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採用担当者が「他社への就職」を支援?

第7回:「なんとなく」入社はもういらない

2016年3月16日(水)

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 荒れ模様の採用戦線のなかで、独自のリクルーティングで健闘しているベンチャー企業、ネクスト。自社の選考過程にある学生の就活を、人事担当者が全力で支援する。最終的に他社を選んでもOK、自分の本当にやりたいことを見つけてくれたのなら、祝福して送り出したい――。そんな鷹揚(おうよう)過ぎるほどのスタンスが、逆に内定辞退を減らしているという。とことん手間をかける採用活動の中身と、その背後にある井上高志社長の考えとは。

 2015年夏、新卒採用戦線は荒れ模様でした。

 その理由は皆さん、ご存知の通り。経団連が選考解禁を8月からとし、前年より4カ月後ろ倒しになったからです。しかも、売り手市場。他社に先駆けて優秀な学生を押さえたいと焦った企業は、早めに内定を出し始めました。こうして多数の内定を獲得する学生が現れ、内定辞退者が続出。多くの経営者や人事担当者が頭を抱えました。内定辞退率が約7割に上った企業もあると聞きます。

 では、私たちネクストはどうだったでしょうか。

 内定辞退者は例年と変わらず、数人留まり。目標通り25人を採用できそうです。なかなかの健闘ではないでしょうか。

 波乱の採用戦線を、私たちが乗り切れたのはなぜか。

 かなり手の込んだ採用の仕組みがあったからです。

2015年の入社式。前列左から4人目が井上社長

 この連載で以前に紹介した通り、私は会社設立から8年後の05年、「人財重視の経営」をすると決めて、会社の軸に据えました。

 「人財重視の経営」では、そもそも誰を仲間として迎え入れるかがキモです。「誰をバスに乗せるか」が最も重要な問題になります。

 だから、採用の基本方針は、ずばりこれです。

 「妥協のない、最高の採用」

採用に近道なし。手間をかけるしかない

 採用戦線では、「なんとなく」入社する会社を決めてしまう学生を多く見かけます。
 「たまたま内定を得られたから」「上場企業ならば安心」「他の会社は全部落ちてしまった」……といった具合です。それでは、入社後のモチベーションを上げるのは難しい。

 もちろん、そんな事情は、どこの会社の採用担当者も百も承知です。だから、選考の過程で「なぜ我が社を志望するのか」「入社して何をしたいか」を、質問します。
 明確な理由を持って自社を選んでくれる学生が欲しい気持ちは、どこの会社も同じでしょう。しかし、実際には「この学生の志望動機は、ちょっと弱いな」と思いながらも、表面だけうまく繕って選考をくぐり抜けてくる学生を採用してしまうことが多くあります。

 やはり、どこかで「妥協」しているのです。

 私たちはもともと、採用に力を入れていました。それでも、かつては方針に曖昧な部分があったと思います。
 けれど、「日本一働きたい会社をつくる」と心に決めて、役員や人事の責任者ともども、あらためて覚悟を固めました。

 これからは、本当に「同志」と呼べる人財だけを採用する。
 この1点において、絶対に妥協しない。
 だから、明確な採用方針を打ち出し、貫き通す。

 では、どうすれば、そんな「妥協のない、最高の採用」ができるか。

 画期的な方法などありません。手間ひまかけて、お互いを深く理解してから内定を出し、内定を受けてもらう。私たちが実践しているのは、そんな、ある意味、泥臭い方法です。

「普通の人が上場企業をつくるための超実践講座」のバックナンバー

一覧

「採用担当者が「他社への就職」を支援?」の著者

井上 高志

井上 高志(いのうえ たかし)

ネクスト社長

1968年生まれ。青山学院大学卒業後、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社後、リクルートに転籍。97年ネクストを設立。不動産・住宅情報サイト「HOME'S」の運営などを手掛ける

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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三品 和広 神戸大学教授