• ビジネス
  • xTECH
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「文法の無い英語教育」は実現するか

5ラウンド制の学習法が意味するところ

2017年6月3日(土)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 今、英語教育界で熱い視線を受けている教授手法があります。それは、横浜の市立の中高一貫学校が実施している5ラウンド制という英語教育法です。この方法では、1冊の教科書を1年間で5回繰り返し学習します。つまり5周するわけです。これは恐ろしく型破りです。通常は、例えば、教科書に12のユニットがあるとすると、それを1つずつ順番に学習し、最後のユニットをその年度の3学期の終わりに行うからです。

 中学の教科書というものは、たとえ出版社が異なっていて、それぞれ独自の切り口で作られていても、どれもワンステップごとに段階的に学習が進むように緻密に計算されて作られています。それを1年で5周行うということは、この順序建てを根底から壊すということにほかなりません。しかし、それほど型破りな手法であるにも関わらず5ラウンド制は全国の注目を浴びています。なぜなら、成果を出しているからです。

 もちろん、もともと生徒が優秀で授業が成り立つ素地があるからでは? とか、実は塾に通っていて、できないところをカバーしているのでは? といった色々な疑問が出るわけですが、ここでは一旦そういった疑念を脇におきたいと思います。なぜなら、少なくとも私が見るところでは、5ラウンド制はとても理に適ったステップを踏んでいるからです(※)

(※)以下の説明は、あくまでも私の視点から見た分析ですので、その点をよくご理解願います。

どこが違う?

 では、いったいなぜ、ワンステップごとに丁寧に学習を進めるように作られている教科書を、1年に5回も繰り返すことが可能なのでしょうか。どう考えても、通常のやり方では無理です。ごく単純にいって、ワンステップ毎にやるとすると1週間に5倍の授業時間が必要ですし、宿題も5倍必要ということになるからです。

 これはいったいどういうことなのでしょうか。それを理解するカギになるのが、このコラムでたびたび扱っている、コンピューター型の情報処理と脳型の情報処理の違いです。

 従来の授業における「ワンステップごと」にというのは、コンピューター型の発想に基づいています。その根底にあるのが、①英語にはルールがある、②だからルールについて解説と演習を行えば、③英語は使えるようになる――という考え方です。この考え方を究極にまで追究し、ごく簡単な英文から複雑な英文へと、無理なく、順序良く、合理的に学習を組み立てている――それが中学の教科書なのです。

 ところが、ここがとても興味深い点なのですが、じつは、5ラウンド制でも「ワンステップごと」の段階的な学習を行っています。ただ、その意味合いがこれまでの手法とはまるで違うのです。5ラウンド制では、「文法の難度」ではなく、「情報の強度」に段階を付けています。具体的に言いますと、まず聴覚情報(音声)に重点をおき、これに慣れるようにするところから学習を始めます。

聴覚から視覚へ

 聴覚情報(音声)は視覚情報(文字)に比べて、情報の強度がはるかに低いため、中学1年生の教科書の1冊分を丸ごと聴いてマネして記憶に残すとしても、それほど負担なく、短期間に終えることができます。ちょうど適度な速度の洋楽の歌詞が容易に耳に残っていくのと同じです。

コメント6件コメント/レビュー

英語(外国語)は耳から。誰も反対しないと思います。文法ガー、読み書きガーと言う向きもいるがそっちは喋れてからやればいい。日本語(母国語)はだれでもそうでしょう。赤ちゃんに文法教える親はいない。ですからなおさら思うのですが、地上波はもちろん、BSもCSも副音声で英語のセリフが無かったり、英語字幕が出ないのはなんでだ?ディズニーでも、トーマスでも、アニメでも、映画でもいいじゃないか、海外版の英語音声字幕を選べるようにして欲しい。物心つく前から抵抗なく英語に触れる環境があれば、好き嫌いなく、自然に英語が身に付くでしょう。そうかそれでは困る人たちがそうさせないんですね。判ります。(2017/06/06 19:55)

オススメ情報

「日本語を活用した英会話習得法」のバックナンバー

一覧

「「文法の無い英語教育」は実現するか」の著者

池田 和弘

池田 和弘(いけだ・かずひろ)

大阪観光大学国際交流学部教授

「学習者に優しい」をコンセプトに、認知言語学、レキシカル・グラマー、エマージェント・グラマー、並列分散処理など最新の知見を駆使して、受験英語と実用英語を融合。日本有数の英語学習法のスペシャリスト。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

英語(外国語)は耳から。誰も反対しないと思います。文法ガー、読み書きガーと言う向きもいるがそっちは喋れてからやればいい。日本語(母国語)はだれでもそうでしょう。赤ちゃんに文法教える親はいない。ですからなおさら思うのですが、地上波はもちろん、BSもCSも副音声で英語のセリフが無かったり、英語字幕が出ないのはなんでだ?ディズニーでも、トーマスでも、アニメでも、映画でもいいじゃないか、海外版の英語音声字幕を選べるようにして欲しい。物心つく前から抵抗なく英語に触れる環境があれば、好き嫌いなく、自然に英語が身に付くでしょう。そうかそれでは困る人たちがそうさせないんですね。判ります。(2017/06/06 19:55)

アメリカの小学校1年から現地校で学ぶと、いわゆる体で覚えた英語を習得します。理屈ではなく、言葉をまずは音として学ぶようです。外国人のための英語クラスでは、絵や文字を見せたりするのでしょうが、教室のなかのコミュニケーションは音として英語が飛び交っていますので、子供たちは、先生の言葉や友達の言葉を聴いて、だんだん意味が分かるようになるようです。それと同じようなことをしようとしているのだと理解します。
すると、帰国子女は文法がとても苦手になります。理屈は分からないけれど、そうのように言うんだということになります。~ですね、と語尾につける付加疑問文のテストで、This is a pen, isn't it? が正解ですが、This is a pen, right? としてバッテンをもらた子がいました。体で覚えた口語英語と教科書的な英語の違いなのだと思います。(2017/06/05 17:27)

 5ラウンド制のことは初めて知りましたが、まず音から入る、ということのようですね。だとすれば日本の学校もようやく従来の英語/第二言語教育の致命的な間違いを正し始めた、ということでしょうか。ここでの教育の意味は第二言語を実際に使えるようにする、の意味です。入試のための教育ではありません。

 音から入る第二言語教育は日本以外の世界では常識、が私の理解です。フランスのことだと記憶していますが、フランス語が全くわかならい移民に対してはまず徹底的に耳で聞かせてそれをおうむ返しさせる、を3ケ月程度毎日繰り返すそうです。教科書の類は一切無しとのことです。真似して正しく発音できるようになってから教科書を初めて使う。そうするとその後の上達速度は非常に早いそうです。何しろすでにある程度は聞き話せるようになってますから。

 ここで重要なのは従来の英語教育のいい部分まで捨ててしまわないことです。もしいい点があればですが。日本は何かを変える際にそれ以前のいい部分も無条件に捨ててしまう傾向が強い。この愚は避けなければなりません。(2017/06/04 09:22)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日々、何気なく自動車を利用することが、我々を死に至らしめる可能性がある。

ジェームズ・ダイソン 英ダイソン創業者