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英語の学習は「ゼロサムゲーム」か?

知らないと遠回りをするポイント

2016年10月1日(土)

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 今、日本の英語教育は、大きくコミュニケーション重視の方向に舵を切ろうとしています。これは、総じて良い流れだと思います。

 言葉は話すこと、つまり口頭コミュニケーションという点を含めて学習しないと、どうしても教え方や学び方がいびつになるからです。「これまでの英語教育はどこかおかしい」、たくさんの人たちが感じてきたのもそれが原因です。

 言葉の本質というのは、まず第一に「音声」です。音声を少しずつキャッチし、口に出して真似をしていく中で基礎が作られていきます。ですから、話すことを疎かにするという事は、もっとも基本的な点を疎かにするという事と同じなのです。

 ここをはしょると、根本的な基礎が欠けることになり、後あとそれが足を引っ張ることになります。今まさに私たちが頭を悩ませているのがこの点といえます。

 「インターネット以前の世界」では、そのような教育でも何とかなったのですが、インターネットが当たり前となった今では、世界の動きに対応できなくなる恐れがあります。“英語教育鎖国(完全な言語矛盾ですが…)”の平和な時代は、終わったと考えた方が良いでしょう。

 私たちは、新しい方向に舵を切る必要があります。それも大きく。そもそも、文法重視の旧来の教え方自体、決してうまくはいっていませんでした。これは誰もが身をもって体験している点です。得点に差が出るのは仕方がない、でもせめて後あとプラスになるような英語教育を受けたかった……そう思っている人がたくさんいるのではないでしょうか。

 しかし、何事にせよ新しいことを実施するときにはリスクがつきものです。ですから、そのリスクについてしっかりと理解し、「コグニティブの時代」の発想で、できるだけ合理的に、効果的に英語を学習したいものです。

ゼロサムゲーム

 ところで、スピーキングの導入にまつわる様々な問題やリスクは、学校だけの問題ではありません。私たち一般の学習にも深く関係しています。その中でも、取り分け大きな問題は、口頭コミュニケーションの訓練を下手に取り入れると、英語の学習が「ゼロサムゲーム」になる危険があるという点です。

 ゼロサムゲームというのは、何かに重点を置くと、他の部分が犠牲になって全体としてゼロになってしまうというような試みを指します(※)

(※)折角ですから、ここでも英語の感覚を身に付けましょう。まず「サム(sum)」というのは「合計」のことです。ですから、「ゼロサム」で「合計がゼロだ」ということになります。つぎにゲームですが、日本ではスポーツやビデオゲームなど限定されて使われますが、英語では人間の活動を指して幅広く使われます。この点を知るだけでも、英語に対する語感がグッと高まります。これが日本語を活用する威力です。

 私がここで英語の学習についてゼロサムゲームと言っているのは、話す練習を取り入れた分、リーディングやライティング、そしてリスニングの能力が犠牲になる可能性があるという意味です。

コメント7

「日本語を活用した英会話習得法」のバックナンバー

一覧

「英語の学習は「ゼロサムゲーム」か?」の著者

池田 和弘

池田 和弘(いけだ・かずひろ)

大阪観光大学国際交流学部教授

「学習者に優しい」をコンセプトに、認知言語学、レキシカル・グラマー、エマージェント・グラマー、並列分散処理など最新の知見を駆使して、受験英語と実用英語を融合。日本有数の英語学習法のスペシャリスト。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師