのではなく、スポーツが主役になって企業を興し地域貢献も担うという未来が実現するかもしれませんね。本当にそうなれば痛快です。(2017/12/04 16:02)

糸島という全国でも農業収入基盤を確立してきた地域だからこその成功事例。

地域農業自体の存続が懸念され、農業をこれからの産業に出来ていない地域では、まずは農業経営を確立する必要がある。(2017/12/04 07:39)

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三品 和広 神戸大学教授