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「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ

企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く

2018年1月10日(水)

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最終消費者を見ていない不祥事企業

多くの人の口に入る食品と、機械などに加工される素材や部品では、扱いが違うという意見もあります。

久保利:BtoBの商品で、取引先が納得しているなら問題ないって言うんでしょう。これも大きな間違いですよ。素材だって部品だって最後の段階では、必ずBtoCのビジネスになるんです。誰が飛行機に乗り、誰が自動車を買うのですか。神戸製鋼や三菱マテリアルが受け取るお金は、究極的には誰が支払っているのですか。多くの一般消費者でしょう。

 ところが、問題を起こした企業にはこうした意識が欠けている。取引先の了解を得ることを最優先にして、視線がその先に向いていないのです。だから動きが極めて遅い。

 神戸製鋼がデータ改ざんを把握したのは2017年の8月頃とされていますが、公表したのは10月になってから。食品メーカーだったら、問題を起こした商品を3日で回収しなかったらボコボコにされますよ。BtoBの製造業だから許されると考えるのは甘い考えでしょう。

一連のデータ改ざんで浮き彫りとなったのが、トクサイ(特別採用)と呼ばれる日本独自の商慣習でした。要求に満たない品質の製品を、取引先の許可を得たうえで納入する仕組みです。

久保利:これにも非常にがっかりさせられましたね。納期を守るために、契約と異なる品質の製品を出荷していたんでしょう。まともな製造業なら、絶対に品質を犠牲にしないはず。相手が認めたとしても、自らの矜恃が許さない。

 しかも一部ではトクサイという慣習を悪用し、相手の承諾を得ないまま不適格な製品を納入したケースすらあります。「過剰品質」と言われるほど安全面を考慮しているので、多少なら許容されるだろうと考えているのでしょうが、それは何の言い訳にもなりません。製造業としての「堕落」だと言うべきです。

トクサイは一部のメーカーに限らず、日本の製造業ではよく使われる取引手法です。

久保利:ある企業で、トクサイの有無や社内稟議のプロセスを調べたそうです。すると幸いなことに、ここ数年間ではやっていないことが分かりました。ただし、それ以前は不明です。記録が存在しないため遡れないというのです。

 担当者はこう話したそうです。「トクサイは相手が認めなければ実現しない。製品として使われて長い時間が経っているし、事故らしい事故も起きていないから、大丈夫じゃないですか」。

コメント40件コメント/レビュー

品質が高いとは何か、一級品とは何か、日本の製造業は理解していないように感じます。意味があるとも思えない寸法や成分や強度に異様にこだわった結果、値段は高止まりし、納期が長くなり世界の製造業から取り残されていった。現場の方々は意味のない品質だと考えているので基準以下でも良いと勝手に判断し、経営者は品質が高ければ売れると勝手に判断した。世界のホテルから日本製品が無くなったのは、品質の問題ではなく、一級品では無いからはその通りでしょう。ごてごて意味のない機能を付け、価格は高く、そんなもの誰も必要としない。日本の製造業はそれが分からない経営者が多い。(2018/01/12 09:53)

「甦れ!ニッポンの品質」の目次

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「「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ」の著者

小笠原 啓

小笠原 啓(おがさわら・さとし)

日経ビジネス記者

早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

品質が高いとは何か、一級品とは何か、日本の製造業は理解していないように感じます。意味があるとも思えない寸法や成分や強度に異様にこだわった結果、値段は高止まりし、納期が長くなり世界の製造業から取り残されていった。現場の方々は意味のない品質だと考えているので基準以下でも良いと勝手に判断し、経営者は品質が高ければ売れると勝手に判断した。世界のホテルから日本製品が無くなったのは、品質の問題ではなく、一級品では無いからはその通りでしょう。ごてごて意味のない機能を付け、価格は高く、そんなもの誰も必要としない。日本の製造業はそれが分からない経営者が多い。(2018/01/12 09:53)

 よく言えば正論だが、やはり建前論にすぎず、人間という人文科学的素養、また現場という自然科学的素養が欠けている方の意見だと思う。
 本人は、現行の弁護士は、そういった人文科学的素養・自然科学的素養が欠けている者が大部分だ、という問題意識を有しており、それを改善させるべく司法改革制度を起こし、新たな法科大学院を設置した。ところが、それも大失敗に終わり、「建前の現実化の大失敗」という黒歴史が久保利弁護士には残っている。(2018/01/12 06:25)

>過剰反応だと言う人もいるかもしれませんが、僕はまっとうな経済社会の姿だと思います。ルールや契約は守られるべきなのです。

これに対して(2018/01/11 14:15)コメントに概ね同意ね。

他人の失敗に乗じて追い詰める行為を過剰反応のように行うのを許すのも間違い。
ミスを許容しない社会、それが落伍者だらけの社会にするし、
全体的に見れば皆が足を引っ張り合って全員不幸になる道。

>自分の都合で勝手に解釈する

人物金などで年々ハードルを上げ、その上で~対策でする事を増やしつつ、
無駄削減といって安全マージンを削り続ける事を求めるなどを要求するが
いずれ目標を達成できない時が必ず来る。
このリスクを考えないのと、
・自分で「なんとかする方法を」考えろ
・「できません」は認めない「なんとかしろ」※悪いニュースは聞こうとしない
・予算や納期や人員、道具に対し調整、変更、選択肢や権限を与えない
こういう無理筋状況に追い込む事が

「データ改ざん」を起こさせる原因じゃない?

これは経営側の甘えだよ

こういうのが判ってきたから、不二家のようになると判っても
「もうどうにでもなれ」「死なば諸共」かどうか知らないが、内部告発が増えたんじゃね?(2018/01/11 23:48)

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