究極のリスク管理は、手元のお金の管理

大災害に耐えられる現金があるか

 口コミで年間150社以上の新規顧客が集まる、人気抜群の会計事務所が東京・江戸川区にある。その代表社員、古田土満氏が勧めるのが、経営計画書の作成だ。特に財務面では、損益計算書ではなく、貸借対照表中心の経営計画の立案を強く勧めている。連載最終回は、なぜ著者が貸借対照表中心の経営を勧めるか、それが会社と社員を守ることにどうつながるかを説く。

 中小企業においても、多くの経営者は損益計算書中心の経営をしています。経営者の能力は増収増益を何期連続しているかによって評価されることが多くなっているように思います。

こだと・みつる 法政大学卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験し1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。企業の財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで徹底した分析ツールを武器に様々な企業の体質改善を実現。中でも年商50億円、従業員100名以下の中小企業オーナーに絶大なる信頼を得ている。著書に、『社員100人までの会社の「社長の仕事」』(かんき出版)など

会社は赤字だから倒産するのではない

 確かに、増益(税引前利益の増加)はよいことですが、増収(売り上げの増加)のみで増益にならない場合はどうでしょうか。貸借対照表で見ると、自己資本額が増えないのに、売上債権(受取手形・売掛金)や棚卸資産が増えます。さらに売り上げアップのために設備投資まですれば総資産はさらに増加し、自己資本比率は下落します。

 総資産が増えて自己資本が増えないということは、借入金が間違いなく増えているということです。借入金依存度は高まります。

 次に増益の場合でも、利益以上に売上仕入資金(売掛債権と買掛債務の差)のマイナスが増えたり、棚卸資産が増えたりすると、儲かっているのに資金不足になり、黒字倒産となります。

 多くの上場会社が、倒産する直前の決算書は黒字です。会社は赤字だから倒産するのではなく、手元にお金がないから倒産するわけです。

 だからこそ、私は貸借対照表中心の経営をしようと訴え続けています。

1人当たり自己資本額の目標は1000万円

 会社が増収・増益にこだわる理由の1つに、銀行の格付けがあります。

 銀行の格付けは営業利益・経常利益を多くして流動資産を多くし、流動負債を少なくすればよくなるようになっています。銀行が一番重視している債務償還年数は、借入金を償却前利益で割って計算するからです。

 しかし、借入金の返済は償却前利益ではできません。損益計算書の科目で貸借対照表の科目である借入金は返せないからです。借入金の返済は同じ貸借対照表の科目であるお金(預金)でしかできません。簿記の仕訳をしてみれば納得できると思います。

 借入金を返済するためにも、預金を増やす経営、キャッシュフロー経営をしながら、自己資本額を高めることを念頭に、企業を発展させなければなりません。

 貸借対照表中心の経営のポイントは、絶対的な額ではなく、比率や、従業員1人当たりの額で見ていくことです。私ども中小企業の経営で目標とする1人当たり自己資本額は、1000万円くらいだと考えています。

 30人の会社なら自己資本額3億円、100人なら10億円です。古田土会計グループは自己資本16億円でスタッフ181人ですから、今のところ1人当たり884万円です。

 中小企業では、自己資本比率40%を目安にしながら、金額としてはまず1億円を目指してはいかがでしょうか。その次のステップとして、1人当たり1000万円を目指すべきと思っています。

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著者プロフィール

古田土 満

古田土 満

税理士法人 古田土会計 代表社員

法政大学卒業後、公認会計士試験に合格。1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。年商50億円、従業員100人以下の中小企業オーナーに絶大なる信頼を得ている。

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