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トルコのクーデターから考える組織の危機対応

南スーダン、仏ニースでも相次ぐ脅威

2016年7月22日(金)

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 今回の戦闘の最中、国連の食糧備蓄庫が襲われたり、国際NGOの事務所や住居で略奪が発生したと報告されている。「システム」の点からは、いざ危機が発生した際の損失リスクを下げるために、ロープロファイルにすべきところ、逆にプレゼンスを確保すべきところを使い分けたりする。

 南スーダンの首都ジュバにおける我々の事務所には、日本紛争予防センターの看板は出していない。使用している車両に付けた団体のロゴはマグネット式になっており、付けたりはがしたりできるようにしている。私たち組織の活動方針自体が、現地組織が自立できるよう能力強化を図りながら事業を共同で実施することなので、いざというときに、現地の協力団体が主体的に情報を提供してくれたり、事業の一部を担ってくれるという利点もあった。

 今回、私たちの事務所の周辺でも銃撃戦が発生した。その後、不穏分子が潜伏していないか国軍が事務所内を捜索したが、それ以上の事態は起こらなかった。援助機関にとって、現地で活動をアピールする広報活動は必須だったが、ここ十数年で状況は変わった。これらの状況の変化をとらえたうえで、組織にとっての優先事項に基づいた対策を取ることが必須になっている。

【フランス・ニースでのテロ】

 フランス南部の観光地ニースでは7月14日の夜、フランス革命を記念する祝日の花火見物をしていた人たちにトラックが突っ込み、80人以上が死亡するテロ事件が発生した。容疑者の情報をフランス政府当局も事前に把握していなかったこと、武器ではなく「車両」という一般犯罪と区別がつかない道具が用いられたことが特徴だ。

 フランスは、イスラム国(IS)やアルカイダなどイスラム系武装勢力の攻撃対象として狙われやすいことが、コンテクスト情報から分かる。例えば、世界各地で行なわれている対テロ戦に参加していること、仏国内におけるイスラム教徒を含む移民や難民と文化的摩擦があることは、イスラム系武装勢力がフランスを攻撃対象とする背景になりやすい。EU域内では検問なしで人が移動できるので、武器や戦闘員が流入しやすいという事情もある。

 さらに、実際に脅威が発生している「スポット情報」を分析すると、昨年1月のシャルリ・エブド襲撃事件、11月のパリ同時多発テロなど含め、フランス国内で何らかのテロ攻撃が起こりやすいことも分かる。

 「バングラ・テロ事件、こうして身を守れ」の回でも述べたが、国際的なテロの発生状況を見ると、以下のような時と場所でテロが発生しやすいことが分かる。
・ラマダン中
・ある国や地域にとって節目となるイベントがある時期
・人が大量に集まりやすい場所

 テロ攻撃を受けるリスクを軽減するためには、まずテロが起こりやすいタイミングや場所などの情報を現地の駐在員やスタッフと共有することが重要だ。そのうえで、必要以上のリスクを生じさせる行動を控え、危機を回避するための「システム」となる安全対策マニュアルや日頃の行動基準を準備する。

 「現地に駐在しているのに観光も自由にできないなんて」という不満やストレスが溜まることもあるだろう。しかし、最終的に優先すべきは「身の安全」を守ることだ。それを明確にしたうえで、1)業務に携わるときは組織が定める安全対策基準を遵守すること、2)ストレス対策は、安全な地域で休暇を取ったりリフレッシュしたりする機会を組織が提供するなど、組織内の「人」が音を上げることなく確実に実行できる現実的な対策を整備し、共有することが必要だ。

【トルコのクーデター】

 7月16日にトルコにおいて、軍の一部勢力がクーデターを起こした。結果は未遂に終わったが、死者は反乱勢力を含めておよそ300人に及んだ。トルコ政府は反乱勢力との関わりがあるとみられる約2万5000人の公務員を停職処分にするなど粛清を続けているほか、非常事態宣言を発出した。

 日本紛争予防センターはトルコでも、トルコ人とシリア難民の女性に対する支援活動を行っている。トルコではISの脅威が全土に及んでいる。6月初旬にはイスタンブールの空港での爆破事件を含めてテロが多発していた。そのため、テロ事件に関する安全対策が必要になることは想定の範囲内だった。しかし、今回の軍事クーデターが発生することを、情報の収集・分析によって事前に予測することはほぼ不可能だったと思われる。

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「トルコのクーデターから考える組織の危機対応」の著者

瀬谷 ルミ子

瀬谷 ルミ子(せや・るみこ)

日本紛争予防センター理事長

専門は紛争後の平和構築、兵士の武装解除・動員解除など。ルワンダ、アフガニスタンなどで国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。2011年、「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」に選ばれた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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澤田 秀雄 エイチ・アイ・エス会長兼社長、ハウステンボス社長