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進化する英語学習法、学習の敷居を下げるには

5ラウンド制が指し示すもの

2017年6月24日(土)

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 これは当たり前のことですが、どのような事でも、学ぶときには敷居は低い方がベターです。英語の学習でも同じで、なるべく抵抗なく入っていける方が良いに決まっています。ではどうすれば英語の学習の敷居を下げることができるでしょうか。この点でとても興味深いのが、前回紹介した横浜市の公立中高一貫校で実施されている5ラウンド制という教え方です。

 この方法では、英語への入り口において文法的な解説を行いません。日本の英語教育もこの10年ほどで随分と進歩していますが、今でも検定教科書を見ると、特に高等学校用のものでは文法用語が並んでいます。実際に、大手の会社によるリサーチでも、文法が苦手で英語が嫌いになっている生徒が今でもたくさんいます。その意味で、「入り口」において文法解説をしないというのは、とても斬新ですし、間違いなく英語への敷居は低くなります。

音声を重視する

 では、5ラウンド制がどのようにして文法のない学習を実現しているかというと、それは「音声インプット」の重視です。音声は文字よりも情報が軽いので、学習者の負担が下がります。また音楽などを聞いていると、知らないうちにメロディや歌詞を覚えてしまうように、音声には記憶に残りやすいという特長もあります。5ラウンド制では、そこにイラストなどでイメージを与えることによって、学習を進めます。英語、つまり言葉というものは、もともと音声と意味から成っていますので、音声と意味を組み合わせれば、英語は身に付いていきます。

 ここは、ごく当たり前のように聞こえて、私たちがなかなか理解できていない点です。多くの人にとっては、「言葉が音声と意味から成っている」と言われても、イメージしにくいというのが本当のところではないでしょうか。しかし、理屈からよく考えて見ると、そう考えざるを得ないのです。人間が初めて言葉というものを使い始めたとき、まず音声が使われ、その後、文字が生まれたと考える方が自然です。音声よりも文字が先にあったとは考えにくいです。赤ちゃんや幼児が母語を学ぶときにも、まず音声から入ります。なぜでしょうか? その方が「ナチュラル」だからです。

クラッシェンの理論

 面白いことに、この点に着眼して外国語の学び方を論じた人がいます。ステファン・クラッシェンという人です。彼は、自らの教授法を「ナチュラルアプローチ」(Natural Approach)と名付けました。「ナチュラルアプローチ」はその後、楽曲で言うならスタンダードナンバーとも言える定番理論となり、今日に至るまで大きな影響を及ぼしています。

 私がこの教え方について知ったときには、書籍以外ではその詳細を知ることが出来ず、彼が伝えたい点をはっきりと理解することは困難でした。しかし、今ではYouTubeで彼の講演の動画を観ることができます(例えば、この動画などが参考になります)。よく、「聞くと見るとでは大違い」と言いますが、読むと見るとでも大きく違っていて、この動画にはかなりのインパクトがあります。

 動画の中で彼がどのような説明を行っているかというと、簡単な人の顔のイラストを描いていきながら、耳や目などをドイツ語で説明しています。ただそれだけです。もちろん、色々と理論的な説明をしてはいるのですが、やっていること、記憶に残ることはこれだけです。本当に、ある意味で、まったく何でもない動画です。しかし、この動画を見ると、言葉の本質が「音声と意味らしい」ということが直観的に理解できます。敢えて「らしい」としたのは、一点どうしても腑に落ちない点が残るからです。それが文法です。

 5ラウンド制がどこまでこの人の考え方を参考にしたのかは分かりません。しかし、言葉の入り口において、音声と意味にフォーカスした訓練を、それもイラストを使って行うという点では大きな共通点があります。一方で、双方ともに同じ疑問が生まれます。それは、文法は教えなくて良いのだろうか、文法がないと文章を正確に書いたり話したりできないのではないのだろうか、という疑問です。

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「進化する英語学習法、学習の敷居を下げるには」の著者

池田 和弘

池田 和弘(いけだ・かずひろ)

大阪観光大学国際交流学部教授

「学習者に優しい」をコンセプトに、認知言語学、レキシカル・グラマー、エマージェント・グラマー、並列分散処理など最新の知見を駆使して、受験英語と実用英語を融合。日本有数の英語学習法のスペシャリスト。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官