トルコのクーデターから考える組織の危機対応

南スーダン、仏ニースでも相次ぐ脅威

クーデターに反対するトルコの市民(写真:AP/アフロ)

 前回「バングラ・テロ事件、こうして身を守れ」では、バングラデシュで発生した襲撃事件を受け、主に「個人」がテロから身を守るすべについてお話しした。

 その事件の衝撃が収まらない先週、わずか1週間の間に、3つの異なる種類の危機が相次いで発生した。南スーダンでは政治的対立に端を発する戦闘が勃発。フランス・ニースの観光地では大型車両を使ったテロが発生。そしてトルコでは、軍の一部がクーデター未遂を起こした。今回は「組織」がこれらの危機にどう備え、対応すべきかについて話したい。

 ある国や地域に潜在的な危険があると分かってはいるものの、事業を展開するために駐在や出張をしたり、現地に拠点を設けたりする必要があることもある。そんなときには、潜在的なリスクを組織として把握し、それに対する対策を取り、許容可能な範囲までリスクを減らすための措置を取ることが求められる。

 危機管理対策を行ううえで重要な要素となるのは、「情報」「システム」「人」だ。それぞれの役割は以下となる。
・情報:脅威を事前に把握する
・システム:脅威を予防・回避・軽減するための仕組み(安全対策マニュアルなど)
・人:最終的に脅威に対峙・対応する

 組織における危機管理では、脅威に関する情報を収集・分析し、組織としての仕組みに落とし、最終的にはそれぞれの個人が実際に行動できるようになることを目指す必要がある。私が取締役を務めるJCCP Mでは、これらの要素を強化する観点から、危機管理対策を立案する支援や研修を企業や組織に対して行っている。

【南スーダン:戦闘勃発】

 南スーダンでは2011年7月に独立した、アフリカで54番目の国だ。独立5周年の節目となる今年7月8~11日にかけて、キール大統領派とマシャール副大統領派の対立が激化した。戦闘ヘリや戦車などの銃火器を動員した戦闘が発生し、少なくとも300人が死亡。現地に駐在する邦人を含む援助関係者の一部が国外に退避する事態となった。

 私が理事長を務める日本紛争予防センターも、南スーダンの首都ジュバに事務所を置き平和構築活動に従事している。幸い、日本人を含む国際スタッフは事前に国外に出ていた。現地スタッフも無事である。

 「情報」にはいくつか種類がある。今回有効だったのは、脅威を発生させる政治・経済・文化的な背景などの「コンテクスト情報」だった。

 南スーダンでは政府内で政治対立が長年にわたって続いていた。これに加えて、とくに今回危機的状況に達していることを示すシグナルとなったのが、急激なインフレと数カ月にわたる公務員への給与未払いだった。

 5月時点のインフレ率は295%に達し、国民生活を圧迫。さらに、裁判官などの司法関係者、国立大学教職員への給与は3カ月未払いが続き、6月には公務員が週替りでデモをする状態だった。インフレで実質的な手取りが減ったことで、治安の要となるはずの軍や警察の不満はピークに達し、末端レベルでの統率が取れない状況に陥っていた。

 こうした兆候から考えて、クーデターもしくは不満のガスを抜くための戦闘など、何らかの危機が発生することが予測できた。このため、私たちは6月の時点でスタッフを自宅待機させたり、国外退避させたりする措置を取っていた。

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著者プロフィール

瀬谷 ルミ子

瀬谷 ルミ子

日本紛争予防センター理事長

専門は紛争後の平和構築、兵士の武装解除・動員解除など。ルワンダ、アフガニスタンなどで国連PKO、外務省、NGOの職員として勤務。2011年、「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」に選ばれた。

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