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「仕事が苦しいのは、自分が無能だから」と思うな

東京大学東洋文化研究所 安冨歩教授に聞く「ストレスの正体」【1】

  • 森脇早絵=フリーライター

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2016年7月15日(金)

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 働く男性が心の病に苦しむケースが増えているようだ。
 「男がなぜ苦しいのかって、それはひとえに、目に見えない暴力を受け続けているから。そこから逃げられないのは、こんなこともできない自分が悪いんだという『罪悪感』があるからです」。“女性装の大学教授”として知られる東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授は、男性の心の苦しみについてこう語る。
 「東大教授」「経済学者」という超エリートでありながら、自由に自分を表現する安冨氏だが、氏自身も、かつては男性特有の息苦しさを感じ続けていた。なぜ、現代の男性は生き辛さを感じ、苦しんでしまうのか。その根本的な原因を伺った。

息苦しさ、生き辛さの正体は「目に見えない暴力」と「罪悪感」

躁うつ病を含む気分障害の患者数の男女比は、女性のほうが1.7倍ほど多い(「厚生労働省 患者調査2014」より)のですが、自殺死亡率では男性が女性の約2倍(警察庁「自殺の概要」より)と圧倒的に上回っています。男性たちが生き辛さ、息苦しさを感じる原因は何でしょうか?

“女性装の大学教授”として知られる東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授
[画像のクリックで拡大表示]

 人はどんな時に息苦しさを感じるかというと、目に見えない抑圧や暴力を受けている時です。

 今、日本のサラリーマンにどのようなことが起きているかというと、例えばこんなことです。給料はちゃんと支払われているものの、意味のない仕事をやらされている。無意味な仕事を断りたいけど、そんなことは不可能だと思っている。転職の自由はあるはずなのに、会社を辞められない。目標を達成しても、一時的にはほっとするけれど、喜びを感じられない。むしろ、「次も失敗するわけにはいかない」という焦燥感の方が強くなってしまう…。

 こんなふうに、見えない何かに取り囲まれている感じなんですよね。むしろ、それらを守ることに必死になっている。これは、社会からのモラル・ハラスメントともいえます。見えない精神的暴力を受けているのと同じ。

 これはね、目に見える暴力よりも苦しいんです。目に見える暴力ならば、そこから逃げ出すとか、戦うとか、あるいは諦めて死んでしまうとか、何らかの結末がありますよね。

 でも、目に見えない暴力に取り囲まれていると、苦しみが終わらないんです。暴力や抑圧を受けていることを自覚できないので、そこから逃げ出すこともしないし、戦うこともしないし、死ぬこともない。

 だから、原因の分からない息苦しさ、生きづらさを感じてしまうんです。

 その根幹にあるものは、「罪悪感」。みんな、「こんなこともできない自分が悪いんだ」と思ってしまうんですね。

 よくサラリーマンたちの話を聞くと「私は恵まれている」「人よりはまだマシだ」「仕事なんてそんなもんだ」という言葉が出てくるんですけど、これこそが苦悩の本質。自発的にそう思っているから、どんなに息苦しく感じても、飲み込んでしまうんです。

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