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災いの種になる「悪い忖度」をなくすには?

「良い忖度」に賞を、「悪い忖度」には罰を

2017年6月19日(月)

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 安倍首相の一連の疑惑に絡んで、官僚の忖度(そんたく)が働いたのではないかという民主党議員の質問がきっかけになって、難しい漢語の「忖度」という言葉が注目を集め、今年の流行語大賞になるのではないかとさえ言われている。

 もともとは相手の心を推し量るという意味の言葉で、福沢諭吉も好んで使っていたようだ。目上の人に気に入られようとして、その意向を推し量るという意味で用いられたのは、2000年代に入って、新聞が役所などを批判する際に用いるようになってからのようだ。

部下が「良い忖度」と判断して行ったことが、結果的に「悪い忖度」だったとなることも。(©everythingpossible-123RF)

“忖度”とはまさに精神科医の仕事

 相手の気持ちを推測するというのは、我々精神科医や心理学者が日常茶飯に行うことである。実際、これに似た用語で共感という言葉が、精神分析の世界でも臨床心理学の世界でもキーワードになっている。

 精神分析の用語としての「共感」とは、本コラムでも何回か紹介したオーストリア出身の精神科医コフートによると、相手の立場に立って、相手の心の中を想像することだ。たとえば、友達が失恋して、自分は恋人なり配偶者との関係がうまくいっているとしよう。こういう際に、何も考えずに、「彼女なんてすぐできるよ」というような慰め方をしないで、自分がもし恋人なり配偶者に立ち去られたらどんな気持ちになるかを想像する。これが共感である。

 精神分析の世界でなくても、臨床心理の世界でも共感はキーワードだ。『嫌われる勇気』で日本でも有名になったオーストリアの精神科医アドラーに言わせると、共感とは「相手の目で見、相手の耳で聞き、相手の心で感じること」である。コフートと似た立場と言える。カウンセリング心理学のパイオニアのロジャーズも共感を似たような意味で、心の観察手段と考えている。

 このように相手の心を想像することは、臨床心理学の基本である。フロイトの時代であれば、夢などの分析を通じて、患者が気づくことのできない無意識の世界を想像するのが精神分析家の仕事だった。しかし今は、相手の立場に身を置いてみて、相手が意識レベルでどんなふうに考えているのか、感じているのかを、治療者が推測する。これは、まさに忖度と言えるだろう。

 もちろん、通常は、この忖度(共感)は人間関係を円滑にするための重要なツールとされているし、以前はやったEQ(心の知能指数)の理論でも中核概念となっている。ビジネスシーンであれ対人関係であれ、何も忖度しないで人と接するより、多少は相手の気持ちを想像するほうがいいのはむしろ当たり前のこととさえ言える。

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「災いの種になる「悪い忖度」をなくすには?」の著者

和田 秀樹

和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

精神科医。『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(自己心理学)などが専門。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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