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トリーズで生まれ変われば人工知能も怖くない

発明原理で日本固有の資源を世界平和に生かそう

2016年4月19日(火)

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お悩み・その22

自分の仕事が人工知能に奪われないか心配です

依頼主:「最近、技術の進歩が速すぎて、ついていけない自分を感じています」

 はい、技術の進歩、年々早くなっているのを感じますね。

依頼主:「人工知能が多くの人間の仕事を取って代わる日も近いのではないでしょうか?

 私も、今の自分の仕事がコンピューターに取って代わられる日が来るのではないかと思うと、不安で不安で悩んでます」

 お気持ちは分かります。自分の仕事が人工知能に置き換わってしまうという不安は、ここ最近とみに現実感を増してきたところだと思います。

依頼主:「自分がかつて行っていた紙の帳票処理も、今はシステムに取って代わられました。また、紙のダイレクトメール作りも電子メールに取って代わられ、昔なら一万通送るのであっても一仕事だったのに、今は何百万通であっても一日でできてしまいます。しかも最近はダイレクトメールの文面づくりすら“マーケティングオートメーション”としてシステムが自動作成してくれる世の中になりつつあるようです。これも一種の人工知能ですよね」

 なるほど、その通りですね。残念ながら依頼主さんが行ってきた「仕事そのもの」は、どんどんとシステムや人工知能に置き換えられていくでしょう。もしも依頼主さんが「なるべく自分が行ってきた仕事のまま」を要求していたら、それはそれだけ“キャリアが老化”していくと考えた方がよいと思います。

キャリアの老化=問題解決能力の相対的な低下

依頼主:「キャリアが老化する?」

 はい、キャリアとは「日々の問題解決経験の積み重ね」であり、キャリアアップとは「それに伴う問題解決能力の向上」です。しかし、自分の問題解決能力が成長するよりも早く、世の中の同種の問題解決能力が向上してしまい、「問題解決能力が相対的に低下してしまう現象」、これを“キャリアの老化”と名付けました。そして“キャリアの老化”の弊害はズバリ「若手やインターネット、そして人工知能に職を奪われやすくなること」です。

依頼主:「つまりは、若手や人工知能と職が奪い合いになる、ということですね」

 そうです。今までは、職場の先輩に教えてもらいながら、与えられた職務をそのままこなしてさえすれば、それだけその分野の問題解決経験が積まれてキャリアとしての厚みが増していくのがサラリーマンでした。

 しかし、ITおよびICTの進化によって、「ベストプラクティスの共有」が容易になってくると、状況が一変しました。同種の仕事をしている人がその仕事でよくある問題解決のベストプラクティスをネット上で公開したり、ツール化したりして簡単にしてくれる頻度が多くなってきています。

依頼主:「あ、それ分かります。今まで、うちの部署にも、以前は代々の担当者が作った“秘伝のExcel”がいくつもあり、仕事がそれ無しには回っていませんでした。分からないことがあったら先輩によく聞いていました。でも、今は、仕事で困っても、ネット検索をすると、だいたいのことは解決してしまいます。先輩社員に質問することも随分と減ってしまいました。そうか、実は人工知能よりも先にネットが競合相手でしたね」

 そうです。それまで「職場で経験の長い社員」は「貴重な生き字引」だったのに、その役目はネット上の情報に奪われてしまいました。

 言い方を変えれば、文章が固定した単なる辞書のように、「自分の問題解決経験を、自分の経験した内容そのままでしかアウトプットできない人」は、ネットでの検索結果と「キャリアの競合」が起きてしまうのです。

 例えば、営業の仕事で代表的なダイレクトメールを例にします。ダイレクトメールが紙媒体からメールなどの電子媒体になったとしても、行っている行動はあまり変わらなかった場合、“キャリアの老化”が起きます。

 もし、媒体が変わったのに旧来のダイレクトメールのやり方をそのまま続ける社員がいたとすれば、新しいシステムを使いこなせる若手の方が重宝がられるでしょうし、今までの前例がほぼそのまま参考に出来ますから、若手も伸びて追いつきやすい。会社としては、その方が従業員の取り換えがききやすくて喜ぶと思いますが、一個人としてはキャリアが危うくなります。

今は存在していない職業と、職業寿命1年の世界

依頼主:「はい。そういう危機感は私もひしひしと感じています。さらに、長い間、紙媒体だったのに、電子メールが出てきたと思ったら、次はツイッター、フェイスブック、さらにはライン。どうやら最近はインスタグラム…。どんどんどんどん、新しい媒体が出てきて、正直、ついて行けません。昔なら管理職になって若手にさせればよかったのですが、昔よりも管理職ポストが減り、そうした道も減ってしまいました。どうしたらよいのでしょうか?」

 その通り、様々な意味で昔と今の状況は全く違います。自分の今までの仕事が自動化される速度が速くなる上に、対応するべき仕事はさらに増える…。しかし、この状態、1つ視点を変えれば、「今までの職が無くなるまでは早くなっているが、それ以上に新しい職が発生し、自身のキャリアが生まれ変わるチャンスが増えている」という状態です。

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「トリーズで生まれ変われば人工知能も怖くない」の著者

高木 芳徳

高木 芳徳(たかぎ・よしのり)

TRIZアイデアクリエータ

開成高校から東京大学工学部に進学。2000年、大手メーカーに入社。トリーズと出会う。その後、R&D部門で2009年度の発明最多賞を取得。現在はデータサイエンティスト、アイデアクリエーターとして活動。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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澤田 秀雄 エイチ・アイ・エス会長兼社長、ハウステンボス社長