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交渉の要諦:決裂しても譲らない一線を決める

2016年6月23日(木)

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 引き続き交渉について。

 前回「アフガンの武装解除で駆使した交渉術」と前々回「交渉は相手に会う前から始まっている」でも「交渉に臨む際に準備すべきこと」を述べた。もう一つ必要なことが、交渉の「落としどころ」を複数準備しておくことだ。そのためには、まず自分が行う交渉が以下のどちらに当てはまるか決めておく必要がある。

・必ず合意に達する必要がある交渉
・決裂することもありうる交渉

 たいていの交渉は、一定の合意に達することが目標だ。しかし、不利な合意をするくらいであれば決裂した方がよい場合もある。そのため、その相手との交渉自体を取りやめる選択肢があるかどうかを事前に考えておく必要がある。そのうえで、分水嶺となる条件をあらかじめ絞っておくのだ。

 「決裂する可能性をはじめから考えるなんて…志が低い!」と思う人もいるかもしれないが、必ずしもそうでもない。時間や労力の制約を考慮した結果、他の候補に切り替えたほうがコストが節約できるケースがある。需要と供給が合致しない相手との不要な交渉を避け、さらなる機会損失を避けることができる。

被災民の子ども:当時の避難民たちは乾いた土地で吹きさらしの状況で暮らしていたため、子どもたちは常に砂だらけの状態。手や体を洗うこともできなかった

 ただし、ビジネスでも援助でも、安易に交渉決裂を繰り返していると当然のことながら目的は達成できず、成果も上がらない。自分自身が交渉に向き合っていない時の言い訳にもなる。そのため、決裂を選ぶ場合でも、やむを得ない状況に限る必要がある。

 ちなみに、紛争地における平和構築の交渉では、将来のコストに対してより注意を払う必要がある場合がある。ある交渉を成立させることを優先したために、組織が持つ本来の理念や原理原則が誤解されたり、組織内部で活動方針がぶれてしまったりする可能性があるからだ。

「コンクリート製の住居を建ててほしい」

 私が理事長を勤める日本紛争予防センターが、8年前にケニアで発生した大暴動の被災者を支援する案件が持ち上がったときのこと。土地も家も財産も失った被災住民との協議で折り合いがつかず、支援をしないと決めたことがあった。

 この暴動で民族間の対立が起こり、数週間で数千人が死亡。30万人以上が土地を追われた。避難民のなかに、新たな土地に移り住み、他の民族と一緒に新しい村を一から築くことを選んだ人々がいた。彼らはケニア政府から支給されたわずかな見舞金を元手にした地方の安い土地をなんとか買ったものの、手元にはほとんどお金が残らなかった。

「紛争地で培った「瀬谷流」実践仕事術」のバックナンバー

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「交渉の要諦:決裂しても譲らない一線を決める」の著者

瀬谷 ルミ子

瀬谷 ルミ子(せや・るみこ)

日本紛争予防センター理事長

専門は紛争後の平和構築、兵士の武装解除・動員解除など。ルワンダ、アフガニスタンなどで国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。2011年、「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」に選ばれた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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