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生徒の1割が「ギャップイヤー」を選ぶ

第35回 開校から3年、初の卒業生を輩出

2017年6月26日(月)

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 「多様な進路が、実にISAKらしくて誇りに思う」と、小林は話す。ギャップイヤーを取る人数の多さを“自慢”するのは、日本の高校ではまず考えられないだろう。「世界各地の生徒と教職員がいるダイバーシティーの環境で、『自分はどう生きるべきか』を見つめ直した生徒がたくさんいました。その結果、進路を変えた生徒やギャップイヤーを選んだ生徒が現れた」。

 卒業生の1人で、フィリピン出身の男子生徒、ディランはイギリスのエディンバラ大学に通うことを決めた。プログラミングに興味があり、情報科学を勉強するのが目的だ。「アメリカ国籍も所有しているので、最初はアメリカへの留学を考えていました。ただ、カレッジカウンセラー(進路相談員)と話をして、自分にとってロケーションは重要ではないことに気づきました。教育の内容やレベルと学費、この2つが大事なポイントだと明確になりました」。

 ISAKでカレッジカウンセラーを務めるウェンディ・ビッグラーは、大学のカウンセラーとしては20年間、前職では台湾の公立高校と私立高校で計6年間の経験を持つ。生徒一人ひとりについて、大学選びについてアドバイスしたり、出願などの手続きを手助けしたりする。「最終的に受験校を決めるのは生徒です。ですが、私は難関大学しか受けないことは勧めません。進学先を選択するうえで、生徒一人ひとりの当事者意識の重要性を訴え、生徒が学業面、社会面、財政面において最適な大学を見つけられるように支援しています」。生徒の関心と成績だけで進路を決めるのではなく、最新の大学情報を提供し、家庭環境などを加味して、生徒が最適解を導き出せるように指導するのがカレッジカウンセラーの役割だ。

 ISAKでは、生徒募集のための説明会を開くために大学の担当者が訪れる。その数は、2016年度で世界10カ国から40校にも及ぶ。そのなかには、アイビーリーグ(アメリカの名門私立大学8校)のトップクラスの大学も含まれる。ビッグラーが国際会議などに出席して個人的なネットワークを構築しているほか、「ISAKの教育現場でどんなイノベーションが起きているか、大学も興味を持っていますし、そこで育った生徒を受け入れたがっています」(ビッグラー)という。

 ディランもこうした説明会に参加して、さまざまな大学の情報を入手した。さらに、興味のある大学については、通っている学生や卒業生とSNS(交流サイト)などを通じてコミュニケーションし、生の声を集めたという。「大学3~4年でIT関連の大企業を経験、卒業したら中小企業やスタートアップ企業で働いて、フィリピンで起業したい。雇用を創出して、母国に貢献したい」と目を輝かせる。

 ビッグラーにとっては、生徒の合格だけでなく、成長も喜びだという。大学への出願に当たって当初は頼りなく思えた外国人女子生徒が、次第に自覚を持つようになり、進捗状況を自ら報告するようになった。「日本の大学に行くことを決めた」と女子生徒から聞いたビッグラーには、1つ、気がかりな点があった。「ビザの取得を手伝いましょうか?」。すると、女子生徒は「心配ないわ。すでに済ませてあるから」と。主体的に行動する積極性は、これからの人生で大きな助けになるだろう。

 生徒が選んだ進路は、海外では、アメリカのブラウン大学やタフツ大学というアイビーリーグに、名門女子大学のスミス大学など、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、アブダビのニューヨーク大学アブダビ校、シンガポールのイエール大学シンガポール校といった大学になる。日本では、東京大学や早稲田大学、慶応義塾大学、大阪大学、ICU(国際基督教大学)、立命館アジア太平洋大学などに合格している。

 ギャップイヤーを取る生徒も、ISAKでの体験が影響をもたらしている。ISAKでタイのビルマ難民に英語を教えるプロジェクトに携わったトルコ出身の女子生徒、セリンは、タイの小学校で子供が学べる場の創出に携わっていく。「ベトナムの貧困層に本を届けたい」という思いから始まったプロジェクトに関わったベトナム出身の女子生徒、クウィンチャンは、ベトナムのホテル産業の政治的・国家経済的側面をより理解するために、政府の観光機関でインターンとして働く。こうした生徒はギャップイヤーで得た知識や経験を基に、大学を選ぶつもりだ。

生徒による“手作り”の卒業式

 「自ら考えて行動する」ことを掲げるISAKでは、卒業式も卒業生と在校生の“手作り”だ。卒業式の場所やBGMを選定したり、卒業生はアカデミックガウンを着用したり、在校生が司会進行を務めたり……。極めつきは演台。用意がなかったため、日曜大工が得意な教員と生徒が一緒になってわざわざ造ったのだ。

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「生徒の1割が「ギャップイヤー」を選ぶ」の著者

小林 りん

小林 りん(こばやし・りん)

ISAK設立準備財団代表理事

国連児童基金(UNICEF)勤務時にフィリピンに駐在、ストリートチルドレンの非公式教育に携わる。2007年に発起人代表の谷家衛氏と出会い、学校設立をライフワークとすることを決意、09年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師