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いい靴下は噛めば分かる!

第1回:国産靴下にこだわり続けて60年

2016年4月22日(金)

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 僕は昭和14年(1939年)生まれで、76歳になるんですが、この間、渋谷にある東京支店へ行った折、途中で、ピンク色の服を着た女の子を見かけましてね、声を掛けようとしたんですわ。

 かわいらしい子でね、きれいな服着て、脚がすらっとしてて。だけど、急におっさんが話し掛けたら、さすがに変に思われるかと、すんでのところでやめました。それで支店まで急いで走り、社員に「まだそのへんにいるはずやから、誰かちょっと代わりにつかまえてくれ」と頼みました。けれど、嫌がって誰も女の子を追いかけてはくれません。全く気の利かん社員たちですわ。

 あっ、誤解しないでくださいよ。声を掛けようとしたのは靴下のせいです。

 その子の履いているタイツが、もう明らかに安物なんですな。見れば、すぐに分かります。それに膝の後ろの辺りがよれて、シワが寄っている。

 渋谷駅に犬の銅像を置いてあるところがありますな。支店は逆側だけど、女の子の後を追いかけて犬の近くまで行った。「お姉ちゃん、そのタイツ、後ろから見たらシワが入っとる。脱いだほうがええ。素足のほうがきれいやで」と忠告してあげようと思った。

 僕が靴下屋だから言うんじゃないけど、男でも女でも脚がきれいだとぐっと魅かれる。きれいな脚を汚く見せる靴下はあきません。美しい足には、美しい靴下。それが当然やと思います。

 その子は、タイツで自分の魅力を帳消しにしていたんですわ。気の毒でふびんで仕方ない。どうしてあのとき、勇気を出して声を掛けなかったのか。今も反省しているんですわ。

おち・なおまさ
1939年愛媛県生まれ。中学卒業後、大阪の靴下問屋に丁稚奉公。68年に独立し、ダンソックス(現タビオ)を創業。靴下の卸売りを始める。82年に小売りに進出。84年に「靴下屋」1号店をオープンすると同時にフランチャイズチェーン展開を開始。92年協力工場を束ね、協同組合靴下屋共栄会を設立。バブル崩壊以後、同業他社が次々と中国へ生産拠点を移す中、メード・イン・ジャパンにこだわり、その品質の高さと独自の生産・販売管理システムでタビオを靴下のトップブランドに育て上げる。2000年大証2部に上場。02年英ロンドンに海外初となる店舗を出店。08年から会長(写真:太田未来子)

靴下を作るサイボーグ

 僕、変なことを言うてますか。自分では全くの正常やと思っていますけど、周りから「会長は靴下のことになると人格が変わってしまう。度が過ぎる、変や、奇天烈や。まるで靴下を作るサイボーグや」とよく言われます。靴下屋なんやし、靴下のことになると我を忘れるのは当たり前のことやと思うんですけどね。本当にあの子にはかわいそうなことをした。

 やっぱり変やと思う?

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「タビオ会長 越智直正の「靴下屋」が靴下を履かない理由」のバックナンバー

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「いい靴下は噛めば分かる!」の著者

越智 直正

越智 直正(おち・なおまさ)

タビオ会長

1939年愛媛県生まれ。68年にダンソックス(現タビオ)を創業し、靴下の卸売りを始める。82年に小売りに進出。品質の高さと独自の生産・販売管理システムでタビオをトップブランドに育てた。08年から会長

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師