英会話といえば、真っ先に海外留学を考える人も多いと思いますが、留学を成功させることはそう簡単ではありません。この日経ビジネスオンラインにもその点を指摘した記事がありますし、ネット上にも多くの書き込みがあります。
そういう意味では、国内にいて、初めから英語を「外国語」として意識し、少々“教科書的な英語”を使ってでも、「しっかりとコミュニケーションができる」という点を目指す方が良い結果を生むということも十分に有り得ます。
実際のところ、私はどちらかというとそのアプローチで英語を勉強しました。つまり、市販のテキスト類を使って少々理屈っぽく英語を学んだのです。でも、この、いわば平凡な学習方法のおかげで、学習を始めて早い段階で、ネイティブに、例えばSSC(※)について教えたり、PR(Public Relations)の意味について議論したり、日本語の発想と英語の発想の違いについて説明したりすることができるようになりました。また、海外でも、空港やホテル、果てはドラッグストアなどで、必要なコミュニケーションができるようになりました。
ところが一方で、とてもやっかいな問題に直面しました。それは、日常の、何でもないカジュアルな会話が出来ない、相手の言っていることは分かるのに、タイミング良く返事を返せない、という事でした。
ネイティブに英語で教えることさえあるのに、ごく簡単な会話がスムーズにできない――これは、私にとって、とてつもない衝撃でした(※)。
ところが、よく振り返ると、皮肉なことに、私の周囲には国内で学んで英語を流暢に話すことのできる人が何人かいたのです。その人たちとも、議論だと決して引けはとらず、むしろ教えることの方が多かったのですが、日常のちょっとした軽い会話になるとなぜか押される。その中には、ネイティブから、「同郷だな。お前はどこの町の出身なんだ」などと聞かれる人がいる始末。
では、彼らはいったいどのようにして英語を身に付けたのでしょうか――その答えが前回にご紹介した「映画・ドラマ」だったのです(※)。
今から思うに、映画やドラマが最強の学習素材であることは確かです。なぜなら、緻密に考えられたストーリー展開によって、ある意味で「リアル以上にリアルな世界」 へと入っていくことができるからです。そのとき、もちろん、頭は最高の集中状態にあります。つまり、映画やドラマは、それ以上は望めないほどパーフェクトな学習環境を、30分あるいは2時間といったコンパクトな時間に詰め込んで与えてくれるわけです。
無理やり問題を解かされるわけでもない、ペアを組まされて特に話したくもない事を話す必要もない、ストップウォッチで時間を測られることもない――そこにあるのは、「あなただけの理想的な英語学習の空間」なのです。
ところが、会話力がほぼゼロの初心者(私たちのほとんど)にとって、映画やドラマはハードルが異常に高い。
海外駐在になった時に仕事英語は(相手と内容を共有しているので)なんとかなったのですが、テレビや電話など全くダメで日常会話が進歩しなかったので、オフの時間に映画で英語学習にトライした事がありました。結果は散々で早々に挫折して映画を見て楽しむだけになってしまいました。主な理由は聞き取れない事がすごいストレスになってしまう事でした。字幕を読んだり何度も繰り返し観たり速度を落としたりしても全然わからないのです。決して完璧に聞き取れる事にこだわって自滅した訳では無いと思っていますが、字幕で見ても、ストーリーやシチュエーションをきっちり頭に入れていても、何気ないセリフが聞き取れず何と言っているか掴めないと言う事が何度も繰り返し起こってしまい、字幕が台詞を意訳して書かれているのかと思うほどでした。最初は聞き取れなくても、字幕を読んだり繰り返し聞いたりしてなるほどそうなんだと少しずつでも分かるようになればやりがいもあるのでしょうが、選んだ作品が悪いのか、好みの映画では英語学習する気がうせてしまい、すぐやめてしまいました。自分には英語耳は持てないんだとあきらめています。(涙)(2017/01/23 12:23)