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厳しい交渉やクレーム対応も「聞き方次第」

2016年8月4日(木)

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 今回は、「立場が対立する相手」との対話について考えてみます。誰でも、クレームや交渉相手の話を聞くのは気が重いものです。だからといって、話を聞かずに、ただひたすら謝るだけだったり、要求を押し付けてばかりだったりでは、まとまる話もまとまりません。そこで今回は、クレーム対応や交渉時にどのように話を聞いていけばよいのかを考察します。

完全に対立する相手などいない

 「相手の立場になって親身に話を聞く」の回でお話ししましたが、交渉とは無理な要求を相手に飲ませることではありません。相手とこちらでは立場が違いますので、その立場の違いを利用して、双方が飲みやすい条件を作りながら、こちらの利益を極大化していくことです。

 ここで認識していただきたいのが、「完全に対立する相手などいない」ということです。たとえば、こちらはある商品を高く売りたい。そして、相手はその商品を安く買いたいとします。この場合、こちらと相手では「その商品の売買価格について対立している」と言えます。しかし、だからと言って「その商品の売買に関するすべての条件について、完全に対立しているわけではない」のです。ここをよく認識しておきましょう。

 まず、お互いにその商品を売買しようとして交渉の席に着いているのですから、その商品を売買したいと思っている点で一致しています。また、その商品を納入する時期、場所、量、搬送方法、保証期間など、商品を売買するにあたって、合意すべき項目がたくさんあります。相手のこだわりが強い項目もあれば、こちらのこだわりが強い項目もあります。いずれにせよ、これらがすべて完全に対立するケースはほとんどありません。必ず、項目ごとにこだわりの強さに違いがあります。これが、立場の違いです。

 さらに、その商品以外で利益を確保する方法もあります。自動車の販売などは、その典型ですね。販売価格を値引きして、自動車そのものでは利益が出なくても、付属のパーツやアフターサービス、また自動車ローンなどで利益を確保しています。それから、「今回の商談がまとまったら、社長に挨拶させてほしい」という条件をつけるのも、一つの方法です。多少赤字で商品を納入しても、経営陣と面識ができれば、それ以後は決裁がスムーズになって取引高が増加するかもしれませんからね。

 このように考えると、「すべての条件で完全に対立する」ことは、ほとんどないのです。交渉相手のことをまるで敵のように思う人がいますが、実際には対立しているのはごく一部のことでしかありません。「対立している」というよりも「お互いの立場に違い(ずれ)がある」と考えたほうが正しいのです。

 ですから、交渉は「お互いの立場の違い(ずれ)」をよく理解した上で行わなければなりません。そのためには、やはり「聞くこと」が大切です。

交渉の大原則「主張を聞かず、立場を聞く」

 私は常日頃から、「相手のことをよく理解しましょう」と言っています。しかし、これは「何でもかんでも傾聴すればいい」ということではありません。「相手の立場になって親身に話を聞く」の回でお話ししたように、クレームや交渉の時に「弁償しろ!」「賠償しろ!」「もっと単価を安くしろ!」という相手の主張をひたすらフムフムと聞いていても、お互いの関係が好転することはないし、歩み寄る余地も生まれません。

 このような時は、「相手の主張」ではなく「相手が置かれている状況・立場」を聞くようにします。これは、交渉の大原則です。ここで大切なのが、「相手が主張している時は、話しにくい雰囲気を作る。相手が自分の状況や立場を話し始めたら、話しやすい雰囲気を作る」ということです。

 話しやすい雰囲気を作るコツがわかると、意図的に話しにくい雰囲気も作れるようになります。決して、「話を聞かない」のではありません。「話しにくいように聞く」のです。視線を外す・泳がす、ため息をつく、口をとがらせる、眉をひそめる、目をつむる、首をかしげる、タイミングのずれた相槌を打つなど、「決して失礼ではないが、なんとなく話しにくい」というレベルのネガティブな反応をしながら聞いていきます。

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「厳しい交渉やクレーム対応も「聞き方次第」」の著者

辻口 寛一

辻口 寛一(つじぐち・ひろかず)

クロスロード株式会社 代表取締役 コミュニケーション・コンサルタント

コミュニケーション・コンサルタント。「サ ポーティブリスニング」を提唱。「聞くこと」 から始めて対話力を強化する教育と、それに よってホワイトカラーの生産性を向上させる コンサルティングを提供している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長