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自分で自分の首を絞める高齢者差別

相続税の大幅増税が高齢者に優しい社会をつくる

2017年8月17日(木)

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 何が本業か分からないような生き方をしてきて久しいが、私が常勤の医者をしていた頃も現在でも、自分としては高齢者専門の精神科医が本業だと任じている。実際、今でも毎週60人くらいの高齢者を診ているし、師匠が良かったこともあって、この世界ではそうそう人に負ける気がしない。

高齢者の差別をなくすには、高齢者が介護サービスなどでお金を使うことが効果的ではないだろうか。(©PaylessImages-123RF)

 それが本業であるゆえに、私の実感や統計数字と違う報道などにはつい敏感になってしまう。以前も問題にした高齢者からの免許の取り上げについても、統計上の根拠はないし、相当重い認知症(こういう人はそもそも車が動かせない)でない限り、ブレーキとアクセルを間違えることはないことが分かっているので、強い違和感を感じた。(関連の過去記事はこちら

知らないうちに進む高齢者差別

 若い人と比べて事故が多くないのに免許を取り上げる運動が起こり、実際に法制化されるなど、高齢者への差別が徐々に高まっているように実感している。医療現場について言えば、高齢者の命が粗末にされる傾向にある。寝たきりや認知症の人、特に末期医療について、生かしておくべきでない、死ぬ権利を認めてあげるべきだという議論が横行する。その根拠は、高齢になるまでの世代に、「寝たきりや認知症になっても手厚い医療を受けたいか?」といった類のアンケートで、大半の人が「そうしてほしくない」と答えることなどだろう。あるいは、末期状態になってまで治療を受けるのはかわいそうということもある。

 しかしながら、実際の医療の現場にいると、意外に寝たきりの高齢者でも、医療をありがたがって受ける人が多い。以前、何かの番組で北野武さんとご一緒していたときに、休憩時間に「先生、寝たきりになってまで生きていたくないというのは嘘だよな」と話しかけられたのを今でも鮮明に覚えている。「うちのババアは『たけし、寝たきりになったら殺しておくれ』と言っていたのに、いざ寝たきりになると「たけし、医者に包んでいるか?」と言うもんな」と冗談めかして言われたのが当時の私の実感とフィットしたからだ。

 実際、がんになって初めてがん患者の気持ちが分かったという外科医がいるように、元気なときには実際に寝たきりや認知症になったときの気持ちは分からないし、人間の気持ちなど立場によって変わるものだ。認知症にいたっては、ある種の子ども帰りからか、かえって死ぬのが怖くなる人のほうが多数派のような気がするくらいだ。

 認知症や寝たきりのレベルでなくても、これから高齢者に対する外来医療の定額制なども検討されている。そうなると高齢者は金のかかる医療や高額な薬などの処方が受けられなくなる。年齢だけで受けられる医療の質が変わるというのに、知られていないせいか、知られているのにかは分からないが、問題にする人は少ない。

「和田秀樹 サバイバルのための思考法」のバックナンバー

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「自分で自分の首を絞める高齢者差別」の著者

和田 秀樹

和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

精神科医。『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師。川崎幸病院精神科顧問。老年精神医学、精神分析学(自己心理学)などが専門。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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