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「仕事が苦しいのは、自分が無能だから」と思うな

東京大学東洋文化研究所 安冨歩教授に聞く「ストレスの正体」【1】

  • 森脇早絵=フリーライター

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2016年7月15日(金)

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みんな幼少期から「罪悪感を発生させる教育」を受けてきた

この息苦しい現状を打破するためには、どうすればいいのでしょうか?

 まずは、苦しいという事実を認識すること。でも、すごく難しいと思う。なぜって、それは、子どもの時からそういう教育を受けているからです。

 例えばね、両親の姿です。父親がぶつぶつ文句を言いながら会社に行って働いて、母親は主婦をやっている。そして「勉強して、いい学校に入って、いい会社に入って出世しろ」と子どもにプレッシャーをかける。そういう両親のもとで育ったら、「家とはこういうもんだ。これが正しい生き方なんだ」と思い込みますよね。

 学校教育もそうです。学校に行くと、40人くらいの子どもがかき集められて、一つの部屋に閉じ込められて、じっと座らされるわけですよ。そこで意味の分からない勉強をさせられる。

 学校教育というのは、教わることの意味が分からないように構成されているんです。例えば、理科の教科書を開くと、最初にニュートン力学があって、次に気体・液体・固体の話があって、次に気象の話が出てきたりする。あれは物理学から見れば、滅茶苦茶な構成なんです。それぞれ前提条件が全然違うから、全く別世界の話。それを一緒くたにされたら、誰だって理解できるはずがないんです。

 でも、子どもたちは1つのセクションを2週間程度で学習しなくちゃいけない。理解できないものを、理解できないまま、「こういうものなんだ」と思い込まされる。これが蓄積されていくと、「理解できない私が悪い」という罪悪感が育ってしまうんです。

 もちろん、中には習ったことをちゃんと答えられる子もいる。でもね、それは、分からないまま答えているんです。分からなくても、無理矢理飲み込んで答える。それができればテストでいい点が取れるから、そういう子は「優等生」と言われます。

 でも、「理解できない」と言えば、「ダメな奴」と言われる。こういう環境に子どもを閉じ込めて、10数年間も勉強させることを、日本社会では「教育」と呼んでいるんです。

 このプロセスを経ると、次の三つの能力が身につきます。「難しそうな話が分からなければ、それは自分が馬鹿だからだ、と思う能力」と、「訳が分からないけれども、答えてみせる能力」、そして「大人しくじっと座り続ける能力」です。

 だから、みんな理不尽なルールだって受け入れてしまう。学校には、「ピンク色の靴下はダメ」「茶髪はダメ」とかいう意味の分からないルールがあるけど、「なぜダメなの?」と聞けば、先生は「そういう決まりだから」と答える。

 しかも学校って、外界の事情は一切関係なく、物事が展開していく場所なんです。両親が働いているのに、体操服を毎日洗えと強制される。明日までに雑巾3枚縫ってこいと言われる。福島の原発事故が起きた時だって、東京にも死の灰が降ったというのに、子どもたちは普通に学校に行きました。でも、もし休めば、先生だけじゃなくて、他の子たちからも非難されてしまう。

 そういう内的な論理だけで成り立つ「異常な空間」の中で、子どもたちは長い間過ごすわけです。すると、外の条件は一切考えず、内部のルールだけに従うことが身に付いていくんです。

 これで、みんな会社に入る準備が完了します。自発的に隷従するようになりますし、それを他人にも強制する「監視役」としても機能するようになるわけです。

そうなると、自分が本当は何をしたいのか、本当はどう感じているのかということが、分からなくなってしまいますね。

 そうです。それが分からなくなるように、社会全体ができているんです。「自分には意味が分からなくても、ルールだから従う」と言えば、「大人になった」と言われる。「私はそんなこと、おかしいと思う」と言えば、「大人になれよ」と説教を食らうわけです。

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