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目がくらむほど明るいのが明日

第4回:「経営」とは経(人生の奥義)を営むこと

2016年5月12日(木)

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一代で靴下業界一の会社を育て上げた越智会長。体力の限界を感じて社長の座を降りたものの、靴下に懸ける情熱は今なお失われていない。タビオを創業してまもなく50年。経営とは、経営者とは何かを問い続けている

 2008年5月、長男の越智勝寛に社長の座を譲り、僕は会長になりました。健康上の理由で靴下を履かなければならんようになったからです。僕は15、16歳のときから靴下を履かんで生活してきた。履くようになったら、靴下屋の社長はもう務まらんと思っとったのです。

 素足にサンダルは50数年来の習慣です。出張以外は靴下を履かずに社長業を続けてきました。商品の仕上がり具合や履き心地をより正確に確かめるためには、普段からはだしでいるのが一番だからです。

 ただ医師から「足を冷やすのはよくない。せめて冬の間は靴下を履かんといかん」と言われましてな。僕は「嫌です」と言うたんですが、嫁はんがどうしても「履け」と言いまんのや。それでしぶしぶ履くようになった。1月とか2月の寒い時期だけだけどね。

 でも、それって、「靴下より命のほうが大事になってもうた」ということでしょ。商売人は自分のところで売っとるものを、命より大切にせんといかんと違いますか。

越智会長お手製の小冊子「馬鹿な大将、敵より怖い 創業者伝達」。文庫本サイズで十数ページあり、目を凝らさなければ読めないくらいぎっしりと文字が詰め込まれている

 社長を交代するときに、自作の小冊子「馬鹿な大将、敵より怖い 創業者伝達」を息子たちに渡しました。長い経営者人生の中で学んだことを十数ページにまとめたものです。息子たちに目を凝らして真剣に読んでほしいという願いから、活字を極端に小さくしてあります。

今もクビになる夢を見る

 僕は今でも年に何回か、タビオをクビになった夢を見ます。繰り返して見るその夢は、経営者の責任の重さを教えてくれているのです。経営者は会社と従業員の生活を支える大きな責任を負っています。確かに大将が判断を誤れば大変なことになる。まさに、バカな大将は敵より怖いのです。

 (中国・随の時代を扱った歴史書である)『隋書』の独孤皇后伝に「騎虎の勢い、下ることを得ず」という有名な話があります。混乱する中国を統一し、隋の国を開いた文帝楊堅(高祖文帝)は、天下統一の作業が終盤を迎えた頃、妻の独孤伽羅に宛てて、「戦場を駆け巡り一段落した。疲れたので一度お前の元に戻って一休みしたい」という旨の手紙をしたためました。

 すると妻・伽羅からの返事にはこう書いてあったそうです。

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「タビオ会長 越智直正の「靴下屋」が靴下を履かない理由」のバックナンバー

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「目がくらむほど明るいのが明日」の著者

越智 直正

越智 直正(おち・なおまさ)

タビオ会長

1939年愛媛県生まれ。68年にダンソックス(現タビオ)を創業し、靴下の卸売りを始める。82年に小売りに進出。品質の高さと独自の生産・販売管理システムでタビオをトップブランドに育てた。08年から会長

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員